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9-新たな仕事

 街壁修復の仕事が終わり、新たな労働が課せられる当日。

 いつものようにエンリが妹に化けて俺を起こし、ラジオ体操を終え、運ばれてきた朝食を食べ終えた後。


 そこからが、今までとは違った。

 まず、今までは一斉に招集がかかったのだが、順番に牢屋が開けられ連れて行かれているようで、中々俺の番が回ってくるのに時間がかかった。


 数十分程待った後、ようやく看守が俺のいる牢屋の鍵を開け、俺を連れ出す。

 エンリは相変わらず蜥蜴に化け、俺の囚人服の中、背中の肌にくっついている。


 少々むず痒いが、俺は新しい仕事のことを考えることで頭がいっぱいであった。

 何をやらされるのか。

 俺にできる仕事なのだろうか。


 看守の後に無言で続き、牢獄の外へと出る。

 外は真夏の快晴、新しい仕事への祝のように良い天気であった。


 辺りを見れば、何人かに囚人たちが分けられ、俺は一人の騎士の立っている場へ連れて行かれた。


「これからはお前たちには別々の仕事をしてもらう! それぞれの騎士に従うように!」


 仕事の分担か。

 俺と同じ場にいるのは他に二人。どちらも体格の良い、街壁修復でも良く働いていた男だ。


 適材適所、多分俺らのグループは力仕事の方面だろう。

 他のグループも看守の目によりわけられていると思う。

 そして、俺のグループは騎士が一人だが、他は騎士が二人いるなど違った様子も見られる。


 多分これはバッジの色も分けられる判断の要素に入っているのだろう。俺のバッジは赤、他二人も緑だ。

 反抗もないと考え、騎士をつける数を一人にしたのか。


 縄も手錠もないので危険だとも思うが、騎士の人員も、こちらに手を回せるほど少ないのかもしれない。


 看守が全員の点呼をとった後、グループごとに移動が始まった。


「付いて来い」


 騎士の一声により、俺らも騎士の後を続く。

 他二人とは話したこともないので、ただひたすらに騎士の歩くたびに聞こえる鎧の音のみが響くだけの移動。


 二年、リベルというやかましくも憎めない奴がいたおかげで、何となく寂しいと感じてしまった。


 移動中は街中を歩く。

 普通に街の人も歩く道をゆくので、当然人に俺らの姿も見られる。当初は聞こえるヒソヒソ話、向けられる視線などに敏感になっていたが、今では特に気にならない。


 エンリの情報では、街の人もこの光景には慣れているという。ヒソヒソ話の内容は、新しい奴がいる、どんな労働をさせられているのか、等が主らしい。


 さすがに街の人々も距離はとっているが、俺ら三人が結託して人質でも取りに行けそうだが大丈夫なのだろうか本当に。


 まあそれだけ俺たちのグループは信用されているのだろう。何せ俺のバッジは赤、良い子の中の良い子だ。例え緑バッジである他二人がここで犯罪に走ろうとしても止めに入る。


 この街は騎士の他にもギルドというものがあり、傭兵等も多くいるので、人質を取りに行ったとしてもすぐに取り押さえられるのは目に見える。


 ここから出たら、俺もギルドから仕事を探そうか、等と昨日はエンリと話していたものだ。


 しばらく歩いていると、街の門をくぐり外へと出る。

 と、さすがに予想外だったのか、一人の男が騎士の背中へと声をかけた。


「騎士さん、俺らは外まで連れてかれて、一体何をやらされるんだい?」


「ん? あぁ、心配ない。お前らの仕事場はすぐそこだ」


 男の声に振り返り、指をさしながら答えた騎士。

 その指の先には、川が流れており……何やら、積み上げられた木材と、作業をしている人間がちらほら見える。


「お前らの仕事は、あそこの橋づくりの協力だ。ここ南門は川が流れ大地を遮り、防衛の面でも優秀なのだが、地震により橋が壊れてしまってな。専門の者たちが手をつけているのだが、他に回され人手が足りなくてな。橋がないと迂回などをしなければならないので交通が不便なのだ。他の復興により後回しにされたせいでまだ全然完成のみどが立っていないが、よろしく頼むぞ」


 対岸までの幅は数十メートル程。

 前世で俺が飛び込んだ川にどことなく似ている。


 騎士に連れられ、人の集まっている場へと移動する。


 するとこちらに気付いたのか、一人の男が騎士に近付いてきた。


「よぉ騎士さん、こいつらが言っていた例の奴隷たちか?」


「あぁそうだ。死なん程度に使ってくれ」


 男は俺よりも身長が高く体格も良い。つるりと光る禿頭が特徴的な、いかにも親方という呼び方が似合いそうな大男だ。


 それにしても死なん程度って、橋づくりに何をさせられるんだ。


 やがて騎士は会話を終え、見張りのように離れたところで立つ。

 俺たち三人は取り残されるが、代わりに禿頭が目の前に立った。

 腕組みをしながら、品定めするような目で俺たちを見る。どうしていいのかわからないため、俺たち三人は黙ったままである。


 やがて禿頭はふっと鼻で笑うと、俺たちに背を向けた。


「奴隷になんか期待してないが、まあいい。付いて来い、仕事をやる」


 酷い言われようだが、元は犯罪者、橋づくりの知識なんか専門の者と比べれば期待も何もない。


 釈然とはしないが、黙って付いていくことしかできない俺たち三人。

 他二人はどう思っているのだろうか。


「(主、アタシあいつ嫌い)」


「(まあ、そう言うなって)」


 どうやら、新たな仕事は前途多難なようである。

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