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大学まで手を繋いで送られてきた、奏。

その相手があの(・・)綾瀬凛だった事に、主に女子が騒めいた。

そして同じく男子も、あの(・・)遠野奏に彼氏ができたと衝撃を受ける。


そんな周りなど気にすることなく、奏は教室へと向かった。

席に着き授業の準備をしていると、先日合コンに誘ってきた小松加奈とその仲間達が目をつり上げ鼻息荒く目の前に立った。

「ちょっと奏!あなたいつの間に、あの!綾瀬凛と付き合ってたの!?大学中大騒ぎよ!」

挨拶もなくいきなり怒鳴られて、奏は不機嫌そうに眉を寄せた。

「いきなり何?私が誰と付き合おうと、あなた達には関係ない事でしょ」

いつもは何でもにこやかに受け流す奏が、感情も露に抗議するように睨みつけた。

初めて見る奏の表情に、加奈達が一歩後ずさる。

その瞳の鋭さは、例えるならまるで鋭利な刃物を突きつけられたかのような感覚。

この状況になり、加奈は初めて気づく。彼女は怒らせてはいけない部類の人間なのではと。


いかにも自分達は親しいという体を装い近寄ってはくるが、奏と加奈は友人と呼べるほど仲が良いわけではない。

どちらかといえば、加奈が奏に纏わり付き友人面しているという感じだ。

奏自身も何も言わない所為か、親友であるかのように振る舞うときもあった。

実際は、奏が一切相手にしていない事を、許されていると勘違いしていただけなのだが。


遠野奏は入学当初から目立っていた。

腰まである長い黒髪。愛らしくも整った容姿。そして何より、あまり人を寄せ付けない独特な雰囲気を持っており、それがまた彼女をより一層魅力的にみせていた。

加奈はそんな奏が気に入らなかった。

加奈も大人びた綺麗な顔立ちをしており、中高生の頃はとにかくモテていた。

だが、大学に入学し周りを見たとき、誰よりも美しく周りの目を惹いていたのが奏だったのだ。

心の中では疎ましく思っていたが、話し掛けても近づいても拒絶されないことをいいことに、奏を利用しようと考えた。


加奈達の行いが、奏以外の女子達の目には醜悪に映っているとも知らず。


奏はあまり相手にしていないので分かっていないようだが、加奈達の存在は周りから『男子に人気がある奏の友人ポジションと言う立場を勝手に作り、言い寄る男を漁っている』と認識されていた。

要は、小松加奈は女子には嫌われていて、奏は加奈にとっての『イイ男ホイホイ』みたいなものなのだ。

凛ほどではないが、奏もあまり周りの人間には興味が無い。それは、自分に備わった『寿命が見える』という能力も少しは関係していたりする。


奏に睨まれ一瞬だけおとなしくなった加奈だったが、凛との関係をしつこく聞いてきたついでのように凛に会わせろと言い出した。

恐らくそれが本来の目的なのだろう。さすがの奏もイラッとくる。

これまでも色々と絡んでくる彼女が、正直鬱陶しすぎて辟易していた。先日の合コンの件もそうだ。

どれだけ断っても引かない。最後は強制的に通話を切り、着信拒否した。

恐らく、その事も気に入らないのだろう。


でも、さして親しくないのにあのしつこいまでの態度とか言動は、拒否して当然よね。と、奏の中ではブラックリストの上位だ。

入学して結構早い時期から絡まれ、勝手に友人面されていた。

ここ最近の彼女の態度や行動は目に余る。放置していた自分も悪いが図に乗りすぎよね・・・と、完全なる縁切りを決意したときだった。


「小松加奈、あんたしつこい」


この大学での唯一の奏の本当の友人、宮崎古都美(みやざきことみ)が加奈を睨みながら、奏の隣の席に立ちわざと音をたてるように乱暴に鞄を机に置いた。


「ことちゃん」

ホッとしたように奏は古都美を見上げた。そんな奏に可愛くウィンクした後で加奈へと向き直る。

奏が唯一自分から関わりを持ってるのが彼女だと知っている加奈は、ぐっと唇を噛む。

「あんたさ、奏が何も言わないのをいい事に、かなりしつこくつき纏っているらしいじゃない」

「何の事かしら」

「しらばっくれないでよね。先日も勝手に合コンのメンバーに加えて、断っても断ってもしつこく誘ったらしいじゃない」

あの合コンは奏を餌にイケメン達に声を掛けまくっていた事は、大学の構内でも有名な話だ。

結局は奏不参加での合コン。男子達からは不評を買ったのは言うまでもない。

「勝手に奏の名前使ってさ、自分の面子保つためにしつこく誘って着信拒否されてさ、バカじゃないの?」

古都美の言葉に、事の成り行きを見ていた生徒達から「え?マジ?」と言う声が漏れた。

「奏を餌に男漁りするのやめなよね」

核心を突かれ、怒りと羞恥で顔が赤く染まる。

しかも、周りから向けられる冷やかな視線に気づき居た堪れなくなり「行くわよ!」と、どこか負け犬臭を漂わせながら仲間と共に教室から出て行った。


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