表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
第3章:多元宇宙合併買収(マルチバース・M&A)編:バッドエンド強制プログラムをデバッグし、物語の「作者」を解雇いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/76

第32話:物語の強制力 vs 鉄の論理。……その「ご都合主義」、法的に問題がありますわ

「……エルゼ。空の『ノイズ』が酷くなっている。……耳鳴りが止まない」


 シグルド様が眉間に皺を寄せ、愛剣の柄を強く握りしめました。

 天界の美しい蒼穹そうきゅうは今や、古い羊皮紙が焦げたような斑点に覆われ、そこから「文字」のような魔力の残滓が次々と降り注いでいます。


 ――『突如として、シグルドの心に疑念が芽生える。エルゼの冷酷さに、彼は恐怖を覚えるのだ』――


 空から降ってきたその「記述」が、物理的な鎖となってシグルド様の身体に絡みつこうとしました。


「あら。……随分と手垢のついた、使い古された展開プロットですこと」


 私はコンソールの前に立ち、流れるログを瞬時に解析しました。

 指先を滑らせ、その「鎖」を構成する魔力コードを直接掴み取ります。


「シグルド様。……そのまま、心のままに叫んでくださる? あなたの愛は、どこの誰とも知れぬ者が書いた『三行のト書き』で揺らぐほど、お安いものですの?」


「ふん……。ふざけるな。……私の魂を、その汚い筆でなぞろうとするな!」


 シグルド様の黄金の瞳が、怒りで爆ぜました。

 彼は自分に絡みつく「設定の鎖」を、素手で引きちぎったのです。

 パリン、と次元が割れるような音が響き、空から降り注いでいた文字が霧散しました。


『な……バカな!? シグルドの「忠誠値」は最大まで設定したはずなのに、なぜ強制イベントを弾き返すんだ!? 修正だ、すぐに修正プロット・リライトを――!』


 空の向こうで、あの「作者」を自称する男の、焦りに満ちた声が震えています。


「無駄ですわ、エイドス様。……わたくしが、あなたの『設定書』の原本、既にハッキングさせていただきましたもの」


 私は空中モニターに、巨大な羊皮紙のホログラムを映し出しました。

 そこには、この世界の登場人物たちのステータスや、今後の不条理な不幸の予定表がビッシリと書き込まれています。


「……第120ページ、『エルゼ、謎の病に倒れる』。……第135ページ、『シグルド、かつての宿敵と相打ちになり消滅』。……あら、随分とセンスの欠片もない、投げやりな結末案ですわね」


 私は、扇子の先でその記述を一つずつ、無慈悲に「赤ペン」で添削していきました。


「……病気の原因菌の魔力コード、特定完了。ワクチン・プログラムを全土に配布。……シグルド様の宿敵? ……ふふ、一分前に彼の資産をすべて差し押さえ、無一文の物乞いに書き換えておきましたわ。……これで、相打ちになる物理的な可能性はゼロですわね」


『き、貴様ぁ……! 勝手に物語を修正するな! 盛り上がりがなくなるだろうが!』


「盛り上がり、ですって? ……読者の娯楽のために、わたくしたちの人生を『波乱万丈』という名の泥沼に突き落とす権利が、あなたにあるとおっしゃるの?」


 私は立ち上がり、空に向かって冷徹なまでの「監査宣言」を叩きつけました。


「エイドス様。……わたくし、あなたの『著作権』とやらを精査いたしましたが。……住民の同意なしに行われる『理不尽な不幸の押し付け』は、この統合王国の法律、および多元宇宙の倫理規定において、重大な『人権侵害』および『精神的損害賠償』の対象となりますわ」


「……その通りだ。……エルゼを病ませ、私を殺そうとした慰謝料。……貴様のインクで支払ってもらおうか」


 シグルド様が剣を空へ突き立てると、彼の放つ魔圧が「第四の壁」を激しく揺さぶり、向こう側にいる作者の悲鳴が聞こえてきました。


「さて……。作者様。……あなたのプロットは、もはやわたくしのロジックに追いつけません。……ですが、この世界の外側には、まだあなたに苦しめられている『別の被害者』がいるようですね?」


 私の耳に届いたのは、次元の隙間から漏れ聞こえる、か細い泣き声。

 それは、隣の「悲劇の聖女物語」のサーバーから、無理矢理にバッドエンドへ突き落とされようとしている、哀れな少女の悲鳴でした。


「リィン。……隣の次元への『強制連結マージ』の準備をして。……シグルド様、新しい事業プロジェクトの時間ですわよ」


「ああ。……今度はどの世界の『結末』を買い叩きに行くんだい?」


「ふふ……。悲劇を量産する無能なライターを解雇し、すべてのヒロインをわたくしの王国の『優良な労働力』として雇用して差し上げますわ。……一単位の涙も、わたくしの世界では貴重なエネルギー資源ですもの」


 私はコンソールの「侵攻」ボタンを叩きました。

 天界中央管理塔が激しく輝き、隣の物語の壁を物理的にぶち抜くための「次元エレベーター」が稼働を始めます。


 準備は、すべて整いましたわ。


 作者様。……あなたの書く『悲劇』、わたくしの計算式ですべて『黒字ハッピーエンド』に書き換えて差し上げますわ。

 次の物語、どちらの不純物を掃除ざまぁしに参りましょうか?

第32話いかがでしたでしょうか。

「作者の介入」という、本来ならば抗えない運命を、エルゼ様が「契約不履行」や「法的瑕疵かし」として処理する……。この「メタ視点での知略」こそが、新章の面白さですわね。


シグルド様も、設定という名の鎖を引きちぎることで、もはや一国の騎士を越えた「物語をも超える守護者」へと進化いたしました。


ラストでエルゼ様が検知した「隣の次元の悲鳴」。

次話、第33話では、**『隣の世界のヒロイン(悲劇の聖女)を、ロジックで強奪しに行くエルゼ様』**の無双っぷりを描く予定です。

「死ぬ運命? その契約書、わたくしがシュレッダーにかけて差し上げますわ」という名台詞が聞こえてきそうですわね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