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12-服屋

 二人並んで、両開きの扉を開けて入る。

 中は見た目通り広く、様々な柄の服等が並べられていた。


 入店の際の「いらっしゃいませ」という挨拶は聞こえなかったが、代わりに中にいた客の視線が一気に俺の元に集まった。


 その視線には、「強盗か何か……?」という思いが含まれているように感じた。多分俺の被害妄想ではないだろう。

 武器を背負っているし、見た目が見た目だからな。


 この街、いやこの世界では武器を所持していることは禁止されていない。さすがに王族やらの謁見の場などでは取り上げられるだろうが、普通の店などでは基本的には許される。


 前世なら俺の顔でなくとも強盗扱いだろうが、これが文化の違いだろう。騎士もいるし、治安も良い。それに罪を犯せば俺のように牢獄送り、人なんて殺した場合は俺よりも酷い罪をかせられるというのは聞いている。


 というわけで問題はないはずなのだが、俺は問題だそうだ。


「じゃあエンリ、下着の方を見てきなさい。俺は俺で選んでおくから。終わったら外で集合な」


「はーい!」


 エンリはまた気分の良さそうに、下着売り場を探しに俺の元から離れて行った。

 この光景を見た客の半数は、視線を元の売り物へと戻してくれた。(エンリ)さまさまである。


 では、俺も探しますか。




 〜〜〜




 看守さんの言葉を忘れていた。俺のサイズを探すのには苦労したと。

 店内を歩き回り、下着はゲットできたのだが、上着とズボンを探すのには苦労した。


 苦労はしたが、とりあえずは今着ているものと同じものがあったので、それを購入することに決めた。

 もしかしたら看守さんも、ここで買ってきてくれたのかもしれない。エンリも俺のサイズの服が売っているののを見越してここを選んでくれたのかもしれない。


 まあそれはさておき、下着と上下の服を持って、レジらしきカウンターへと向かった。

 店員の反応は、今までのニーナや金髪少女と同じだったとだけ言っておこう。


 値段は全て合わせて4000G。相場はわからないが、この服も着心地が良いので、値段に不満はない。

 金貨を渡して、大銀貨一枚と銀貨一枚を受け取り、商品を入れた紙袋を受け取る。


 用は済んだので、俺はさっさと店の外へと出ていく。

 エンリに外で集合と言ったのはこのためである。俺が店内に留まるだけで営業妨害になりかねませんからね。


 後は、出来れば囚人の頃から貰って履いている、サイズの全く合っていない靴を変えたいところだが、これは防具屋でブーツでも買えばなんとかなるだろう。


 外へと出て、店の入り口から離れたところに腰を下ろす。街の中の地面は石畳で整備されており、尻をつけたところで土で汚れる心配もない。

 それにしても、何だか呆気ない買い物であったな。

 俺の容姿に対する反応を除けば、前世とそう変わりはない。これならそのうちうまくやっていけるだろう。


 そんなことを暫く考えながら待っていると、同じく片手に紙袋を下げ、片手に麻袋を持った(エンリ)が戻ってきた。


「お兄ちゃん、おまたせっ!」


「おう」


 にこっと笑う(エンリ)。可愛い。

 まるで妹の買い物に付き合う優しい兄のような感覚だ。

 俺は立ち上がり、麻袋と紙袋を自然に受け取り、俺の紙袋が一番大きかったので、その中に二つをまとめていれた。


「えへへ、ありがと!」


「? お、おう」


 一瞬何のお礼かわからず戸惑ったが、その視線の先で理解した。俺は力もあるし、何よりこの幼い少女に荷物を持たせておくという思考がまずなかったので、当然のごとく荷物を持っただけである。


 何気ないことに礼を言われ、少し気分の良くなる俺。

 足取りも軽くなり、そのまま一歩を踏み出す。


「さ、次は防具屋に行こうか!」


「あ、待って待ってお兄ちゃん!」


 歩き始めた俺の服の裾を引っ張り引き止める妹。

 何だ、と振り向くと、さらに裾を引っ張り、空いている方の手を握って人のいない路地裏へと連れてこられた。


「どうしたんだエンリ? また何かあったか?」


 人気のないところですることなんてただ一つ、ドッペルゲンガーのエンリとして俺と話すこと、その内容だ。


 俺が聞くと、(エンリ)は悪戯を思いついた子どものような笑みを浮かべて、その短いスカートの先へと手を伸ばす。


「さっきのお礼♪」


 刹那であった!

