表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/56

第13話:龍の欠伸と世界のバグ。……その「異変」、わたくしの監査範囲外ですわよ

「……あ。……シグルド様。今、テクスチャが剥がれましたわよね?」


 帝都再建の指揮を執っていた私の手が、不自然に空中で止まりました。

 視界の端、修復中の城壁の向こう側。蒼穹の一部がまるで古い羊皮紙が破れるように、一瞬だけ「無機質なグレーの格子模様」を覗かせたのです。

 ――$[Error: Local Rendering Failure]$

 私の瞳に、かつてないほど巨大な赤い文字列が焼き付きます。


「……ふぁ。……ああ、エルゼ。……少し、眠気が酷いな。……この世界が、やけに『薄く』感じる……」


 私の背後で、最強の龍王シグルド様が大きく欠伸あくびをしました。

 その瞬間、彼の黄金の瞳が微かに揺らぎ、その輪郭がノイズのようにブレるのを私は見逃しませんでした。


「シグルド様!? ……一単位の油断も許されない再建の最中に、何を……」


「……違うんだ、エルゼ。……我の意志ではない。……ただ、我という存在を維持するための『演算コスト』が……急激に跳ね上がっているような感覚だ」


 シグルド様がふらりとよろけ、私の肩に重い頭を預けました。

 彼の肌から伝わる熱が、異常に高い。

 ――$[Warning: Subject 'Sigurd' - High Resource Consumption Detected]$


「……リィン。直ちに広場を封鎖なさい。……これは、ただの天変地異ではありませんわ」


 私が叫ぶのと同時に、周囲の民衆から悲鳴が上がりました。

 噴水から噴き上がる水が、重力を無視して立方体の形に固まり、修復していたはずの石材が、文字通り「虚空に溶けて」消えていく。

 神の奇跡? いいえ。これは、わたくしの知る限り、最も悪質な「管理不備」ですわ。


「……龍の旦那様。……寝ている暇なんてございませんわよ。……わたくしたちの『私有地』に、規約違反のバグが発生しておりますわ」


 私はシグルド様の頬を軽く叩き、無理やり演算回路を叩き起こさせました。

 彼は焦点の合わない瞳で周囲を見渡し、牙を剥き出しにして低く唸ります。


「……。エルゼ。……この感覚、知っているぞ。……我を封印していた『檻』と同じ匂いだ。……誰かが、この世界の『記述』を無理やり書き換えようとしている……」


「……。隣国のクラウディア様の仕業でしょうか? いいえ、彼女にこれほどの権限ルート・アクセスは無いはず」


 私は銀の計算尺を最大限に引き抜き、空中に巨大な「監査コンソール」を展開しました。

 帝都の空一面に、無数の数字とコードが流れ出します。

 民衆はそれを「光り輝く神の啓示」だと拝み始めましたが、わたくしに言わせれば、これはただの世界の『ソースコード』の垂れ流しですわ。


「……ふふ。……面白いですわね。……この世界の『物理法則』という名の規約、あまりに脆弱(脆弱性)が多すぎますわ。……シグルド様、その右手の先にある『歪んだ空間』を、物理的にデバッグしてくださる?」


「……。御意だ、我が女王オーナー。……これくらいのゴミ、一瞬で掃除してやる」


 シグルド様が黄金の剣を抜き、空中に現れた「グレーの立方体」を一刀両断しました。

 凄まじい衝撃波。

 ですが、切られた空間は修復されるどころか、さらに黒い穴を広げ――そこから、無機質な合成音声が響き渡りました。


『――不適切なオブジェクトを検知。……キャラクター:シグルド。……予定外の行動により、世界の総容量メモリを圧迫しています。……直ちに、初期化フォーマットを開始します』


「……初期化、ですって?」


 わたくしの眉が、不快感で跳ね上がりました。

 わたくしが多額の投資をし、リソースを投入して再建しているこの帝国を、勝手に「初期化」する……?


「……ふざけないで。……わたくしの許可なく、わたくしの資産を消去しようなんて。……どこの『システム管理者(神)』か存じませんけれど、重大な規約違反で訴えさせていただきますわよ?」


 わたくしの瞳に映るノイズが、ついに「可読可能な文字」へと収束しました。

 ――$[System Override Initiated by Elze von Aschbach]$


 わたくしは計算尺を地面に突き立て、世界のコードを直接「書き換え(パッチ)」始めました。

 消えゆく石材に固着魔法を、乱れる重力に定数化の命令を。

 

 シグルド様が、私の背後で驚愕に目を見開くのが分かります。


「……エルゼ。君……世界の『理』そのものを、強引に納得させているのか?」


「当然ですわ。……わたくし、納得のいかないコスト(損失)は、たとえ神が相手でも一単位だって認めませんもの」


 数分後。

 荒れ狂っていた空間の歪みは、わたくしの放った「強制統治コード」によって沈静化しました。

 空の剥がれは塞がり、重力は正常に戻る。

 

 ですが。

 わたくしのコンソールに、最後の一行だけ、消えないメッセージが残りました。


『――観測者を確認。……エルゼ・フォン・アシュバッハ。……あなた、この物語の「商品価値」を理解していますの?』


「……。商品、価値?」


 私はその言葉を、反芻するように呟きました。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 クラウディア様との経済会議の前に……。どうやら、この世界そのものを『運営』している不遜な者たちにも、監査ざまぁのメスを入れる必要がありそうですわね。

世界の「裏側」が、ついにその不気味な姿を現しました。

エルゼ様の卓越した知能は、ついに世界の法則……「システム」そのものをバグとして認識し、デバッグを開始してしまったようです。

シグルド様が「眠気」を感じていた理由、それは彼という強大な存在が、世界の容量を食いつぶす「重いデータ」だったから……。


最強の夫婦は、ついに自分たちの物語を消費する「観測者」というメタ的な存在の気配を察知しました。

経済戦争の裏で、世界の根本を揺るがす巨大な伏線が動き出します。


次回、第14話。

「監査執行:帝都銀行」。

クラウディアとの直接対決の前に、エルゼ様は帝都の「金流」を完全に掌握し、絶対的な防壁を築きます!


エルゼ様の「世界へのデバッグ」にシビれた方は、ぜひブックマークをポチッとお願いいたしますわ。

皆様の評価が、エルゼ様の「管理者権限ルート」の解禁を早めますのよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