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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
第2章 帝国買収編:元婚約者は炭鉱送りでしたかしら? ――北方の女帝による無慈悲な再開発計画

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第24話:天界の杜撰な運営報告書(エビデンス)

天界の門。それはかつて、選ばれた聖人と、多額の寄進(お布施)をした信者だけが、死後に辿り着けると信じられていた場所。

 ですが、今その「聖なる扉」は、巨大な魔導ドリルによって物理的にこじ開けられようとしていました。


「……リィン。出力が足りませんわ。天界の障壁は『盲信』をエネルギー源にしています。……もっと冷徹な、現実的な数値を流し込みなさい」


「承知いたしました。……ただいま、地上から『天界の無能による経済的損失の統計データ』を圧縮して送信。……突破いたしましたわ、エルゼ様」


 轟音と共に、黄金の門が砕け散ります。

 私とシグルド様が足を踏み入れたそこは、地上で語り継がれてきた「楽園」のイメージとは、程遠い場所でした。


 空には美しいオーロラが舞っているものの、足元の雲は薄汚れ、至る所に「エネルギー漏れ」による亀裂が走っている。

 神殿の裏側に回れば、そこには神々が贅沢を極めるために使い古された、地上の英雄たちの「魂の残骸」がゴミのように積まれていました。


「……ひどいものですわね。シグルド様、これをご覧になって。……この神殿を維持するだけで、地上の小国三つ分の魔力を浪費していますわ」


「ああ。……見かけ倒しの黄金と、無駄に広いだけの廊下。……機能性を無視した、老害の極みのような設計だ」


 シグルド様が不快そうに鼻を鳴らしたその時、奥から数多の神々が姿を現しました。

 美食に溺れ、肥え太った「豊穣の神」や、鏡の前で己の美しさに陶酔する「美の女神」。彼らは私たちを、汚らわしい害虫でも見るような目で睨みつけます。


『不敬なり、人の子よ! ここは神々が集う神聖なる議事堂……。武装して立ち入ることなど、万死に値する!』


「あら。……不敬、ですか?」


 私は、手にしていた一束の「監査書類」を、議事堂の中央のテーブルに叩きつけました。

 魔導カメラがその内容を捉え、地上の魔導スクリーンへリアルタイムで中継されます。


「わたくしは本日、この『天界』という名の法人の、筆頭債権者としてここに参りましたの。……神々様。……あなた方が『奇跡の備蓄』と称して隠し持っていた裏金、および過去三千年にわたる『魂の不当搾取』の証拠……すべてここに揃っておりますわよ」


『な、何を根拠に……!』


「根拠、ですか? ……例えば、美の女神様。……あなたが毎朝浴びていらっしゃるその『永遠の若さを保つ魔力』。……これ、一年前の帝国での飢饉の際、救済を求めて祈り、そして絶命した子供たちの魂から抽出されたものですわね?」


 美の女神が、真っ青になって震え出しました。


「豊穣の神様も。……あなたが宴で振る舞っているその酒は、地上の農民たちが汗水垂らして収穫した作物の『本質エッセンス』を、加護と引き換えに掠め取ったもの。……これを略奪と呼ばずして、何と呼びますの?」


 私は、冷徹なまでの正確さで、神々一人ひとりの「罪状」と「無駄遣い」を読み上げました。

 地上の民衆は、自分たちが捧げた祈りが、彼らの救済ではなく神々の「娯楽費」に消えていた事実を目の当たりにし、怒りの炎を燃え上がらせています。


『黙れ……黙れぇ! 神は、存在するだけで価値があるのだ! 家畜が飼い主に文句を言うな!』


 逆上した神の一人が、稲妻を放とうとしました。

 ですが、その腕が振り下ろされる前に。


 ――バチィィン!


 シグルド様の氷の剣が、稲妻ごと神の力を切り裂きました。


「……私の妻が、君たちの『不始末』を正してやっているんだ。……大人しく聞くがいい、寄生虫ども」


「シグルド様。……暴力は最後にとっておきましょう。……まずは、この『経営破綻の宣告』からですわ」


 私は、ロゴス神が座る最も高い椅子を指差しました。


「ロゴス様。……天界の負債総額は、既に資産価値の十倍を超えていますわ。……この瞬間をもって、天界の全資産、および神格の行使権を、わたくしの管理下に差し押さえさせていただきます。……あなた方は本日をもって、全員『解雇』。……および、地上での強制奉仕による負債返済を命じますわ」


『解雇だと……!? 神を、解雇するというのか!』


「ええ。……合理主義者のわたくしにとって、成果を出せない管理職など不要ですもの。……代わりに、わたくしの開発した『自動運営システム(AI)』を導入いたしますわ。……情に流されず、不公平な奇跡も起こさず、ただ最適に世界を管理する。……これこそが、民が求めていた真の『神』の形ではありませんこと?」


 私は、扇子をパチンと閉じ、ロゴス神に最後の一撃チェックメイトを突きつけました。


「さて……ロゴス様。……地上での再就職先、もう手配してありますわ。……かつてあなたが『試練』として人々を苦しめたあの炭鉱……あそこの清掃員として、三千年ほど働いていただけますかしら?」


『あ、あ、あああああっ!!』


 ロゴス神の絶叫が、崩れゆく神殿に響き渡りました。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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