 バッと勢いよくたくしあげられたスカート!

 健康的な肌色の太ももが見え、更にその上の水色のフリルのついた下着が姿を表す!


 思いもよらぬ行動に不覚を取った俺の視線は、動く手ばかりに気を取られ、追っていた!

 だがしかし! 勢い良く上げられた手は追えず、視線はそのパンツへと残る!


 何度も言うが、想像だにしていなかったので、俺は動くことができなかった! 体も、視線もだ!


 そして俺が硬直(ぎょうし)していた数秒のあと、ぱさりとスカートは降ろされ、その水色の下着は再び姿を隠した。


「お兄ちゃん……そんなにジロジロ見られると、恥ずかしいよぉ……」


 もじもじと小柄な身体を揺らし、頬を紅く染め、恥じらう声で言われ、ハッと意識を取り戻す俺。

 慌てて視線を上げて妹の顔を見ると……手で口を抑えながら、笑いを堪えていた。


「おにいちゃん……ぷくっ……あ、主、アタシが思ってたよりも、凄い反応良くて……ぷっ……!」


「…………」


 何も言うまい。

 言いたい事はあるが、今回は言い訳はできない。脳内で言い訳はしまくっていたが、見てしまったものは見てしまったのだ。

 多分視線が動くことができなかったのも、本能の方のせいだろう。俺が悪いのである。


「へへっ、早速はいて見たんだけど、どうだった?」


 しかし、完全にエンリにからかわれたわけだが、俺の予想を裏切らず、妹の姿でもとても似合っていた。

 フリルつきなのは予想外だったが、個人的に良かったと思うのでよしとする。化けた後のギャップとか、そんなものはとうに頭からすっ飛んでいた。

 良いものを見せてもらった。


 これなら、元の姿ではもっと似合うのではないか。


「似合ってたよ、可愛いと思う。これなら、元のエンリの姿なら、もっと似合うだろうな」


 俺は正直にそのままをエンリの問いに返す。何を取り繕ってもどうにもならないので、ここは素直に返したほうがいいだろう。


 すると、俺の言葉を聞いたエンリは、「そ、そっか……」と頬をかきながら、視線を泳がせた。


「な、なら、宿の部屋に戻ったら、見せてあげるね……」


「お、おう……」


 照れたように言うエンリと、楽しみにしてるなんて間違っても変態のようなことを言えない俺は、いつもの短い返事で済ます。


 互いの間に訪れる沈黙。

 非常に気まずい。

 いつも他のことは飄々と受け流すのに、自分に対して言われた好意的な言葉には、化けの皮がすぐに剥がれ照れてしまうあたり、俺と似ているのかもしれない。


 俺はこのよくわからない雰囲気の空間から脱出するべく、足を進めエンリの手を取り、路地裏から出ようとする。


「さ、さあ、防具を買いに行くぞ! 防具は大切だからな、服より時間がかかるぞー!」


「お、おー!」


 わざとらく声を大にして言うと、エンリも気を取り戻し、片手を上げて妹の演技へと戻る。うむ、これで良い。


「それにしても、主って人間の女なら誰でもいいのかな……」


 途中、失礼なことを言われたような気がしたが、俺はさっきまでのことを忘れて防具屋を目指すのに必死であった。


 太陽は真上に上る少し手前。

 昼を食べる予定はないので、あとの一日は防具選びと街の探索か。


 俺は空を見上げながら思い、足を進めるのであった。



所持貨幣

大金貨28枚

金貨1枚

大銀貨2枚

銀貨4枚

大銅貨1枚


所持金

1424500G


出費

ライクの上下服、下着合わせて(4000G)

エンリの下着、二つ(20000G)

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