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10-橋づくり

「親方、そいつらが例の?」


「そうだ、お前らもこき使ってやれ」


 作業途中の一人の男が気付き、禿頭を親方と呼ぶ。

 なるほど、親方で間違っていなかったか。


 その後、簡単に親方から説明を受けた。

 この橋はまず、前に崩れた橋から作り直すので、大きな基礎部分は残っている。橋を支える土台部分等だ。

 崩れた前の橋の残骸や瓦礫の処理はすでに終わっており、支保工という石を支える木材でできた骨組みも完成しているので、いつでも手を付けられる状態だ。


 崩れて緩くなった橋をかける地盤も、土の魔法により固められている。

 俺たちの仕事は、その土台にまた石材を積み重て橋を作ること。前とやることは変わっていない、石を運んで置いていくだけだ。


 前世の記憶から、これはアーチ橋の構造だということだけは理解した。

 他に知識はないが、なくともやっていけるに違いない。

 早速俺たちは仕事に取り掛かっていった。


 石を運ぶ役割は俺たち奴隷のみではなく、ここの土方たちもやっている。石の大きさは、前の街壁のものとそう変わらない大きさだ。


 この橋を作るためには、こちら側からだけではなく、対岸からも順に石を置いていかなければならない。

 とまあ、俺たち奴隷は対岸の方をを任された。


 川を迂回して歩くこと一時間半程。


 やっとのことで対岸へつくと、既に石材は運び終わっており、後は支保工に置いていくだけである。


 当然、俺たちだけというわけではなく、騎士と親方、後二人ほどがこちらへ付いてきてくれた。

 素人だけでは不安だろう、俺も何か間違わないか不安であったので安心だ。


 早速積んであった石材を持ち上げて運ぶ。

 前と重さもそう変わらないので、俺一人でも運べる。

 他二人は俺ほど力もないので、二人で一つを運んでもらうことにした。これも効率よくだ。


 石材を一人で持ち上げる俺に、またもやここの土方たちに驚かれたが、気にする暇はない。

 移動するだけで時間がかかる、早く作業に取り掛からねばあっという間に日が暮れる。


「ここでいいんですよね?」


「ん? あぁ、そうだ」


 石材を持ちながら親方に聞くと、短く返事を返してくれる。付いてきた他二人も石材を運んでいるが、騎士と親方は見ているだけだ。

 監督みたいなものだろうか。


 俺は骨組みの上に石材を置く。とても腰に負担がかかりそうだが、とっくの昔に鍛えられているのでこの程度では筋肉痛にさえならない。


 二人の奴隷も街壁修復の時からいる囚人だ。

 無言ながら、街壁修復時の経験を発揮し、見事なチームワークで石材をスムーズに運んでいる。


「…………ほう」


 そんな俺たちの様子を、感心するように眺める親方。

 この世界の犯罪奴隷がどうかは知らないが、俺たちは仕事のできる犯罪奴隷なのだ。

 見くびってもらっては困る。


 ニヤケ顔を隠しながら作業を続ける。

 川は数十メートル。

 橋づくりも始まったばかり、時間はかかりそうだ。


「(うーん、これなら大丈夫かな)」


 肩まで移動して言うエンリ。

 どうやらエンリも納得してくれそうである。


 一日の作業時間はそう変わらず、この日は騎士の声により、午後の五時頃に切り上げられ、対岸まで戻るのに六時半ほど。

 ここは街の外であり、いつ魔物に襲われるかもわかったものではない。夜は夜行性の魔物も活発になるということで夕方には他の作業員たちも仕事を切り上げられるのだ。


 騎士や親方はどうやら時計を持っているようで、時間の把握は容易である。

 これなら安心して仕事もできるだろう。




 〜〜〜




「で、どうだった、エンリ?」


 牢屋へと戻り、夕食を済ました後。

 元の姿へと戻り、俺と同じくベッドへ腰掛けているエンリに今日のことを聞いた。


 エンリは「んー」やら「うー」やら唸っている。

 そこまで悩むことではないとは思うが……やはり心配してくれているのだろう。


 俺としては、『カラン』が告白された等の話を聞いているほうが心配なのだが。


 やがて唸るのをやめ、俺の方を向く。

 どうやら答えは決まったようだ。


「大丈夫そうなのはわかった……けど、これからはお店の仕事を週五日にして、アタシが休みの時は絶対に主についていくから!」


 週は前世と変わらず七日。

 俺は休みという概念さえもないので年中無休の働きっぱなしだが、一応エンリには休日がある。

 その休日を一日増やし、俺の仕事についてくる日を多くする、というのが譲歩といったところか。


 まあエンリに働いてもらっているのも元はといえば俺のお願いのようなものだし、特に困ったことはない。

 俺としてもエンリといられる時間が増えるのは嬉しい。


「わかった。それに今回の仕事じゃ、もう昼に食料や飲み物を持ってきてもらうこともできないだろうしな」


 街の外、そして俺の任された場は対岸だ。

 移動にも時間がかかる、そこまで昼の忙しい時間にエンリも抜けてこられないだろう。


 俺が返すと、エンリは腕を組みながら再び唸る。

 俺の癖がうつったのか。


「んー……なら、もうお仕事もやめようかなー……」


 何やら不穏な言葉が聞こえてくる。

 こちらも前途多難なようだ。






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