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第2節:治療から進化へ(ロンドンからジュネーブへ)
AGB PharmaTechは実際に多くの患者を救っていた。癌の痛みに苦しむ患者を支え、神経疾患の治療を行い、重傷者の身体を再生し、失われた身体機能を人工臓器や義肢によって補っていた。その医療実績まで偽物だったわけではない。だからこそ、この組織は単純な悪ではなかった。
問題は、その治療の先にあった。人間を救えるのであれば、人間を変えることも許されるのではないか。人間を変えられるのであれば、社会を変えることもできるのではないか。そして社会を変えられるのであれば、人類そのものをより安定した存在へ作り替えることも、マックにとっては同じ研究の延長にすぎなかった。
ロンドン・グリーンパーク周辺の小さな赤煉瓦研究施設から始まり、無機質なコンクリートの第二研究施設へ移り、外見は煙突の立つ白い工場でありながら内部にはハートの女王の城を思わせる研究空間を備えた第三研究施設を経て、AGBはついに世界規模の企業へ成長した。
その中枢は、やがてスイス・ジュネーブへ移された。しかし、どれほど巨大な企業へ変わっても、AGBの根にあった問いだけは消えなかった。人間を治療することと、人間を作り替えること。その二つの境界を、マック・アダソンは最後まで同じ研究の延長線上に置き続けていた。




