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第27話 初めての二人きり――俺が気になっている人

 秋が深まってきた。

 夏の暑さはすっかり消え、大学の並木道には赤や黄色に色づいた葉が増えている。

 学園祭の熱気が過ぎ去ったキャンパスは、少しだけ落ち着きを取り戻していた。


 ――とはいえ。


「藤堂!」

「ん?」

「冬季交流イベントの資料、できたぞ!」


 颯太が大量の資料を抱えてやってくる。


「ありがとう」

「いやー、結構大変だったな!」

「お前は途中で遊んでただろ」


 直人が冷静に突っ込む。


「細かいこと言うなよ!」

「細かくない」

「二人とも元気だな……」


 俺は苦笑する。

 学園祭が終わったと思ったら、今度は冬季交流イベント。

 この大学は、本当にイベントに力を入れている。

 学生同士の交流を目的とした大規模イベントで、模擬店やスポーツ大会、イルミネーションなど、様々な企画が予定されているらしい。

 そして俺たちは、その実行委員として準備を任されていた。


「藤堂くん」


 振り返る。


「結衣先輩」

「これ、確認してもらえる?」

「はい」


 結衣先輩が資料を渡してくる。


「ありがとう」

「こちらこそ」


 その隣から。


「藤堂先輩!」


 心春が顔を出す。


「こっちも確認お願いします!」

「ああ、今行く」

「はい!」


 さらに。


「藤堂くん~」

「花音も?」

「はい~」


 花音が資料を抱えている。


「私のところも見てください~」

「分かった」

「ありがとうございます~」


 そして。


「藤堂」


 葵先輩。


「この部分、少し変更した方がいいと思う」

「確かに」

「でしょう?」


 凛も近くで資料を確認している。


「この配置なら、来場者が混雑しそうです」

「じゃあ、少し変えるか」

「はい」


 莉奈が笑う。


「みんな、すっかり実行委員だね!」

「桜井もな」

「私はもちろん!」


 気づけば。


 俺たちはまた、みんなで同じ時間を過ごしていた。



 その日の放課後。


「藤堂くん」


 結衣先輩が声をかけてきた。


「はい?」

「少し時間ある?」

「大丈夫です」

「じゃあ、資料を一緒に整理してほしいの」

「分かりました」


 俺と結衣先輩は、誰もいなくなった教室へ向かった。


「……思ったより多いですね」


 机の上には大量の資料。


「そうなの」


 結衣先輩が苦笑する。


「イベントの規模が大きいからね」

「これは大変だ」

「でも」


 結衣先輩が笑う。


「藤堂くんがいるから安心」

「俺でよければ、いくらでも手伝いますよ」

「ありがとう」


 二人で資料を整理する。

 静かな教室。

 窓の外から聞こえる運動部の声。

 夕方の光が差し込んでいる。


「……」

「……」


 しばらくして。


「ねえ、藤堂くん」

「はい?」

「最近、少し変わったね」

「俺が?」

「うん」


 結衣先輩は優しく笑う。


「前より、よく笑うようになった」

「そうですか?」

「そうだよ」

「……」

「それに」


 先輩が続ける。


「人といることを、前より楽しんでる」

「……」


 俺は少し考える。


「みんなのおかげだと思います」

「そうね」


 結衣先輩は頷く。


「でも」

「?」

「その中でも、誰か一人を特別に思うようになる日が来るのかもしれないね」

「……」

「そのときは」


 先輩が俺を見る。


「ちゃんと自分の気持ちを大切にしてね」

「はい」

「誰かに遠慮しなくていいから」

「……分かりました」


 先輩は微笑んだ。


「それなら安心した」



 資料整理が終わった。


「ありがとうございました」

「こちらこそ」


 教室を出る。


「藤堂くん」

「はい?」

「一緒に帰らない?」

「もちろん」


 二人で校門へ向かう。

 途中。


「先輩」

「ん?」

「この前も二人で帰りましたよね」

「そうだったね」

「……」

「何?」

「いえ」


 結衣先輩が少し笑う。


「なんだか、こうして藤堂くんと二人で歩くのが当たり前になってきたなって」

「確かに」

「……嬉しいな」

「え?」

「なんでもない」


 先輩は少しだけ前を向いた。



 その翌日。

 昼休み。


「藤堂くん!」


 莉奈がやってくる。


「お昼、一緒に食べよう!」

「いいよ」

「やった!」


 食堂へ向かう。


「そういえば」


 莉奈が言う。


「冬のイベント、楽しみだね」

「ああ」

「イルミネーションもあるんだって」

「聞いた」

「……」


 莉奈が少し黙る。


「どうした?」

「今年の冬」

「うん」

「一緒に見られたらいいなって」

「みんなで?」

「……」


 莉奈が少し考える。


「最初はみんなで」

「うん」

「でも……」

「?」

「そのあと、二人で見たい」

「……」


 莉奈は顔を赤くする。


「だめ?」

「いや」


 俺は笑う。


「いいよ」

「本当?」

「ああ」

「約束だからね!」


 莉奈は嬉しそうだった。



 午後。

 講義が終わる。

 俺が教室を出ると。


「藤堂先輩」


 心春が待っていた。


「どうした?」

「一緒に帰りませんか?」

「いいよ」

「やった!」


 心春が笑う。


「先輩」

「ん?」

「冬のイベント」

「うん」

「私、先輩と一緒に見たいものがあります」

「何?」

「秘密です!」

「また秘密か」

「当日までのお楽しみです!」


 心春は楽しそうに笑った。


 そして。



 翌日。


「藤堂くん~」


 花音が近づいてくる。


「どうした?」

「ちょっとお願いがあるんです」

「何?」

「今度のお休み」

「うん」

「一緒にお買い物しませんか?」

