表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/110

19-受付嬢

 十五分程度だろうか。

 俺が質問を返したりしたため、えらく時間がかかってしまったが、まだまだ聞き足りないくらいだ。

 途中、何人か後ろへびくびくとしながら並んでいたが、受付は俺のいる場所を合わせ三つほどあったので、別の受付員が入って捌いてくれた。


 しかし隣でエンリが大丈夫、と革鎧を叩いてきたので、俺はありがとうございましたと質問を切り上げた。


 取り敢えず簡単にまとめれば、


 ・位毎に分けられ、俺は駆け出しの位一。ギルドの判断で依頼にも位が付けられ、自分の位以上の依頼はうけられない。


 ・依頼には採取、護衛、討伐というそれらしいものから、便所掃除や荷物持ち、雑草抜きや街の修復作業など雑用も多い。


 ・依頼を受ける時に保証金や契約金など、失敗した時に依頼主に支払う義務のある依頼がある。


 ・失敗した時のデメリットは上記のものや、位が下がったり。死んだ場合は此方に補償は一切なく、犯罪などを犯した場合は問答無用でギルドの身分剥奪、指名手配入り。


 ・報酬はギルドで支払われるか、依頼主に直接会って支払われるかなど様々。


 ・パーティに制限は基本ないが報酬金は山分け。偶に護衛などで雇い主の要望で人数の制限があったりする。


 ……今はこのくらい覚えておけば十分だろう。それに、エンリはミィルと話している際に、然りげなく握手をしていたりした。


 大丈夫……ということは、そういうことだろう。


「やっと終わりましたか」


「すみません。ですがとても参考になりました」


 ミィルは肩を竦め、悪びれる様子もなくそう言い放つ。

 肝が座っているなぁ。

 言動としては好感度は下がるが、俺を恐れないのは好感度が高い。荒くれ者たちを日々相手にしていれば、こんな態度にもなるか。

 十五分も朝っぱらから拘束してしまったしな。


 チップを渡そうとも考えるが、これはエンリが稼いでくれた金だ。今度依頼を達成した時にでもお礼として渡そう。


「早速依頼を受けますか? 貴方であれば位一の依頼なら全て楽に達成可能と思われますが」


 そう言って、何枚か依頼用紙をカウンターに置くミィル。

 バカ言ってはいけない、謙遜する訳でもないが、賊討伐や魔物討伐など勝手がまず分からない。


 力任せに村の魔物は薙ぎ払ったが、知恵を持つゴブリン等の魔物に対しては不安が残る。


 俺は置かれた用紙の一つ、薬草採取を指さし、これにするとミィルへ用紙を返す。


 ミィルは言葉とは裏腹に、出した依頼はどれも雑用や薬草採取等の比較的命の危険がないものばかりであった。


 掲示板に貼られている個人一人が受けられる依頼とは異なり、何人でも受けていいもののようだ。それか、初心者に説明した後は難易度の低いものを勧めると決まっているのかもしれない。


「薬草採取、ホスロ草納品ですね。こちら、期限はなくギルドの依頼です。契約金はなし、数によって報酬金は変わります。三つで銅貨一枚になります」


「了解です」


「では、特徴や群生地ですが───」


「あぁ、それは大丈夫です」


 途中で会話を切り上げる。(エンリ)も暇そうに欠伸をし始めていたので、さっさと行こうと思ったのだ。これ以上時間をかけるのも申し訳なく感じてきたし。


 俺がそう言うと、ミィルは少し眉を下げ、


「変な人ですね。では、どうぞ死にはしないよう、気を付けて」


 と抑揚のない声で俺に手を振った。


 確かに変だよなぁ。俺は自嘲しつつ、エンリの手を引いて、ギルドをあとにするのであった。




 ~〜〜




「さっきの女、嫌い」


「そうか、俺はエンリの事好きだぞ?」


「ふぇっ!? え、えへへ……アタシも、主のこと、好き…………じゃなくて!」


 門へ付き、貰ったばかりのギルドカードを門番に見せてから街を出て、二十分程歩き人の目が無くなって来た頃。


 俺が自分で作った橋を渡る最中、他の人々も橋を渡っていたのを見て目から汗を流した時は、優しく慰めてくれたのだが。


 隣を歩くエンリは大層ご立腹のご様子である。

 あんなに仲良さそうに話していたんだけどなぁ。


「いいじゃないか、質問には全部答えて説明してくれたし」


「それはそうだけど……主への態度、本当にむかつく。あ、アイツ内心主のことバカにしまくってたよ?」


「それはつらい」


 衝撃の事実を暴露され、俺は思わず胸をおさえた。いや……それはさ、日本の店員だって笑顔で接客してても内心思うところは色々あるのが普通だろ?


