20-初依頼
R15ってどこまで表現していいんでしょう……?
「それ、ホスロ草です。あぁ、それも。こんなに分かりやすいのに見逃さないでくれますか? 私が疲れますので」
俺の腕に抱き着きながら、ずばずばと言ってくれるミィル。相変わらず言葉と行動があっていない。
ミィルの記憶を頼りに群生地である林の中へ入った俺たちは、順調にホスロ草を回収していた。
ホスロ草は、茎が長く伸び葉は少なく、先でくるんと丸くなっている分かりやすい草だ。クサソテツに似ていると言ったら早いだろう。
磨り潰し色々する事で回復薬の原料になる。詳しいことは専門知識もないのでわからない。
山でも何度か見掛けたことはあるので、生えている場所さえ教えてくれれば、見つけるのは俺にもできる。
しかし腕に頬擦りしているミィルの辛口は止まらない。
なので偶に頭を撫でたり、頬をふにふとつついてやると黙る。
エンリの反応なのかミィルの反応なのかは分からないが……いや完全にエンリの反応だが、薬草を摘むだけの単純作業にスパイスが加えられてとても楽しい。
本人にやったら一瞬で牢獄へ逆戻りか指名手配だろう。
「にしても三つで銅貨一枚、100Gか。流石に安いよなぁ」
麻袋にぎゅうぎゅうに詰まったホスロ草を見てぼやく。かれこれ昼も食べずに五時間はつんでいたが、これを今から納品しに行ったとしても3000G程。
時給換算しても日本の最低賃金より安い。まあ位一の、誰にでも受けられる仕事なのでそんなものか。
ホスロ草自体、珍しいものでもないのでさくさくと見つかる。
どちらかと言えば、報酬の内約は運搬費の方が大きいのではと思う依頼だ。
本来小遣い稼ぎに、他の依頼を受けながら集めるものなんだろう。
ここら一体は魔物の報告もなく、街からも比較的近い。ここらの領主も優秀なおかげで、騎士も巡回しており、盗賊の遭遇率も低い。身の危険の面で見ても安心だ。
先程一人、俺と同じだろう薬草採取の冒険者を見掛け、ミィルの姿を隠そうとしたが、その時には既に下着とマントを俺に押し付け、エンリは蝶へと化けていた。
一瞬で姿を変えるので、他からもし見られたとしても気の所為か幻覚だと思ってくれるだろう。
俺だっていきなり人が蝶になったりしたら自分の目を疑うし、こんな事を他人に話しても信じてはくれない。ドッペルゲンガーは絶滅しているし、変身魔法なんてものはこの世界にはない。
前世の世界と同じく、ファンタジーを考えるより自分の目を疑う方が早いのである。
だからと言って、多く見られても困るだろう。そこそこに楽しみながら、気をつけないとな。
因みに、俺は同じ冒険者を見掛け嬉しくなったので話しかけに行ったのだが脱兎のごとく逃げられた。なんでだ。
「仕方ないでしょう、初心者中の初心者の為の依頼なのですから。文句を言う暇があったら手を動かしてください」
「その片方の手はお前に抱き着かれていて動かせないんだが」
「だって暇なんだもーん」
俺が返すと、素直に腕から離れるエンリ。最初はエンリも薬草採取を手伝っていてくれたが、三時間が経過したくらいからは俺と自分の暇を潰すことに頑張っていてくれた。
本当に単純作業なので、暇だったのだ。
俺は石材積みで慣れてはいたが、エンリはそうじゃない。が、エンリはエンリで俺に擦りついたりして甘えるだけで満足しているらしいので、先程のような形になっていたのだ。
ふむ、ならば今日は早目に切り上げるとするか。
「今日は初日だし、早目に帰って、部屋で二人でごろごろするか」
俺は決心すれば、ミィルの手を握る。
「気安く触れないでくれますか?」
言葉とは違い、とても嬉しそうに身を寄せてくるミィル。確かに仕事も大切だが、エンリとまったり過ごす時間も、俺にとっては大切なんだ。
空を見上げれば、太陽の位置からして午後の三時を回ったところだろう。
これぐらいで暇だのなんだの言っていたらこの先やっていけないが、初日だしさ。少しずつ慣れていけばいいと俺は思う。
ミィルは妹の姿へと変え、手の大きさが変わり握り直そうと、然りげなく指を絡めてくる。俺も心が暖かくなり、しっかりと握った。
片手には麻袋……もう片手は、大切な相棒の手を繋ぎ、気分もよく二人で歌を歌いながら帰路へとついた。
ーーー
ギルドにて、麻袋を渡し、中身を確認してもらうと、3200Gになって返ってきた。食事を抜かなければ今の宿にも泊まれんぞ。
同じ宿に泊まっていた冒険者たちはどんな依頼を受けて生計を立てているのだろう。四人組とかいたし、大丈夫なのだろうか。
冒険者の平均年収が知りたい。
だが、意外にも受付対応をしたミィルの反応はよく、「これ程の数をあなたごときがよく集められましたね」と褒めてくれた。
俺はエンリの事もありミィルの顔をまともに見ることもできず、自慢するにも皮肉で返すにも礼を言うにも、何も出来なかったです。
隣の妹はえへんと胸を張っていたので(可愛い)、ミィルの視線から逃げるように頭を撫でておいた。
その後は宿に戻り、反省会をして、飯を食い、色々して、寝た。
反省としては、こういった危険の少ない採取の日は、防具も必要最低限の部位だけでいいとも思った。油断は禁物だが、何事も効率というものがある。
あとは何かしらバッグとかも買った方が便利であった。
別にずっと装備し続けていても疲れはしないが、裸よりは動きにくいし、何よりエンリからは革鎧は不評である。
後は単純作業時の暇潰し方法だろうか。前世の世界で、ひたすら同じ作業をする仕事や、警備で同じ場にひたすら立ち続けていないといけない仕事があるのだが、みんなどうやって頭の暇を潰していたのだろうか。
せいぜい俺には、妄想するくらいしか思い浮かばない。だが、それだと俺の頭の暇は潰せても、エンリのが潰せない。
今後の課題……にするにはそこまで大きくない問題だが、一応考えておこう。景色が違ったり、他の冒険者がいたりすれば、人間観察とかでエンリも飽きないと思う。
他は特にないだろう。その後は、今の理由も含め、明日はどんな依頼を受けようか等の予定を話し、飯の時間になれば二人で食べに行ってあ〜んしたりされたりと変わらない。今日の晩御飯もとても美味しかった。
さて、最後の色々のことだが……まあ、これはまた今度語ろう。俺もエンリも顔を真っ赤にしながら眠りについたとだけ言っておこうか……。
所持貨幣
大金貨15枚
金貨5枚
大銀貨2枚
銀貨7枚
大銅貨1枚
銅貨1枚
所持G
817700G
依頼報酬3200G




