来訪者 壱
伏屋を乗せた車が廃病院付近に止まる。
「ここだ。」
伏屋は少し沈黙していた。
「ここ、人が多い場所じゃないだろ。」
縄渡が周囲の建物を見渡して言う。
「そうだな。それがどうかしたか?」
伏屋はただ、
「止まっている車の数...」
とだけ言った。
縄渡も理解して言った。
「20人にしてはおかしい量だな...」
伏屋は少しため息をついた。
「武装集団でも雇ったか...」
「とりあえず行ってくる。」
縄渡は特に心配せず、
「おう」
と答えた。
伏屋は病院の玄関に立つ。
「おい、待て。」
伏屋は頭に銃を突き付けられていた。
両隣に見張りであろう屈強そうな男が立っている。
「お前何者だ」
「この中に用があるので入らせて欲しいです。」
「質問に答えろ!」
伏屋の髪を掴みにかかろうとするが、腕を払われて腹部に鋭い打撃が入る。
勢い良く転がる。
「動くな!」
もう一人が銃を向けるが伏屋は男の反応速度よりも早く腕を折り、そのままナイフで首をなぞる。
背後で立ち上がる音がした。
「し" ぃ" ね" ぇ" ぇ...」
へこんだ腹から声を出している。
やがて引き金を引く。
(あれ...)
男は困惑していた。
安全装置が外れていなかったのだ。
(確かに俺はぶん殴られる前に安全装置を外して...)
「撃つ前に確認しましょうね。私からのアドバイスです。」
「今更ですけどね。」
伏屋はざっくりと見張りの胴を切り裂いた。
中に入ると静けさが建物を包んでいた。
一階には複数人の武装した人間がいた。
誰も伏屋に反応できず、伏屋が通った後は血だまりになっている。
伏屋は床に滴る血を避け、上の階に続く階段を登った。
(外から光は見えなかった...。建物の中心付近にいるだろうな..。)
途中で誰かが歩いている気配がした。
そこには巡回中であろう人間がいた。
伏屋は音もなく近寄り、そのまま心臓を一突きする。
ドサッと倒れた音がした時、
「どうした?」
という声が聞こえ伏屋は身を隠す。
見張り二人が仲間の死体を目にして固まる。
二人を流れるように刺す。
(逃げ道を確保したいから非常階段に近い所を選ぶだろう...)
階段を登った時だった。
「おい、そこにいるのは誰だ?」
「ここは俺の警備ルートだぞ。」
伏屋は沈黙している。
ごまかしは効かないと感じたのだ。
(バレたな...)
「ぁっ....!!」
伏屋は一瞬で背後に回り、首を締める。
三階には先ほどより多い人数だった。
その全てが今は血の池である。
階段を上がっていくとやがて声が聞こえ始めた。
「撃て!」
登り切った直後、銃声が響く。
伏屋を狙った銃弾だった。
伏屋は咄嗟に姿勢を低くして負傷しなかった。
「どこに行った?!」
暗闇の中、伏屋は身を隠して銃撃をやり過ごす。
突然、伏屋が集団の背後に現れ、両手に握られたナイフが二人同時に首を掻く。
断末魔が聞こえ、暗闇の中は混乱に満ちていた。
伏屋は銃を奪い、そのまま全弾を命中させる。
「おい!何が起きた?!」
そんな声が聞こえた。
その直後、足音が聞こえた。伏屋は銃のカチッという音を耳にして伏せる。
機関銃が周囲に穴を開け、悲鳴や血の吹き出す音が混ざって聞こえた。
伏屋は少し悩んだ後、死体を盾にしてそのまま突っ込む。
銃を持つ手を切り落とし、激痛に悶える。
伏屋はそのまま喉に深くナイフを突き刺した。
全てが終わったように思えた時、生き残っていた集団の一人が銃を構えていた。
伏屋に照準を合わせた直後、ナイフが飛んで来て眉間を割る。
病院に静寂が訪れる。
伏屋は服についた血を見て怪訝そうな顔をした。
「今度こそ完全に終わったな。」
縄渡が伏屋の元へ来て言った。
「なぁ、縄渡。」
「なんだ?」
「なぜこいつら逃げなかった?」
「....。」
「逃げれたタイミングはあったはず、それに応戦も雇った奴らに任せれば...」
「お前の足止め...か?」
伏屋は突然嫌な予感がして血の気が引いた。
伏屋は縄渡を掴んで走り出し、窓から飛び降りる。
その直後、先ほどまでいた部屋は大きな爆発を起こす。
伏屋と縄渡は茂みに落ちて無事だった。
だが、
「この感じ...まだ狙いがありそうだぞ...」
縄渡が伏屋に言った。
「狙いは私じゃない...だが私を足止めした...」
伏屋ははっとして焦る。
「まさかシェアハウスに...!」




