第37話
ハッと目を覚まして目の前に広がっていたのは記憶の中と同じ俺の部屋だった。
違うところがあるとすれば、配信用の機材がパソコンに繋がれている所だろうか。
「最悪な夢だったな…」
寝ぼけた頭を整理するように首をぐるりと回し、舌打ちをする。
「チッ、あいつも出てやがったのか」
晴天の霹靂だった。奴が出場していることは予想できたと言えばできたが結果論も甚だしい。
「気に入らねえな。」
その一言で嫌悪感を紛らわせ、俺はゲームを起動する。
──スクリム二日目、最後のスクリムだ。
「さあ今日も張り切っていこー!」
「…よろしくお願いします。」
朗らかな暁野ひなたと控えめなてすり氏、対照的な声がサーバー内に響いている。
「ねえキミ!今日はどんな作戦でいくのかな。」
「ああ、昨日と同じで遠目からいこう」
そうしてまた俺達は僻地に降下し、エリア収縮と連動して動いていたのだが、
「ひいぃ、撃たれてます」
「S方向だ!」
丘の上を見上げると人影が三つ、前線二人に後衛一人、そしてそのうち二人は既にものすごい勢いでこちらへと近づいてきている。こちらの迎撃が緩いと見ての強引な押し込みだ。
そしてそれにエスコートされながらもう一人も近づいてくる。
「昨日と同じ、あいつのチームだ…」
「狙われちゃってるねー」
「どうして私達ばかり…!」
てすり氏の声に応じて、向こう側から声が届く。
俺の神経を逆撫でする、弛んだ声だ。
「ごめんなさ~い。でも~、落ちた果実もちゃんと収穫してあげないと。アンタたち、やるわよ!」
三つの影が目の前に現れ、こちらに銃を向ける。
「柑咲シトラああああああああ!」
そう叫んだ俺の声は届かない。
俺達はまたもや為すすべもなく蹂躙されたのだ。
「…」
「…」
通話は繋がったまま、誰も口を開かない。
敗北の理由なんて、言葉にするまでもない。
怒り、悔しさ、無力感。
頭を掻いてみたところで自分が嫌になるだけだった。
沈黙だけが、じわじわと場を埋めていく、その中で
「暗ーーーーーい!」
唐突に、甲高い声がそれを振り払った。
「無理だとか、出来ないとか思ってるんじゃないの!?ダメダメ諦めちゃ!やれば出来るんだよ!」
暁野ひなたの声だった
「そうは言ってもな」
「うぅ…」
色々と試したが全て同じようにやられているのだ。もう打開策も思いつかない。
[ギスギスしてきたぁ]
[向こうの配信お通夜で笑った]
[自分で誘ったくせにキレてる奴おりゅ?]
横目に視界に入ってくるコメント欄もゴミの様相を呈してきている。
こんなのギスギスじゃねーだろ。と、瞬時に反論する。
「どうしてそこでやめるのそこで!」
傍ら、画面の向こうで叫ぶ声が聞こえる。彼女の必死さは何なのか
エアレスバでコメントに反論した瞬間に、俺の中で答えは出ていたのだ。
──これはギスギスではなく、熱血であると
彼女の背後で、熱い言葉を紡ぐもう一人の人物を、俺は確かに見た。それは俺も知っている太陽のような存在だった。
「頑張れ頑張れ!出来る!絶対できる!頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ!頑張れ頑張れ!そこだ!そこで諦めるな!絶対に頑張れ!積極的にポジティブに頑張れ!頑張れ!」
「彼女だって、頑張ってるんだから!」
熱血おじさん…
呆気に取られている俺を前に、暁野ひなたは続ける。
「負けた?だから何?もう終わり?違うでしょ!」
「……」
「私はね、楽しみたい!」
彼女は迷いなく言い切った。
「勝つとか負けるとか、それも大事だけどさ!楽しいからやるんでしょ!それが私のやり方!それが矜持!」
「二人ともこの大会でやりたいこと、あるんじゃないの?私は言ったよ。」
「ちゃんと、言ってよ!!!!」
先ほどまでの陰鬱な気持ちを吹き飛ばす真っ直ぐな問いかけだった。
和を以て貴しとなすを体現したような勢いに、自然と気持ちが溢れる。
「俺は…勝ちたい。やっぱり負けたままは気に入らねえ」
「うんうん、それはそうだよね!」
そしてもう一人、言葉を絞り出そうとしている人物がいた。
「私は…活躍したい…です」
微かな声が徐々にボルテージを上げていく。
「今までこういう大会に出ても足を引っ張ってばかりで、でも皆で何かするのは好きで。だから私は、活躍したい…です!」
大声を出すのは慣れていないであろう喉から振り絞った精一杯の声だった。
「何もできないくせにって思っちゃいますよね…ごめんなさい」
「別に何を思おうがてすり氏の勝手だと思うぞ!」
「キミの言い方だとすごく無責任に聞こえるよ!でも活躍したいって思うのは私もすごくいいことだと思う!」
[よう言うた!]