 でも聞かなければ傷つかないんだ。で、聞いたから俺は傷ついた。

 そんな俺を見て、エンリはにやりと笑うと、「だ〜か〜ら〜♪」と辺りを見渡し、人がいないことを確認すると…………一瞬にしてその姿を、ミィルへと変えた。


 胸がすぅっと冷えるも、何事かと固まってしまう俺。

 そんな俺を気にもせず、ふぅ、とため息を漏らし、スカートをはたいて服をただせば、こちらへとそのジト目を向けた。


「初心者の分際で、私の有難い説明を遮るとは、いい度胸ですね。基本も知らないような質問ばかり投げつけてきたくせして、薬草についての知識は持ち合わせていると? はっ」


 ギルドでも遠慮なかったミィルであるが、更に遠慮のないことをずばずば言って鼻で笑ってきた。


 カウンターがあり見えなかったが、青を基調としているメイド服のスカートは、膝上のミニスカートで足には革のブーツを履いていた。

 とても似合っているし、文句無しの美少女である。


 容姿を眺めながらも、追撃された心の痛みに胸をおさえたままうずくまる俺。声音や話す時の抑揚や仕草も全くミィルと同じなので、エンリが化けていることなどすぐに忘れてしまう。


 記憶も化けているようなので、これは全模倣だろう。


 しかしミィルは、一通り文句を言い終わると、


「悔しくないんですか? こんな小娘にバカにされて」


 と、無表情を保っていたミィルの口元がにやりと歪み、そう零した。あぁ……そこでようやく、エンリが何をしたいのかがわかった。


 俺は姿勢を直し、ミィルを見据える。

 同時にミィルも、無表情へと戻る。


「あぁ、よくも散々に言ってくれたな? このイラつき、どうしてくれようか」


 ゆっくりと詰めよれば、背に腕を回し、その華奢な体を抱き寄せる。ふわりと香る女性特有の良い匂いが鼻をくすぐり、抱いた体はとても柔らかかった。

 身長は150より少し上程度だろうか。俺にとってはこのくらいは全て小柄に見える。


「はぁ。私には関係ないですね。それよりもこんな朝から、堂々と強姦ですか?」


 ミィルは俺の腕に収まりながら、見上げるようにしてわざと此方を挑発するような言動を取る。

 俺の怒りを高めたいのであろう。……俺に、色々とさせるために。


 まあ、俺だって聖人君子ではない。あれだけ受付で言われ、内心でここまでバカにされていたとなれば少しはイラッとくるさ。


「うるせぇ!」


「きゃっ!」


 なので俺は、どんと突き放す。


 ミィルは余裕の表情が崩れ、先程までとは違い、可愛らしい悲鳴を上げたあと、痛みに顔を歪めて尻餅をつく。

 すると白い太腿の付け根までが見え、青と白のストライプ模様のパンツが見えてしまう。


 よく目を凝らして見れば、そのストライプの下着の裏にまた水色の下着が見えた。あれは元々履いていたものだろう……ということは、下着まで御丁寧に化けてあるということ。

 上のストライプの下着は、正真正銘ミィルが履いていた柄のものである。


 俺の視線は一気にそこへ釘付けになるも、ミィルは隠すどころか、そのまま脚をM字開脚に開き見せ付けてくる。


「ほう、生意気な性格と違って、可愛いパンツ履いてるんだな」


 この時はもう、俺までなんか楽しくなってきたので、いつもとは違った性格になっていた。

 多分こいつも楽しんでる。


「まだ誰にも体を許したことがないのに……駆け出しの冒険者に見られるなんて、屈辱です」


 悔しそうに言うも、行動と全くあっていないミィル。

 ようやく脚を閉じ、女の子座りにミィルは変えると、期待を含んだ目で此方に視線を向ける。

 俺はにやりと笑って近付くと、足を上げ……その頭を踏み付ける。軽く、軽く……本当に触れる程度。


 するとミィルは勢い良く地面へと上半身を伏した。まるで思いっきり踏みつけられたかの如く。俺も慌てて足を下げて、ちょこんと頭へ足をのせた。


「く……何が目的ですか……」


