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第39話

第一試合、俺達がチャンピオンになるというまさかの展開に視聴者も大いに盛り上がっていた。


[すげえええええええ!]

[神!]

[ないすううううううううう]

[まじかよwww]


そんなコメント欄を横目に、俺達はまた作戦を開始する。


「ねえキミ!また同じ作戦でいいのかな!」


イヤホンの向こうから暁野(あけの)ひなたが俺に問いかけてきた。


「ああ。今回のエリアも同じ作戦が使えそうだ。だが位置はバレてるから今度は向こうの崖でスタンバっててくれ」

「了解です」

「オッケー!」


活気のある返事と共に俺達は散り散りに分かれた。


俺は物資を集める。


この作戦は速度が命だ。向こうはそろそろ位置についた頃だろうか。


「そっちはそろそろ準備できた─」


俺が確認しようと声を上げると、ポツリと呟く声がその声を遮る。


「…ゴメン」


「ひなたさあああああああん!」


てすり氏の悲鳴と共にキルログに文字が現れる。



─ 暁野ひなた 落下 ─



「何やってんだあああああああああ!」

「ごめーーーーーーーん!落ちちゃった!」


暁野ひなたが崖から足を滑らせて落下したのである。


速度が命だと言ったそばからあのオキアミ野郎。兎に角すぐにリカバリーしなければ。


「てすり氏!あっちで復活させて今度はその近くの崖で待機だ。」

「分かりました!」


彼女はすぐさまオキアミの残骸を拾い上げ復活地点へ向かう。そして暁野ひなたを乗せた船がやってきた。


それを見てホッと胸をなでおろし、物資集めを再開する。


そして小屋へと向かう道中、ポツリと呟く声が俺の耳へと届く。


「…ごめんなさい」


「てすりちゃーーーーーーーん!!」


…あれ?この光景、なんか見覚えが。


既視感と共に案の定キルログが流れる。 



ー てすりです。 落下 ー



「おいコラああああああああああ!?」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」


ミジンコまでもがあああああああああああ。

いや、だがてすり氏は初心者だから仕方ない。


昂る気持ちを抑えつつ俺は指示を飛ばす。


「まだ間に合う!ここの近くの復活地点を使ってこっちに見える崖まで走れ!」


そうこうしているうちに俺は小屋までたどり着いていた。

俺が念入りにガストラップを仕掛けている最中、


「…ゴメン」


またしてもポツリと呟く声が俺の耳を通り過ぎる。


…いや、まさかね。天丼は二回までって相場が決まってるから、うん。


画面の右上をテキストが掠める。



─ 暁野ひなた 落下 ─



オ・キ・ア・ミィィィィ何回やんだゴラァ!!!


「どうやってプラチナまで来たんだテメエは!」

「いやホント…ゴメン…、てへぺろ☆」

「絶対反省してねえ!もういい!急いで復活させろ!」


暁野ひなたを乗せた船が上空まで来たその時、その船の丁度逆方向、少し見上げた台地の先から、先ほどとは違う、飄々とした声が聞こえてくる。


「相変わらず賑やかでんなあ」


想定外には想定外が重なるってことか、思ってたよりも到着が早すぎるぜ。


「…よおGEN氏、さっきより随分と早いじゃねえか」


見上げた先には三人の人影が見える。

GEN氏のチームが先ほどのリベンジにやって来たのだ。


「さっきはこっぴどくやられてもうたからなあ。皆が来る前に早朝出勤や」

「それは随分と殊勝な心がけだな。だが早く来た所で定時が早まる訳じゃねえぜ?」

「おっと、その手には乗らん。イツカはんを倒して、定時退社や!」


そう言い残し、人影が一気にこちらへと迫ってくる。


クソっ。この作戦には明確に穴がある。それは、俺が倒されると終わるってことだ。

そうならない為に出来るだけ広いところに陣取ったりトラップでリスクを上げて抑止力にしているんだが、そんなのに引っかかるのはあいつらだけだったってことなのか?


