表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
第2章 帝国買収編:元婚約者は炭鉱送りでしたかしら? ――北方の女帝による無慈悲な再開発計画

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/56

第20話:氷の女王と守護龍の結婚。――世界はわたくしの指先に

空は、見たこともないような透明な「青」に染まっていました。

 新しく建国された『ヴァレンシュタイン=アシュバッハ統合王国』。その首都となった旧帝都は、今日、世界で最も輝かしい場所となっていました。


 かつての泥臭い石造りの街並みは、エルゼ様が設計した白銀の魔導建築へと生まれ変わり、街路樹には季節を問わず咲き誇る「魔導の華」が、祝福の光を振りまいています。


「……リィン。各国の元首たちの席順、一単位の狂いもありませんわね?」


「はい、エルゼ様。……かつて帝国を嘲笑った隣国の王たちも、今は揃って震えながら、あなた様の御出座を待っておりますわ」


 私は、鏡の中に映る自分を見つめました。

 纏うのは、シグルド様が北方の最深部で見つけ出した「氷龍の鱗」を繊維状に加工し、私の全魔力を編み込んだ伝説級レジェンダリーのウェディングドレス。

 一歩歩くごとに、私の魔力が幾何学的な紋様となって床に広がり、世界が私をあるじとして認識していくのが分かります。


「……美しい。もはや、言葉にするのも畏れ多いほどだ」


 扉が開き、正装を纏ったシグルド様が現れました。

 北方の守護龍。大陸最強の武力を持つ彼は、いまや私の知略を支える最強の伴侶。彼は私の前に跪き、その指先に、この世で最も重い誓いのキスを落としました。


「エルゼ。……君を捨てた世界を、君は君の数字で塗り替えた。……今日から、この大陸のすべての命動は、君の指先ひとつで決まる」


「あら、シグルド様。……わたくしが望んだのは、支配ではなく『最適化』ですわ。……不純物を排除し、知性と実力が正しく報われる世界。……それを、あなたと共に歩めることが、わたくしの唯一の計算外の幸福ですの」


 私たちは腕を組み、大聖堂のバルコニーへと足を踏み出しました。


 その瞬間。

 地響きのような大歓声が、大陸中から集まった民衆から沸き起こりました。

 かつて私を「悪役」と罵った貴族たちも、今は最前列で額を地面に擦り付け、私の慈悲を乞うように震えています。


 私は、その熱狂の遙か下――新宮殿の「基礎」となった地下深く、もう誰の耳にも届かない場所で、かつての婚約者たちが石となって世界を支えていることに、一瞬だけ思いを馳せました。


 エドワード。マリアンヌ。ジュリアン。

 あなたたちの「愛」や「プライド」という名のノイズは、いまや私の築いた新しい秩序システムを安定させるための、ただの重石に過ぎない。


「……ふふ。本当に、完璧な配置ですわ」


 シグルド様が、私の頭上に、北方の雪とダイヤモンドで象られた「知恵の王冠」を捧げました。

 王冠が私の髪に触れた瞬間、帝都全域の魔導回路が呼応するように眩い閃光を放ち、空には私の家紋であるアシュバッハの星が、昼間だというのにくっきりと浮かび上がりました。


「これより、宣告いたします」


 私の声は、増幅回路を通じて大陸の隅々まで、逃げ場のない真実として響き渡りました。


「かつての古い法、無能な情愛、不当な搾取の時代は、今この瞬間をもって終了いたしました。……これからの世界は、わたくしの知略と、シグルド様の武勇……この二つの絶対的なロジックによって運営されます」


 私は、跪く王たちを見下ろし、最高に優雅な、そして冷徹な微笑みを浮かべました。


「わたくしに牙を剥く者は、数字によって窒息し、わたくしの計算に従う者は、かつてない繁栄を約束しましょう。……選択肢は、常に提示して差し上げますわ。……合理主義者のわたくしですもの」


 シグルド様が私の腰を引き寄せ、民衆の前で、深い、深い誓いの口付けを交わしました。

 

 鳴り止まない喝采。

 暗闇に沈んだ敗者たちの記憶は、もう誰の心にも残っていません。


 私は、彼の腕の中で、静かに目を閉じました。


 準備は、すべて整いましたわ。

 わたくしの人生、わたくしの世界。

 これから始まる新しいページには、一単位の誤差も、不必要な「可愛げ」も入り込む余地はありません。


 ただ、完璧な勝利と、終わることのない幸福の計算式が続いていくだけ。


「……さあ、シグルド様。……新しい世界の『運用』、始めましょうか?」


「ああ、女王陛下。君の思うままに」


 氷の女王と守護龍の伝説は、ここから永遠の物語プログラムとして刻まれていくのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