 苦しそうに言うミィル。


「謝罪だよ謝罪。ギルドの受付ごときが偉そうにしやがって。土下座してこれまでの非礼を詫びろ」


 見た目も言葉も完全に悪役の俺。


 するとミィルは、俺の足を払うと正座をし、再び上半身を自分から伏せ、土下座の姿勢を取った。


「……あのような態度を取ってしまい、申し訳、ありませんでした。……お詫びにライク様の奴隷になります。屑で雌豚でどうしようもない人間ですが、どうか捨てずに可愛がってください……この汚らしい体も、存分に好きにしてくだって構いませんから……」


 打って変わって媚びる様な態度。体を起こせば自分からスカートをたくし上げ、胸元をはだけさせ、上の下着に生脚とパンツと、色々と見せ付けてくる。


 …………。

 エンリ、お前相当ムカついてたんだな。自分を卑下……いや、ミィルのことをボロくそに言い放ち、俺へと全てを委ねる。


 という事で、エンリはこうして俺を馬鹿にした相手に化け、とことん無様な姿を披露して鬱憤を晴らしたかったわけである。


 そこまで怒ってくれるのは素直に嬉しいので、他に迷惑をかけないこういったことならば何も言わない。


 とりあえず機嫌は治ったようで、ミィルの顔でにやにやと意地の悪い笑みを浮かべて、俺に抱き着いてきた。


「へへ、どうだった?」


「偶には、こういうのも悪くないな」


 ミィルの抑揚のなかった声に、エンリの感情が混じった声。何とも言えぬむず痒さを感じながら答える。

 格好つけて言うが、控えめに言って最高であった。


 どれだけガードの固い女性、生意気な女の子でも、エンリの手にかかればこの通り。

 俺の性癖が歪んでしまうかもしれない。


 エンリの能力は、はっきり言ってぶっ壊れている。姿や記憶を模倣されれば、本人が現れない限りバレることはない。さらに記憶を読み取るので、なりすますことも可能であるし、財産をどこかに隠している記憶、この日は出掛け鍵はどこかに置いてある、なども読み取れば盗み放題である。


 その気になれば、王族へ成り代わり、俺を騎士にするでも養うでも何だってできてしまう。


 実際村ではこの能力を使い作戦を成功させた。……だが、言ってはなんだがこの能力は悪役向きである。他者へ迷惑をかけることが多い。加えてエンリの存在をバレないようにと制限をかけると、実際やれることが少ないのだ。


 この事は一度エンリとも深く話してあるので、問題はない。だが、せっかくのエンリの能力なんだ。上手く使っていける方法は俺が絶対に探してやるつもりだ。


 と、俺の反応に満足げにミィルの顔で笑うエンリ。


「こいつ、明後日は休みでギルドにはいないらしいからさ。首輪でも付けてギルド行こうよ! ……私はライク様の犬、無様に四つん這いで職場に戻り、野蛮な冒険者の前でライク様の靴をお舐めしますから」


「流石にそろそろ許してやれよ」


 途中、ミィルの演技をして、四つん這いになって俺の足に縋り付く。こんなことをすればミィルの評判は地に落ちるだろう。ついでに俺の評判も地に埋まるくらい落ちる。


 まあ口ぶりからして冗談であるし、もし本人がいないところで好き勝手やったとしても、後日本人に聞かれてしまえば終わりだ。


 何はともあれ、エンリもスッキリしたようで良かったよかった。

 俺ももやっとしていた気分がすっきりしたし、本当によかった。

 じゃあ、気を取り直してさっさと薬草採取に戻ろうね。





 ……さて。

 このむらむらとした気分、どうすればいいだろうか。先程は主の威厳を見せてあぁ言ったが、宿の部屋の中でなら、そんなプレイをしてもいいかもしれないな……。


日付

4月23日


所持貨幣

大金貨15枚

金貨5枚

大銀貨2枚

銀貨4枚

大銅貨1枚


所持G

814500G


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