[頑張れば出来る!]
[頑張れー!]
[これからこれから!]
向こうの配信では暖かい言葉が飛び交っている。
「俺も同感だ。お陰で目が覚めた。心機一転、一つのチームとして頑張ろうぜ!」
「いやキミにチームは向いてないと思う」
真顔で彼女は言った。
「唐突なマジレス!俺もうっすらそう思ってたけど!てかさっきまでの勢いはどうしたんだよ!」
「いやバランスを取ろうと思って」
「お気遣いどうも!」
「あわわ…私はどうすれば…」
「てすり二等兵は活躍したいって言ってたよね?大丈夫!それをこの人が考えてくれるから!」
「私二等兵なんですか!?」
「そうそう!そしてキミ!キミは隊長だけどそんなのどうでもいいよね。ひなたからキミにお願いがあります。」
「なんだよ」
「勝つ、活躍する、楽しむ、全部を叶える作戦を考えて!隊長としての最後の仕事だよ!」
透き通った声で彼女は言う。
それは無茶ぶりだった。だがなぜだろう、やる気が出てくる。
チームを纏めるだとかまどろっこしいことを抜きにして、それだけを考えればいい開放感。
「分かった。だが時間が欲しい。」
「オッケー。それじゃあ、改めて、張り切っていこー!」
「おう」
「おー!」
俺達がロビーに移動すると、既に他のチームは集まっていた。
そして次の試合が始まった。
打ち合いになると不利なことは承知である為、相変わらずこそこそと俺達は竹林に身を隠していた。
「みんな、竹になろうよ。竹ってさ、台風が来ても、雪が積もってもしなやかじゃない?そう。みんな竹になろう。バンブー」
「う~ん。私は寧ろタケノコになりたいです。私はもっとこのスクリムで伸びないといけませんから、タケノコみたいに。」
「どっちも一緒なんじゃねーのか」
「いやいやプロセスがあるってことだよね!」
そんな会話をしていると、てすり氏が割り込むように俺達に呼びかける
「あっ!あっちを見てください」
てすり氏が指をさした先に見えたのは、大口径ライフルを構えた一行。
「あのスキンは…マタギ野郎か」
「左二、右一。後衛がスコープ構えてる」
「うん、見えてる!」
「当ててきますね…!」
言葉が短く、正確に落ちる。
その瞬間だった。
乾いた破裂音が、空気を裂く。
「え」
間の抜けた声が出る。
遅れて、二発目。三発目。
「わっ」
「っ——」
反応は、できていた。位置も、読めていた。
だが速い。
照準が合う前に、こちらが撃ち抜かれる。
三人同時に、糸が切れたように崩れた。
「いや見えてたのにぃ!」
暁野ひなたが笑った。
悔しさはある。
だが、前とは違う。
何にやられたのかは、はっきりしている。
「今の、完全に撃ち負けですね」
てすり氏が淡々と言う。
「タイミングと精度、両方負けてるな」
「でもさ!」
「見えてたよね!?ちゃんと!」
「ああ」
「はい!」
即答できた。
その日のスクリムの成績も俺達はボロボロだった。
だが俺達に昨日のような悲壮感は無かった。それは単に暁野ひなたのお陰であろう。
ここからは俺の番だ。楽しんで、勝って、活躍する。要は二人を活かして勝てばいい。
そうしたら絶対に楽しい。それだけを考えるんだ。
「さてと」
椅子に深く腰を降ろし、作戦を考える。
スクリムは参加者のほとんどが自視点で配信をしている。まずはデータ収集だ。
スクリム初日、二日目共に優勝したのはGEN氏率いるチームだった。
「GEN氏、FPSもプロ級かよ。バケモンだな」
GEN氏達の立ち回りから何か糸口を掴めないだろうか。俺はアーカイブに噛り付く。
[ゆら姉!ワイらがカバーするから好きにやってええで!]
