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ジルキン編8 待ち伏せ

 滞在許可の申請に時間がかかるという事で、ギルド内で時間を潰すことにした。

 クエストが貼ってある掲示板を見てみると、魔物退治はあまり人気のない仕事のようだった。そりゃそうだろうと思った。よいやみにボコられてた冒険者もそうだけど、周りの冒険者も僕が見ても弱そうに感じた。強く見積もる僕でもだ。

 一番の問題はギルマスだと思う。細身というのは別にいい(ゴロクさんは細身だったけど強そうだった)けど、あれではギルマスの言っていた荒くれ者とやらを抑える事はできない。あれじゃあ、舐められて当然だ。

 実力もなく偉そうにしているだけの奴等に魔物退治ができるわけがない。このギルドはそこがはっきり出ている。

 一昔前まではアロンにも、こういう奴がいたと聞いた。バトスさんやオルテガさんがギルドを立て直したそうだ。生半可な努力じゃなかったと思う。それに比べてここのギルマスは…

 受付のルイーザさんにギルマスの事をこっそり聞いたが、オルテガさんに嫉妬するそうだ。嫉妬する前に自分で何かをしてギルドに貢献することした方が良いと思うが、あの人にはそれがないそうだ。それを聞いていると、あの人がギルマスになれた理由がよく分からない。


「みつき。何、見てるんすか?あぁ。魔物退治っすね。やっぱり海の魔物が多いっすね」

「僕達が倒す?」

「嫌っす。こんなギルドのために戦いたくないのと、もう船はごめんっす」

 船に乗る以上、よいやみは戦力にならないかもしれないね。じゃあゆーちゃんの重力魔法で一網打尽とか?」

「まかせろ」

「ダメです。港から使ったとしたら、間違いなく漁に出ている船は沈みます」

「ざんねん」

 ゆーちゃんは少しつまらなそうだった。

「それよりいつきさん。どうして滞在許可とかいるの?ソーパーの時はいらなかったのに」

「ソーパーの時は、事情が事情でしたので、乗り込む形になりましたから。次の時は緊急性と隠密性のある依頼でしたので、そういうのを全部無視して国に入っていましたからね」

「面倒臭いね」

「全くです。ギルマスもあそこで脅してこなければ、私達も手荒な真似はしなくて良かったんですが」

 ギルマスが土下座をした後、いつきさんはギルマスを脅しに脅して、迷惑料など取れる分はすべてよこせと言わんばかりにお金を取っていた。いつきさんは「さっさと謝罪なりなんなりしていれば、ここまで拗れる事はなかったはず」と言っていた。本当かどうかは知らない。


「黒女神の皆様。滞在許可証が出来ました。このカードを門番の兵士に見せて頂ければ何の問題もなく町に入れるはずです」

「ありがとうございます」

「それと、ギルマスからお詫びとして、ジルキンまでの馬車を用意してあります。ギルド横の馬車の手配所に馬車を用意してありますので、それに乗って向かってください」

「ルイーザさんには迷惑かけたから、ルイーザさんと職員の人達だけは悪くならないように交渉するっす。ただし、ギルマスは知らんっす」

「は、はい!!馬車には御者がついていらっしゃいますので、ジルキンまでは直通だと思います」

 カードを受け取った後、ギルドの隣の馬車手配所に停まっていた馬車で、ジルキンを目指した。


「んで?すんなりジルキンに入れると思うっすか?」

「多分無理じゃないかな?」

 僕達二人の会話を不思議そうにいつきさんが聞いている。

「あそこまで脅したんですから、本来であれば何もないと思いますが?」

「いや。あるっすね。女王陛下は国民の生活の為に立派にやっているのは知ってるっす。けれど、王国軍や王の周りの人間では出来ることが限られているっす。そこで本来なら間に入ってうまくやるはずのギルドがこの有様っす。歯止め役になれんのであれば役に立たんっす。もしかしたら軍の内部にもあんな腐ったのがいるかもしれないっす。そうなったら国そのものがやばいっす」

「油断はしない方が良いという事ですね?」

「そうっす。あしらの仕事は手紙を渡すだけっす。それが終わったらさっさと帰るっすよ」

「そうですね…」

 二人で難しい話をしているから僕とゆーちゃんはウトウトしながらその話を聞いていた。


 馬車で揺られて2日ほど、ジルキンの町へと着いた。

 大きい門だ。入り口では町に入るための手続きをしているようだ。ここでもきっと何かあるんだろうな。

「止まれ!!その紋、アレンスの冒険者ギルドか!!」

 ほら来た。

 僕達はいつでも飛び出せるように構える。

「降りろ!!」

 あれ?降りろと言われているのに馬車の扉が開くことはない。自分で開けて出て来いってことかな?

 僕が扉を開けようとすると、外で何か争っているような音が聞こえた。

 馬車の外でゴタゴタがあった後、馬車の扉がそっと開いた。

 馬車の外には立派な鎧を着た兵士?が立っていた。

「お待ちしていました。黒姫一行様ですね」

「今は黒女神です」

「失礼しました。黒女神様。こちらへどうぞ」

 僕達が馬車を出ると、数人の兵士と馬車の御者がロープでグルグル巻きにされていた。

「彼らは?」

「あぁ、アレンスのギルドマスターに雇われたクソ野郎ですかね。私達も彼らには困っていたのです。尻尾を出してくれてありがたいですね」

「貴方達は?」

「我々はジルキン王城の騎士団の者です。黒女神様の中によいやみ姫がいらっしゃると聞いていたのですが、まさかよいやみ姫がいるのにも関わらず、このような計画を立てるとは。アレンスのギルマスにも逮捕状が出ています。少なくても明日には連行されるでしょう」

 僕達の前に立派な馬車が用意された。

「お乗りください。目的地まで御送りしましょう」

 僕達は多少の警戒をしつつ馬車に乗り込む。

「ははは、警戒するなというのは無理でしょうが、警戒しないでいただきたい。それで?本日はジルキンまでどのような御用件で?」

「て「ギルドに用事がありまして。アロン王都のギルドマスターは元々他の国のギルドを信用してらっしゃらないようなので」

「はは。手厳しい。だが、ジルキンの港町でいきなりあんな事があったのだから、信用できないのも無理はありません」

 ん?この人アレンスのギルドで何があったか知っているの?僕が騎士の人を見ていると。

「知っていますよ。流石にあのギルドを野放しにするわけにはいきませんから」

「なら、あしらが襲われている時に何故助けなかったっすか?」

「どちらが襲われているか分からなかったからですかね」と笑いながら言っていた。

 確かにあのよいやみの暴れっぷりなら、どちらが襲われているかは分かりにくいよね。

「ただし、逃げてきた冒険者は捕獲しましたけどね。おっとギルドに到着したようですね」

 馬車の扉が開けられると、大きな建物の前に停まっているようだ。これがギルドの本部か…

 僕は大きい建物に圧倒されていた。

「では、もしよろしければ用事が終わった後王城へも足を運んでください」

「え?…あ、はい」

「ではお待ちしております」

 そう言って騎士と馬車は行ってしまった。


 この大きい建物に入るのか緊張するな。

「どう思うっすか?」

「間違いなく厄介ごとに巻き込まれそうですね…」

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