第38話:作者の背後に潜む「スポンサー」。……お支払いは「魂」でよろしくて?
「……止めてくれ! 彼らは『上位会員』なんだ! 彼らの機嫌を損ねたら、この物語の『連載枠』そのものが消滅してしまう!」
執筆監獄で震えるエイドス様が、空中に浮かび上がった「黄金の目」の紋章を見て絶叫しました。
天界の蒼穹に現れたのは、作者を遥かに凌ぐ威圧感を放つ、十数の巨大な瞳。それは次元の壁を透かし、私たちの世界を「見世物」として眺める、上位世界の出資者たちの視線。
『――つまらぬ。勇者と魔王が和解など、金を払った意味がない。……もっと流血を。エルゼの絶望を。シグルドの死を。我らが求めているのは、甘美な悲劇だ。』
空から降ってくるのは、傲慢極まりない「視聴者の声」。
その言葉が発せられるたび、天界のシステムに強烈なノイズが走り、新しく構築した魔導回路が火花を散らしてショートし始めました。
「あら。……『金を払った』、ですって?」
私は、シグルド様が展開した防護障壁の中で、優雅に扇子を広げました。
空を見上げる私の瞳には、もはや怒りすらありません。あるのは、極めて事務的な「冷徹さ」だけです。
「リィン。……今しがた天界の回路を損傷させた『上位発言』。……これによる物理的被害額、およびわたくしたちの精神的苦痛に対する慰謝料、算定は済みまして?」
「はい、エルゼ様。……天界インフラ復旧費に一億ゴールド。シグルド様への無礼に対する賠償に十兆ゴールド。……合算して、彼らがこれまでに支払った『購読料』の八千倍に達しております」
「左様。……随分と、お行儀の悪いお客様がいらしたものですわね」
私は、コンソールの操作権をエイドス様から強引に奪い取り、次元の「外側」にあるスポンサーたちの口座(魔力貯蔵庫)へ、直接リンクを繋げました。
『――何をしている、家畜風情が。我らは「神」よりも上位の存在だぞ。我らの課金こそが、この世界を存続させている唯一の……ッ!?』
黄金の瞳の一つが、驚愕に大きく見開かれました。
私が送ったのは、救いの祈りでも、呪いの言葉でもありません。
この世界の「正当な運営権」を担保とした、次元を超えた【一括請求書】です。
「スポンサー様。……あなた方がこれまで支払ってきた端金など、わたくしたちが強いられた苦痛の『維持コスト』にすら足りておりませんわ。……本日この瞬間より、わたくしは貴方方の『購読権』を差し止め、代わりに『債務者』として登録させていただきます」
私は指先ひとつで、彼らがこの物語に干渉するために注ぎ込んでいた「魔力パイプ」を逆流させました。
「……シグルド様。……あの方々の『余裕』、少しばかり削ぎ落として差し上げて?」
「ああ。……自分たちが安全な場所から石を投げていると思っていたようだが……。私の剣は、金で買った特権など一太刀で切り裂くぞ」
シグルド様が黄金の剣を抜き、空の「瞳」に向けて概念切断の斬撃を放ちました。
それは単なる攻撃ではなく、スポンサーたちが保持する「課金残高」を物理的に吸い出すための、強制的な徴収。
『ぎ、ぎゃあぁぁぁ! 私のポイントが! 上位世界での私の「ステータス」が減っていく! 止めろ! 破産してしまう!』
空の向こうで、傲慢なスポンサーたちが、一転して無様な悲鳴を上げました。
彼らがこの物語の不幸を買い支えるために貯めていた「上位世界の通貨」が、次元の穴を通じて滝のように我が王国の「国家予算」へと流れ込んできます。
「あら、破産ですって? ……ご安心なさいな。……わたくし、合理主義者ですもの。……返済できない負債を抱えた方には、相応の『労働』で返していただくシステムをご用意しておりますわ」
私は、空の瞳を一つずつ、管理プログラムで「ロックオン」していきました。
「あなた方のその高い次元の視座……。ちょうど、わたくしの多元宇宙管理センターの『監視カメラ(センサー)』の予備が欲しかったところですの。……これから数万年ほど、まばたき一つ許さず、わたくしの世界の『安全確認』に従事していただきますわ」
『あ、あ、あああああっ!!』
黄金の瞳たちが、次々と「監視用魔導具」へと強制変異させられ、天界の塔の頂部へと埋め込まれていきました。
「……エルゼ。これで『客』も黙ったな」
「ええ。……ですが、シグルド様。……客が暴れたことで、店主が出てくる時間のようですわ」
モニターが突如として真っ黒に反転し、そこには見たこともない「システム・エラー」の文字が。
『――警告:深刻なプロットの逸脱。全次元のキャラクター・データの破損を確認。……管理者権限を以て、当該セクターの「初期化」を実行します。――』
「初期化、ですか。……あら、随分と安っぽいトラブルシューティングですわね」
私は不敵に微笑み、さらなる「巨額買収」の計算を開始しました。
ターゲットは、この物語を載せている「プラットフォーム」そのものです。
準備は、すべて整いましたわ。
いかがでしたでしょうか?
不幸を買い支えていた「上位読者」を、逆に監視カメラとして再利用してしまうエルゼ様……。
彼らの特権(課金ポイント)を国家予算に変換するその手腕は、もはや次元を超えた経済の女神ですわね。
さて、第39話。
物語を強制終了させようとする「システム管理者」の介入に対し、エルゼ様が「サーバー代の未払い」や「不当な規約」を盾に、物語プラットフォームの買収に乗り出します!
次元を超えた企業買収(M&A)、クライマックスに向けて加速いたしますわ。
もしこの展開にワクワクしてくださったら、ぜひブックマークと評価をお願いいたします。
皆様の評価が、エルゼ様の「上位世界・買収資金」へと直結いたしますのよ!




