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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
第2章 帝国買収編:元婚約者は炭鉱送りでしたかしら? ――北方の女帝による無慈悲な再開発計画

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第23話:神の加護の「利用規約」を確認なさいました?

天界の「勇者」という名の欠陥商品を資料室へ収容した翌朝。

 私は、墜天使クラーラが持ち出してきた「天界運営秘録」……いわば神々の極秘会計帳簿を、シグルド様と共に精査していました。


「……ひどいものですわね。シグルド様、これをご覧になって」


 私は扇子で、宙に投影された複雑なエネルギー循環図を指し示しました。


「天界が民に与える『加護』……これ、無償の慈悲などではありませんわ。加護を受けた人間が一生の間に捧げる『祈りのエネルギー』を、天界は年利三〇パーセントで複利計算し、さらにその人間が死ぬ間際に発生する『魂の未練』を違約金として徴収している。……これは救済ではなく、魂を担保にした『超高利貸し』ですわよ」


「……なるほど。祈れば救われるのではなく、祈れば祈るほど天界への負債が膨らむ仕組みか。龍の略奪よりも、よほどたちが悪いな」


 シグルド様は、不快そうに黄金の瞳を細めました。


「しかも、その『加護』による奇跡の実行率は、わずか〇・〇二パーセント。……残りの九九パーセント以上の祈りは、神々の贅沢な生活(神界の維持費)に消えている。……クラーラ、この監査報告書に間違いはありませんわね?」


 眼鏡を押し上げたクラーラが、震える声で答えます。


「は、はい、エルゼ様……。私はこれを指摘したせいで、『神への不敬罪』として翼をもがれ、追放されました。……天界は今、慢心と放漫経営によって、慢性的なエネルギー不足に陥っています。だからこそ、地上に災厄を撒いて、強引に祈りを絞り取ろうとしているのです」


「……ふふ。経営破綻寸前の企業が、強引な取り立て(わざわい)を始めたというわけですわね。……いいでしょう、合理主義者のわたくしが、正しい『倒産整理』の仕方を教えて差し上げますわ」


 私は、中央管制室のメインシステムを「全土放送モード」に切り替えました。

 私の姿と、天界の腐敗した会計データが、大陸中の広場にある魔導スクリーンへ一斉に映し出されます。


『皆様、ごきげんよう。……今日は皆様に、大切なお知らせがございますの』


 私の涼やかな声が、祈りを捧げようとしていた民衆の手を止めさせます。


『皆様が毎日捧げているその「祈り」。……残念ながら、神様へ届く前に「管理手数料」として九割以上が中抜きされていますわ。……証拠はこちら。……さらに、皆様が受け取っている「加護」には、死後の魂を永久に労働力として拘束するという、極めて悪質な裏条項(ステルス規約)が含まれておりますのよ』


 民衆から、ざわめきと、そして天界への不信の怒号が上がります。


『わたくし、そのような非合理な契約は「無効」であると断じます。……本日この瞬間より、わたくしの統治する全領域において「神への祈り」の一切を禁止いたしますわ。……その代わり、皆様が捧げようとしていた祈りの時間は、ご自身のスキルアップや家族との団らんに充ててくださいませ。……神に頼らずとも、わたくしの「国家運営システム」が、皆様の健康と繁栄を、一単位の狂いもなく保障いたしますわ』


 直後、空が怒りに燃えるような赤に染まりました。

 雲を割って、天界のCEO……運命神ロゴスの巨大な顔が顕現します。


『愚かなる女……! 祈りを止めれば、この地の守護は失われ、災厄が降り注ぐぞ! 我が慈悲を拒むというのか!』


「慈悲? ……ふふ、ロゴス様。……あなた、ご自身の財務状況を把握していらして?」


 私は、ロゴスの巨大な顔に向かって、一通の「支払停止通告書」を魔力で投影しました。


「わたくしの統治区域からの『祈り』という名のエネルギー供給が止まれば、天界の維持コストはあと三日で底を突きますわ。……現在、天界が抱えている『過去の英雄たちへの年金未払い問題』、および『神殿維持債務』。……これらを一括請求されたら、あなた方、神座を維持することすらできませんわよね?」


『な……っ、なぜそれを……!』


「わたくしの計算式から、逃れられる不備など存在いたしません。……ロゴス様。……わたくし、既に貴国の『信仰債権』を市場で買い叩き、過半数を握っておりますの。……これ以上わたくしに逆らうのであれば、天界そのものを『競売』にかけ、あなたを地上で『人力発電機』として働かせて差し上げますわよ?」


 静寂。

 絶対的な神の威厳が、一人の令嬢の放つ「経済的な脅迫」の前に、見る影もなくしぼんでいきます。


「シグルド様。……神様がお黙りになってしまいましたわ」


「ふむ。……言葉を失うほどに、己の無能さを思い知ったのだろう。……エルゼ。いよいよ、天界の門を物理的にこじ開ける準備ができたな」


「ええ。……神座サーバーの再起動、わたくしの手で執り行わせていただきますわ」


 空に向かって、北方の魔導戦艦の砲門が一斉に向けられました。

 祈りが止まり、数字が世界を書き換える。

 

 神々の支配する夜は、もうすぐ終わります。

 準備は、すべて整いましたわ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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