20-順調な計画の進行
やましいことがある場合は、逆に堂々として行ったほうがいい。
というわけで、俺たちは村の柵がない入り口から堂々と村の中へと足を踏み入れていった。
見渡す限り目に入ってくるのは木造の建物ばかり。村なので当然だろう、石造りの家なんて作ろうとしたら運搬や労力も桁違いだ。
殆どが一軒家であり、二階建ての家が一つ見える。あれは宿だろう。字はある程度しか読めないが看板らしきものが見える。
そして畑はやはり荒らされていた。動物か何かか。それを慣らすように畑仕事に取り掛かる男たちの姿も見える。
すると、井戸から水を組んできたのか、桶を持った女性が通りかかる。
話しかけるならちょうどいいタイミングだ。
第一印象が大事だ。
エンリには人を見た目で判断してはいけないと言ったが、表情などからは容易に判断できる。
俺は前世で培った営業スマイルを浮かべて声をかけた。
「こんにちは」
「っ、きゃーっ! 山賊よ!」
こちらを見るなり、驚いて手に持っていた桶を落とし声を張り上げる女性。
その声に駆けつけたのか畑仕事をしていた男たち数人が鍬を持ったまま構え、家からも何人か男たちが出てくる。
外に出ていた子供や女は家の中へと避難していった。
おかしいと思わないだろうか。
結局人は見た目なのだろうか。
俺は世の中の厳しさをまた胸に刻むが、この状況はまずい。
すっかりと囲まれ、ジリジリと距離を詰められている。
「おう、こいつが山賊か。けっ、一人じゃねえか」
「待ってください、誤解です!」
他の男たちよりも一回り大きな男が前に出る。装備もきちんとしており、手には剣が握られていた。
多分この村に雇われた傭兵の用心棒だろう。
俺は必死に弁解するが周りは聞く耳を持たない。一度決めつけると簡単には変わらないのが人間だ。
まったく、俺が一人だからいいものの、もしも囮だったら君たち一網打尽だぞ。
なんて高みからの現実逃避に浸るがこのままではまずい。
もしもの時のために斧を背負っていた紐を緩めて身構える。
すると、先ほどまで俺の影に隠れていたエンリが俺の前に腕を広げて守るように立った。
「まってください! お兄ちゃんは悪い人じゃありません!」
幼いながらもキチンと意志をもつ張った声。
十歳の可愛らしい少女の言葉は俺の言葉の何百倍もの効果を持つ。
その証拠に男たちは気を緩めて構えていた鍬などを降ろし、話を聞く体勢に入ってくれた。
傭兵の男も最初から警戒していなかったのか、腕を組んで鼻で笑った。
良かった……エンリを連れてきて本当に良かった……。
〜〜〜
「つまり、仕事はないということですか?」
「えぇ、そうなりますねぇ」
他の家よりもひときわ大きな家の中。
椅子に座って向かい合い、話をしている相手はこの村の村長だ。
四十代くらいの一般的なサラリーマン、といった風の容姿。なんだか少しやつれているように見える。
あれから俺とエンリの必死の説明により何とか村長と話し合うことまでこじつけた。
俺たちの設定はこうだ。
俺と妹は旅をしており、途中見つけたこの村へと足を運んだ。俺は傭兵であり、目的は仕事がないか聞くこと。
街のような規模になるとギルドという存在があり、様々な人間から依頼が寄せられるのだが、こうして直接聞きに行ったりするのも一般的である。
しかしどうやら仕事はないらしい。傭兵としても先ほどの男をもう雇っている。
何か仕事があればそれを行い、あわよくば一日ぐらい宿に泊まったりして滞在し様子を見ようと思ったが無理なようだ。
だが、本来の目的は別だ。
「お姉ちゃん、一緒にあそぼっ!」
声の方へ目を向けると、エンリが村長の娘だという女性の手を引っ張っていた。
「しょうがないなぁ。パパ、この子と遊んできてあげていい?」
「あぁ、構わないよ。怪我だけには気をつけてね」
「やったー! なら早くいこっ、お姉ちゃん!」
「ふふ、元気だね」
そう言っては、扉を開けて出ていく二人。
俺と村長はそれを見送り、確認した後俺は立ち上がった。
「急にすみませんでした」
「いえ、こちらこそ早まって勘違いをしてしまい、ご迷惑をおかけしました」
村長の方も立ち上がり、頭を下げ合う。日本人のようなやり取りに、なんだか俺は可笑しくて心の中で笑った。
この人は間違いなくいい人だ。だが、これから襲い、大金貨十枚分の金額を奪っていかなければならない。
これ以上話していると心苦しくてつい躊躇ってしまうかもしれない。それにもう第一の目的は達した。
早く離れることにしよう。
「では、失礼しました。ですが少しの間滞在させていただきますね」
「えぇ、こちらこそ。何もないところですがゆっくりしていってください。最近では山から降りてきた獣たちが畑を荒らして見た目も悪いですが……」
なるほど、そういうことか。
山の餌がなくなり、もしくは上位の存在に餌場を独占された獣たちが山を降りて村の畑を
荒らした。
なので山の獣の数も少なかったのだろう。
俺は一人納得して頷くと、一礼して村長の家を出た。
さて、次に移るとしよう。