「いいよ」

「本当ですか?」

「ああ」

「えへへ」


 花音が嬉しそうに笑う。


「楽しみです~」



 その日の夕方。

 大学の中庭。


「藤堂」


 葵先輩が呼び止める。


「はい?」

「少し付き合って」

「どこへ?」

「図書館」

「分かりました」


 二人で歩く。


「最近」


 葵先輩が言う。


「みんな、積極的になったわね」

「……そうですね」

「あなたは大変でしょう?」

「まあ……」

「でも」


 葵先輩がこちらを見る。


「少し嬉しそう」

「俺が?」

「ええ」

「……」

「以前より、あなたの表情が分かるようになった」

「そうですか」

「うん」


 葵先輩は少しだけ笑った。


「それだけよ」


 そして。


 図書館から戻る途中。


「先輩」


 凛が待っていた。


「凛?」

「少し話せますか?」

「ああ」

「ありがとうございます」


 凛は俺の隣を歩く。


「先輩」

「ん?」

「最近」

「うん」

「誰か気になる人、いますか?」

「……」


 突然の質問だった。


「どうして?」

「なんとなく」

「……」


 俺は考える。


「まだ、分からない」

「そうですか」


 凛は少し笑う。


「なら、よかったです」

「何が?」

「まだ私にも可能性があるので」

「……」


 凛は前を向く。


「私も頑張ります」



 その夜。

 俺は一人で部屋にいた。

 机の上には、大学のイベント資料。


 でも。


 集中できない。


「……」


 頭の中にみんなの顔が浮かぶ。


 莉奈。

 花音。

 葵先輩。

 結衣先輩。

 心春。

 凛。


 六人とも。


 俺にとって大切な存在だ。

 誰か一人を選ぶなんて。

 まだ考えられない。


「……」


 だけど。


 ふと。


 一人の顔が浮かんだ。


「……」


 俺は目を閉じる。

 その人が笑っている姿。

 一緒に話したこと。

 何気ない言葉。


 そして。


 その人と二人きりでいるときの安心感。


「……なんで」


 自分でも分からない。


「なんで、こんなに気になるんだ?」


 胸の奥が少しだけ騒がしい。

 俺はまだ。

 その感情に名前をつけられなかった。



 翌週。

 大学の講義室。

 俺はいつもの席に座っていた。


「藤堂くん」


 声が聞こえる。


「……」


 顔を上げる。


 そこにいたのは――。


「おはよう」


 結衣先輩だった。


「あ、おはようございます」

「今日も眠そうだね」

「少し考え事をしていて」

「何を?」

「……自分の気持ちについて」

「……」


 結衣先輩が少し驚く。


「そっか」

「はい」

「じゃあ」


 先輩は優しく笑う。


「急がなくていいよ」

「……」

「自分の答えが見つかるまで」


 そう言って。

 先輩は俺の隣の席に座った。


「一緒に考えていこう?」

「……ありがとうございます」


 俺は先輩を見る。

 その瞬間。

 まただった。

 胸の奥が。

 少しだけ温かくなる。


「……」


 俺は気づき始めていた。

 もしかしたら。

 俺が気になっているのは――。



 放課後。

 大学の中庭。

 莉奈、花音、葵、結衣、心春、凛。

 六人が集まっていた。


「ねえ」


 莉奈が言う。


「みんな」

「何?」


 葵が聞く。


「藤堂くん」


 莉奈は少しだけ笑った。


「最近、誰か気になってると思わない?」

「……」


 全員が黙る。


「私も」


 凛が言う。


「少し感じています」

「やっぱり?」


 莉奈が頷く。


「藤堂くん、最近ちょっとだけ違うよね」

「そうですね~」


 花音も頷く。


「なんだか、前より誰かを目で追ってる気がします」

「私も気づいた」


 心春が言う。


「……」


 結衣は何も言わない。


「結衣先輩?」

「……ううん」


 結衣は微笑む。


「まだ分からないよ」

「そうですね」


 凛が頷く。


「でも」


 葵が静かに言う。


「私たちも、もう待っているだけじゃ駄目なのかもしれない」

「……」


 六人の視線が交差する。


 そして。


 誰も口には出さなかったが。

 全員が同じことを考えていた。


 ――晃の心にいるのは、誰なのか。



 その頃。

 俺は一人、帰り道を歩いていた。


「……」


 秋の風が吹く。

 街路樹の葉が舞う。

 俺は胸に手を当てる。


「……まだ、分からない」


 だけど。

 ほんの少し。

 本当にほんの少しだけ。


 気づき始めていた。


 誰かと話したとき。

 誰かと一緒にいるとき。


 その中でも。


 「もう少し一緒にいたい」


 そう思ってしまう相手がいることに。

 それが恋なのか。

 ただの安心感なのか。

 俺にはまだ分からない。


 でも。


 俺の恋は。

 確実に動き始めていた。

今日の12時に公開予定でしたが忘れていました・・・

大変申し訳ございません!

ストックもまたつきかけているので投稿頻度は落ちるかもしれません。

基本的に12時に公開としているのでぜひ見てください!


そして、9月1日から新しい小説を連載開始します!

今回は「カクヨム様」のみの連載とさせていただきます。

そちらで人気でしたらこちらにも連載しようと思います。


【転生したら美少女イラストレーターでした――正体を隠して活動していたら、VTuberたちに懐かれすぎています】

というタイトルです!名前の通りの小説となっております!

お楽しみにしていてください!


フォローなどもよろしくお願いします!

あと、よろしければ周りにも広めてくれると嬉しいです!


これからも応援よろしくお願いします!!!

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