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自作品について色々語ったり、執筆について色々書いたりする。ブログが作るのが面倒臭いからここに集約する。  作者: ふん


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20/22

ファンタジー小説を書き始めた人へ

 ファンタジーを書こうと思った人が、最初に何を考えるか。

 人によって違うだろうが、おそらくかなりの割合で「世界設定」ではないだろうか。



 地図を描く。

 国を作る。

 歴史を作る。

 神話を作る。


 そして気が付くと、ノートや設定資料だけが増えて、小説は一文字も進んでいない。



 自分にも何度か経験がある。

 考えている間は楽しいのだ。


 この世界の海流はどうなっているのだろう。

 空気の成分は? 重力は? 季節は?


 考え始めると止まらない。



 しかし不思議なことに、その膨大な設定は物語を書くとほとんど出てこない。

 主人公が朝食を食べる場面で海流の話はしない。

 酒場で仲間と会話するときに空気の成分を説明しない。

 魔王を倒す場面で大陸形成史を語ることもない。


 では、あれだけ考えた設定は何だったのだろう。




 ある時、自分は少し意地悪な考え方をしてみた。


 もし作者が作った設定資料を全部燃やしたら、その世界は消えるのだろうか。

 もちろん困る作者はいるだろう。

 だが読者は案外困らない気がした。


 なぜなら読者は設定資料を読んでいるわけではないからだ。


 読者が見ているのは作中に現れた断片である。

 ここで自分は、世界と世界観を混同していたのではないかと思った。


 世界と世界観は似ているようで少し違う。


 世界観というのは作者が見せるものだ。

 だが世界そのものは読者の頭の中にある。


 例えば作者が「この世界の空気は特殊です」と百ページ説明したとする。

 しかし読者はそれだけでは世界を感じない。


 むしろ、


 高山に住む人々は風笛を持ち歩いている。

 その笛を吹くと肺が楽になる。

 旅人は必ず一本買う。


 そんな描写を見せられた方が世界を感じる。


 理由は簡単だ。


 人間は説明から世界を作るのではない。

 現象から世界を推測するからだ。



 推理小説を考えると分かりやすい。

 名探偵が最初から犯人を説明してしまったら物語は終わる。

 読者は証拠を見て犯人を想像する。




 世界観も同じだ。


 読者は断片を見て世界を想像する。

 だから自分は最近、水や空気から世界を作ろうとしなくなった。


 代わりに、水で何が起きるかを考える。

 空気で何が起きるかを考える。


 発光する川があるなら、その川の近くにはどんな祭りがあるだろう。

 雨が宝石になるなら、どんな盗賊が現れるだろう。

 風を売る商人がいるなら、どんな詐欺師が生まれるだろう。


 そうやって考えていくと、設定ではなく文化が見えてくる。

 文化が見えると人が見える。

 人が見えると物語が動き始める。


 逆に言えば、どれだけ精密な設定があっても、人が見えなければ世界は動かない。

 自分はファンタジー創作で最も危険なのは、世界を作ろうとすることだと思っている。



 世界は作れない。



 少なくとも作者一人では完成しない。

 作者が作れるのは世界観だけだ。


 世界観という名の断片を並べ、それを見た読者が頭の中で世界を完成させる。




 もし今、設定作りで手が止まっているなら、一度だけ考えてみてほしい。


 その設定は読者に見えるだろうか。




 そして、その設定が生み出した現象は何だろうか。

 もしかすると必要なのは、新しい神話ではなく、神話を信じる酔っぱらいの一言かもしれない。


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