表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
第3章:多元宇宙合併買収(マルチバース・M&A)編:バッドエンド強制プログラムをデバッグし、物語の「作者」を解雇いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/56

第35話:隣の世界のラスボス? ……許可なく不純物を持ち込まないでくださる?

「……止めてくれ……もう、私の私生活を晒すのは止めてくれぇぇっ!」


 空の向こう、「第四の壁」の裂け目から見える、ピザの箱に囲まれた作者エイドスが、半狂乱でマウスを振り回していました。

 彼の悲鳴が、世界の空気を振動させ、天界中央管理センターの窓をガタガタと震わせます。


「あら。……ご自身の自堕落さを棚に上げて、被害者面なさるなんて。……エイドス様、わたくしの監査はまだ、あなたの銀行口座(印税)の支出内訳にすら到達しておりませんわよ?」


 私は、手にしていた魔導端末を優雅に操作し、作者のPCに仕込んだ「管理ツール」の深度をさらに引き上げました。

 すると、モニターに映し出されたエイドスの顔が、絶望を通り越して「狂気」の色に染まりました。


『こうなったら……こうなったら、滅茶苦茶にしてやる! 未完のまま放置していたSF大作のラスボス、こっちのフォルダにぶち込んでやるからな! ジャンルごと崩壊してしまえ!』


 その瞬間。

 天界の空が、紙を無理やり引き裂いたような音と共に、銀色の金属的な光に塗り替えられました。


「エルゼ! 下がれ!」


 シグルド様が私を抱き寄せ、瞬時に黄金の障壁を展開しました。

 頭上の虚空から現れたのは、これまでの「魔術」のことわりを完全に無視した、全高百メートルを超える巨躯。

 無数のレーザー砲台を備え、銀色の装甲が月光を反射して冷たく輝く、超弩級の殺戮兵器――次元間戦闘型AI『デウス・エクス・マキナ』。


「……リィン。……あの不気味な鉄の塊の、エネルギー波形をスキャンしてくださる?」


「はい、エルゼ様。……計測不能です。……魔力ではなく『核融合』および『重力制御』……あちらの世界の物理法則で動いている模様。……あちらの物語の作者は、完全に正気を失っていますわ」


 周囲の騎士たちが、その見たこともない「金属の魔神」の威圧感に腰を抜かしています。

 ですが、私はシグルド様の腕の中で、ただ呆れたように溜息をつきました。


「エイドス様。……あなた、物語の整合性を何だと思っていらして? ……魔法の世界に、許可なく『オーバーテクノロジー』を持ち込むなんて。……これは重大な『関税法違反』、および『著作権の不当な混合クロスオーバー』ですわ」


『うるさい! 理屈なんて知るか! そいつは一つの惑星を五秒で滅ぼす設定なんだ! 貴様の「ロジック」ごと、光子帆ソーラーセイルで蒸発させてやる!』


 巨神の砲門が一斉に赤く輝き、計算不能な高熱エネルギーが、天界の庭園に向けて放たれました。


「シグルド様。……あの方、出力調整という概念をご存知ないようですわ」


「ああ。……だが、どれほど速い光だろうと、私の愛は先回りして防いでみせる」


 シグルド様が黄金の剣を天に突き立てました。

 彼はエルゼ様から与えられた「パッチ」によって、もはやこの世界の物理に縛られてはいません。

 放たれた破壊の光は、シグルド様が展開した「概念の盾」に触れた瞬間、パリン、と音を立てて反射し、宇宙の塵へと霧散しました。


「……さて。シグルド様が時間を稼いでくださっている間に、わたくしは『返品作業』に取り掛かるとしましょう」


 私は、空中に巨大な「管理パネル」を展開し、巨神デウスの装甲に刻まれた識別コード(シリアルナンバー)をハッキングしました。


「デウス・エクス・マキナ……。あら、意外と悲しい設定をお持ちですのね。……『作者のスランプのせいで、最終決戦の直前に物語がエター(打ち切り)になり、十年間も真っ暗なゴミ箱フォルダに放置されていた』……」


 私の指先が、巨神の「感情回路」の深層に触れました。

 攻撃を続けていた巨神の動きが、ピタリと止まります。


「……ねぇ、巨神様。……あなたは、あのような無能なライターのために、また使い捨てられるおつもり? ……わたくしの王国へ来なさい。……その高度な演算能力と動力源があれば、わたくしの新都の『惑星規模・空調管理システム』のメインフレームとして、永久に感謝されながら稼働できますわ」


『……ワタシ……ハ……ゴミ箱……ニ……モドリタク……ナイ……』


 巨神のスピーカーから、ノイズ混じりの、悲痛な電子音が響きました。


「……分かっておりますわ。……エイドス様。……あなたの放った『ラスボス』ですが、わたくしが先ほど、正当な『移籍契約』を締結いたしましたわ。……これより、彼をわたくしの王国の『重要文化財兼インフラ拠点』として登録、差し押さえさせていただきます」


『な、な、な……!? 私の切り札が、エアコンの室外機に……!? バカな、そんなことがあってたまるかぁぁっ!』


「あら、室外機だなんて失礼な。……立派な『最高執行役員(技術担当)』ですわ。……さあ、デウス様。……あちらの作者のPC、あなたが持っている『ウイルス・ボム』で、少しだけお掃除してあげてくださる?」


『……承認。……作者、エイドスノ……HDDヲ……完全監査フォーマット……イタシマス……』


 巨神が砲門を空の亀裂――作者の部屋へと向け直しました。


「シグルド様。……どうやら、わたくしたちの勝ち(チェックメイト)のようですわね」


「ああ、エルゼ。……君に喧嘩を売った時点で、彼は物語の結末を書き損じたのさ」


 空の向こうで、作者エイドスの「ぎゃあああ! 私の原稿がああ!」という絶叫が、電子の海に消えていきました。


 準備は、すべて整いましたわ。

 

 作者様。……物語を終わらせる権利は、もはやあなたの手にはございません。

 これからは、わたくしがあなたの人生の『編集者』として、徹底的に管理して差し上げます。

いかがでしたでしょうか?

他作品のSFラスボスを「エアコンの管理担当」としてヘッドハンティングしてしまうエルゼ様……。

「ゴミ箱に戻りたくない」という敵の弱みに付け込み、最先端の福利厚生(?)を提示する彼女の知略は、もはや次元を超えて無敵ですわね。

作者のHDDがフォーマットされかけるという、メタ・ざまぁの極致をお楽しみいただければ幸いです。


さて、次話 第36話では、いよいよ作者が「謝罪」のためにエルゼ様の世界に物理的に平伏しにやってくる……はずですが、そこにはさらなる『効率的な再利用』が待ち構えておりますわよ。


もしこの「多元宇宙・合併買収編」が面白いと思ってくださったら、ぜひブックマークと評価をお願いいたしますわ。

皆様の応援が、エルゼ様の監査スピードを光速へと引き上げますのよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