「丁度向こうに復活したての餌が居るんだぜ?逃がしたら勿体ねえぞ?」

「いいや。イツカはんこそが餌でありこのチームの針でもある。針を一気に食いちぎってもうたら終い言うこっちゃ!」

「チッ!」


部屋の中に幾つものグレネードが投げ込まれ、ガストラップと共に部屋の隅へと俺は身を隠す。

裏口はトラップで塞いである。俺は正面を迎撃する。


顔を出しながらの撃ち合い、こちらの位置は制限されているものの相手はこちらに身体を曝さなければならない。

その隙を俺が狙い撃つ。部屋の隅から窓の中点を通して銃弾が相手に命中する。


正面はひとまず抑えた。


──ピシュン


鉛の塊が空気を切り裂く音がする。

復活した明野ひなたが崖の上から小屋に向かって射線を伸ばしていた。

しかし弾は地面へと落ちる。


「どうしよう、当たらないよ!」


大方の場所がバレている、そして焦りもある。


──俺が見るしかない。


そう思い俺が裏口に目を向けると、


無い、そこにあるはずのものが。


「流石にそれはワイには通用せーへんで」


ガストラップが綺麗に撤去されていたのだ。


「お邪魔しまんにゃわー」


扉が開くと同時に銃弾がなだれ込む。


その瞬間、俺の体は地面に向かい力を失った。


「バラしたったでえ」


GEN氏の銃口がこちらへと向かう。


このまま止めを刺されれば俺は終わり。残りの二人では恐らく勝ち残ることは出来ないだろう。


いや違う。今はそんなことを考えている場合じゃねえ。何ならこの思考だって無駄だ。


次々に浮かんでくる考えを乱雑に放り投げていく


GEN氏に勝つ─無理。

俺が何かする─無理。

足を引っ張る─しかない。

初心者を潰せ─何処にいる。正面、裏口、居ない。屋根、居ない。


白紙に戻った世界の中でハッキリと声が聞こえる。


「お二人さんとも早いわあって、きゃっ、あぶなぁ」

「しもた!前行き過ぎたか。」


この声はGEN氏のチームメイト、揺舞(ゆらまい)せんらの声だ。GEN氏達に後れを取っている。そして、撃たれている。

撃っているのは、俺のチームメイト、あいつらだ。


「私たちが何とかしないと!」

「は、はい!おおお落ち着いて狙いましょう」


二人は無造作に弾をばら撒いていた。


心の中の俺は笑っていた。


ははっ、全然当たってる音はしねーけどな!


白い世界の中に響く銃声、俺は只、足を引っ張るという目の前の報酬に手を伸ばそうとしていた。


最後のあがきに、俺は力強く怒号を飛ばす。


「お前ら!揺舞せんらだけは絶対に倒せ!何に変えてもだ!」

「えっ、…うん、分かった!せんらちゃんゴメン!」


「あっ、わっ!危ないわぁ」


銃弾の雨に曝された揺舞せんらは千鳥足でその場を駆ける。

…やっぱり全然当たってねーけどな!


「往生際が悪いで、イツカはん。ゆら姉!後で行くから待っててな!」

「はぁいーって、あっ、やんっ!」


落ち着き払ったGEN氏の声。


しかし、やはりGEN氏は勘違いしている。だったら俺が餌を撒くしかねえ。


「クソッ!俺が倒されちまったらもう復活できねえ!復活場所が残ってねえぞ!」


わざとらしく叫ぶ。


「復活ポイントが残ってないやと?」


食いつくようにGEN氏が俺に問いかける。


「そうなんだよ!チームメイトのバカどもが全部使っちまったんだ。ログで見てただろ。」

「…ホンマや…無いで。でもなんでわざわざそんなこと…いや、でも」


GEN氏の顔が怪訝な表情に変わる。


「なあ…イツカはん、もしかしてやけど、何が言いたいんや?」


来たぜ。俺の命とあいつの命。この場面じゃ、同じ重さだ。

今度こそバラさねーぞ。


「よくわかんねーが。お客様は皆、あちらにいかれるみてーだなあ!!!」


最大限のオブラートに包んで答案をぶん投げた。その意図はきちんと伝わっていた。


「いや、そういうゲームや無いやろコレぇええ!!」


そう叫んだGEN氏は銃を収め、味方の方へと走り出す。


「GENさん、おおきに。助かりました。でも、良かったんですか?見逃してもうて」

「背に腹は変えられん。にしても最悪の不文律やで」


そうして安全を確保した俺達も合流する。


「あぶねー。助かったぜ。」

「助かったというか助けられたというかですね。」

「意外と俺ネゴシエーターの才能があるかもしれねえ」

「いやどう考えても犯人側だけどね!」

「ここからはどうしましょうか?」

「今ので良いポジションは確保できた。後はなんとか生き残るぞ」


GEN氏のチームは積極的に前に出て戦い、俺達はその妨げにならないよう立ち回る。


奇妙な距離感のまま試合は進み、


二戦目、チャンピオンはGEN氏のチーム、


そして俺達は2位だった。


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