最低限の規則
「はいはーい!質問でーす!」
深海が勢いよく手を挙げている。
「......深海さん、どうぞ。」
伏屋は嫌な予感がしたものの、聞くしかなかった。
「好きな人を家に連れてきてもいい?」
伏屋はほっと息を吐き、気が楽になった。
そして伏屋は少し間を空けて考える。
「...プライベートなことなのでご自由にと言いたいところですけどね...」
深海は不思議そうに首を傾げている。
「この人達がいますからね...」
伏屋が4人を見渡して話を続ける。
「何をするか分からない以上、家の中はあまり見られないほうがよいかと...」
「そっかぁ...」
(まだマシな質問で良かった...)
伏屋は少し安心した。
「伏屋さん。」
熊面が突然口を開いた。
「はい?」
伏屋は不意を突かれたように覇気のない返事をする。
「私も質問がありまして...、伺ってもよろしいですか?」
熊面は物腰が柔らかく礼儀正しさは全員に見習ってもらいたいほどだった。
(これが大人の余裕というものなのか...)
伏屋は感心していた。
「構いませんよ。何ですか?」
伏屋が表情筋を緩ませて返答する。
「自室に殺人トリックを作ってもいいですか?」
「はあぁぁぁぁ......」
伏屋が額を手で覆う。
見るからに伏屋の顔はひきつっていた。
「....やめてください。 誰かが怪我するかもしれないので...。」
伏屋は俯いたまま喋った。
「怪我しないように作るので...」
熊面が食い下がる。
だがお願いが根本的にシェアハウスで頼むことではない。
「駄目です!」
今度は熊面の顔を見て強く否定する。
「チッ....」
(舌打ちしたよな....?)
「と...とにかく、この中の人に危害を加えないでください。 それが一つ目の規則です。」
「そして二つ目の規則は...」
鯖木が伏屋の話に割り込む。
「じゃあ知らねぇやつなら殺し放題なの?」
伏屋が引いた目で鯖木を見る。 「法律に従ってください。 警察でしょあなた。」
「冗談だっつーの。」
鯖木はケラケラ笑っていた。
一柱は神妙な表向きで問いかける。
「殺さなければ人体実験はセーフなのか?」
「殺しますよ!?」
少し怒り気味に答える。
「もちろん冗談だ。」
冗談だと言う割には表情は動いていない。
伏屋は一瞬ハッとし、気持ちを入れかえる。
(危ないな...素を出したら印象が...)
「はぁ...、
じゃあ二つ目の規則は人を殺すな。ですね...。」
「はーい。」
「へいへい。」
伏屋には軽い返事しか帰ってこなかった。
伏屋は諦めて次の規則を告げる。
「これが最も重要です。
絶対に世間で目立つ行動をするな。です。」
「へぇ~。」
「なんでだ?」
あまりピンときていない様子だった。
「あなた方は世間にとって厄介者だと聞いています。」
「私はあまり詮索する気はありません。
...ですが、私の仕事的に守ってもらわないと困ります。」
「それ以外のルールは?」
熊面が尋ねる。
「ありません。それ以上高望みする気はありません。」
「そうなんだ~。」
「へぇ~。」
「まずは人を殺さず目立たず生きることからです。」
一柱は腕を組み少ししょんぼりした顔をする。
「しばらくはマウスで我慢するか......」
伏屋は呆れ顔で天井を見ていた。




