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23-ポーター

「───と、言う訳です」


 説明が終わると、はふ、と可愛らしく溜息をつくミィル。


 依頼内容としては、今までヴェルデドラゴンが暴れ回っていた為、食料や薬品を積んだ馬車を出せなかったのだが、朝の通りフィルティナが討伐してくれた。


 なので問題なく荷物を運べるようになったので、プロージの街から40km程離れたコルタの町に荷物を運んで欲しいとのこと。

 もちろん俺一人ではなく、メインは位2が二人、位1が二人の合計四人のパーティに任せているらしい。


 二頭の馬が引く四輪馬車も出して運ぶのだが、運ぶ物を限界まで荷車に詰め込むため、途中野宿するための道具や食料が詰め込めない。


 そこで、荷物持ち……所謂ポーターとして、俺の登場である。普通は運搬依頼は先程の四人の護衛のみだが、今回は特殊な例だろう。

 ポーターもだいたい、討伐依頼や採取依頼での成果や道具を持つために駆り出されるものだ。

 物資の行き来が間に合っておらず、他の冒険者や騎士にも依頼は出しているらしい。


 ……日給換算すると、賃金も少ないので人気がないそうだが。


 さて、俺が受けるかどうかだが、もちろん受ける。運搬だが、先輩の冒険者と行動を共にできるし、学べることも多いだろう。少なくとも薬草採取よりかは有意義な筈だ。


 コルタの町までは途中野宿で一泊して二日。馬車も向こうに預けるので、帰ってくる時は身軽に出来る。

 報酬は契約金なしで三万Gだ。これもあちらのギルドで受け取れるようになっている。

 四人パーティの方はもっと高いらしい。相場は知らないので、何とも言えないが前世基準の宅配バイトと比べても普通ぐらいか。命の危険諸々も付くが、この世界では当たり前。悪くは無いが、帰って来る時も合わせるとやや少ない。

 加えて食費や道具も貸し出されたりしないので、全て合わせれば完全な慈善による依頼である。


 その代わり、馬車が傷付いたりしても大目には見てくれるという破格の条件があるらしいが、俺には全く破格感がない。


「分かった、じゃあ受けさせてもらおうか」


 頷き、答える。横目でエンリをちらりと見たのだが、同じく頷いてくれていたので問題ない。

 討伐依頼とは違うが、街を遠く離れての仕事だ。途中魔物や盗賊に襲われるかもしれない。

 その時には本来の護衛が戦う様子が見られ、勉強になるだろう。相手の力量を見極め、俺も力になれそうならばなる。いざとなれば全力で逃げる。

 生きてなんぼの世の中だからな。


「了解です。ではポーターが見つかったと伝えておきます。食料や道具の準備をして、明日の八時にギルドへ来てください。レオンさん達とギルドで合流後、門の外に荷物を積んだ馬車を待たしておきますので」


「あぁ」


「何か質問はありますか?」


 こう見えてミィルは依頼について話す時は真面目である。丁寧に説明をしてくれたし、仕事内容についても問題ない。

 馬車は位2の冒険者二人が引けるようで、道もその人らが分かっている。


 俺は馬車の後につき、荷物を持って歩けばいいだけだ。


 だが質問か……そうなると、その他の冒険者のことについてが気になる。


「俺の他に受ける冒険者は、どんな奴らなんだ?」


「四人……パーティを組んでいるのですが、リーダーの剣士、レオンさん。敵を引きつける盾役のゴードンさん。魔法も扱える剣士、ルクアさん。斥候役のトワさん。レオンさん、ルクアさんが位2で残りの二人が位1ですね。ですが位1でも貴方とは比べ物にならない程経験積んでいる方達なので御安心を。男女共に二人ずつ、色々とバランスの良いパーティですよ」


「あ、はい」


 一言余計であるが、それならば万が一も起きないだろう。気を付けるに越したことはないが、気を張り続けるのも危ない。このパーティが護衛につくなら、安心できそうだ。


「他に質問はありますか?」


「いや、大丈夫だ」


「そうですか。ではまた明日、遅刻などしないでくださいね」


 これ以上聞きたい事もない。他は全て説明してくれたしな。時刻も何だかんだで、正午に近いだろう。

 時間も宿の部屋に時計がある。あれには驚いたが、どうやら魔道具らしく、一般的にも普及しているようで、比較的低価格で買えるらしい。


 朝食の時間に起き、早めに食べていけば間に合うし寝坊する心配もない。エンリも起こしてくれる。


 後で、何か聞きたいことを思い出したとしても───


「ミィルお姉ちゃん、またね!」


「えぇ、また。お兄さんは少しの間出掛けますが、いい子にしているんですよ」


 俺とは違い、無表情をほんの少し柔らかくしてエンリの頭を撫でるミィル。

 これで問題はない。


 エンリの全模倣は、触れた時の相手を全て模倣出来る。つまり時間が経過し、模倣対象が新たに経験した事はエンリには分からないのだ。なので、更新するには毎回触れねばならない。


 肉体も同じで、エンリは模倣対象に触れた時までか、その過去からしか模倣ができない。その者の幼少時の姿には化けられるが、成長した大人の姿にはなれないのだ。

 エンリがそのまま長い期間ミィルの体で過ごせば、ミィルの体を成長させることもできるが、一度別の姿へと変えてしまえば、再びミィルに化けたとしても触れた時の状態に戻ってしまう。


 これが、俺の魔力上限と、人数差以外のエンリの弱点だろうか。エンリに化けられても、対象が突然著しい成長を遂げれば、記憶や思考を読まれていたとしても、触れられる前に特攻をかけて倒せるということだ。


 少年漫画か何かだろうか。そして完全にエンリは悪役側である。


 妹の顔でぽわぽわした笑顔をミィルに向けながら撫でられてはいるが、内心何を考えているのかは分からない。


 というか、ミィルは俺がエンリを置いていくと思っているのか。そりゃそうか、こんな依頼に十歳に見える少女を連れていくなんて有り得ないもんな。


 だとすると、宿屋には依頼ではなく旅行とでも伝えておくか。ニーナの性格だ、絶対に妹のことは心配してくれる。

 俺はそんな事を考えながら、エンリの手を引いてギルドを出る。


 コルタの町まで二日。帰りのものはあちらで補給するとして、一日目の昼と夜、間食や二日目の朝昼、くらいの食料やら何やらは買い込んでおこう。


「エンリ、保存食やら、旅に必要なものを買いたいんだが……いい店とか知ってるか?」


「うん! そういう専門のお店とかもあるよっ。こっちこっち!」


 今度は逆に、エンリに手を引かれて街を歩く。

 久しぶりに、エンリ以外の人と多く関わることになる。

 少々の不安と、期待を胸にしつつ、店へと向かうのであった。

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