[ええですよぉ。ウチは荷物持ちで]
[いやいや。好きにやった方がおもろいって、騙された思ってやってみ]
[ほんまぁ?ほしたらそうしますさかい」
そんなやり取りをしながら三人は見事にフォローし合ってこのマッチを優勝して見せた。チャンピオンの画面ではしゃぐ三人の声が聞こえる。
今の試合、正直俺とはカバーの質が比べ物にならない。
ただ試合を見て思ったのだが、このチームに限らず多くのチームは初心者をキャリー枠と経験者でカバーするという構成になっている。
最大多数の最大幸福に基づけば、上級者が少し損な立ち回りをしたとしても、初心者の負担を減らした方がチームとしての幸福量は最大化する。理にかなった構成だと俺は思う。
だが勝利を幸福とした場合はどうだろうか。
俺だったら、初心者は居ない方がマシだと考えるだろうな。
俺はGEN氏ほどのパフォーマンスが出せていないのでそこまでは思わないが、多分そう考えてしまうだろう。
それがおそらくこの構成の罠だと俺は考える。
幸福のベクトルを変える方法…。
画面の前で俺は何度も本番の状況をシミュレートする。
眠た目を擦りながらふと窓を見ると薄明かりが差し込んでいる。
どうやら朝になってしまっていたようだ。
しかし何やらデスクトップが騒がしい。
何のことだと思いアプリを開くと、チームのサーバーからの通知だった。
[こんな時間にごめん!]
[どうしましたか?]
[緊急、チーム名の提出が今日の朝までだって]
[というか今!どうしよう!]
チーム名?そういやそんなんあったな。それなら俺が一晩かけて考えた作戦にちなんだ名前にしてもらおうか。
[俺にアイデアがある]
[何かな?]
[なんでしょうか?]
完全に深夜テンションで文字を打ち込んでいく。
[チーム名は…リトルスナイパーズだ]
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Vtuber総合スレ partXXX
662 名無しさん
お気持ちしてもええか
流石にタッツかわいそうや
668 名無しさん
突然メンバーが辞退、からの代役やからなぁ…運無いで…
671 名無しさん
めちょ頑張ってはいるんやけどな…
672 名無しさん
というかなんで代役がコバンザメやねん。どんだけ人おらんかったんや
674 名無しさん
>>>672 なんだかんだつくもたんが裏におんのがでかいんちゃうか、知らんけど
679 名無しさん
>>>671 今日も一人で空気変えてたからなタッツおらんかったらお通夜やったやろ
688 名無しさん
コバンザメはゲーム上手いのが取柄ちゃうんかあんなん価値ないやろ
697 名無しさん
かわヨ
てすりです@tesuri_
少し遅いですが恵方巻作ってみました
…必勝祈願!
└ 暁野ひなた@akenohinatadesu
おいしそう!ひなたも欲しい!
└ てすりです@tesuri_
おすそわけに行きますね( ˶'ᵕ'˶)/
699 名無しさん
なんで今更恵方巻やねんwwwすりすりしんどwww
700 名無しさん
>>>697 おいしそう
709 名無しさん
>>>697 空気美味くね?




