ジルキン編4 海の怪物
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「うぅ…気持ち悪いっす」
よいやみは船に乗って数時間で、気持ち悪いと言って甲板の隅に座っている。
「よいやみ。部屋に帰る?」
「だ、大丈夫っす…」
大丈夫に見えないんだけど、本人が大丈夫と言っているから大丈夫なんだろう。
ゆーちゃんは楽しそうに海を見ている。やっぱり年相応の女の子だね。可愛い。
「そこの船酔いしている姉ちゃん。凄い強いな。もしかして、アロン王国所属の冒険者だったか?」
「うん。アロン王国所属だね」
「そうなのか!?最近アロン王国出身の冒険者が皆強くなっているんだが、何か知らないか?」
強くなっているのはバトスさんの特訓のおかげだよね。勝手に言っていいのかな?でも、僕達二組は、通常クエストを受けれないから収入が増えた方が良いよね。
「うん。アロン王国に英雄バトスさんがいてね、その人が鍛えていたりしているからだよ」
「マジかよ!!バトスさんってパリオットの英雄バトスだろ!!有名人じゃないか!!あんたバトスさんと知り合いかよ!!すっげぇな!!」
おぉ、バトスさん凄い。世界的に有名になっているんだ!!僕達はまだ結成してひと月くらいだから、有名にもなってないだろうけど、やっぱりこうやって実績ある人が有名になった方が良いよね。
「じゃあさ。黒姫ってどんな人か知ってるか?」
ぶふぅっ!!
唐突に僕の話が出てしまったからつい吹いてしまった。
「ど、どうしたんだ?」
「い、いや。く、黒姫のう、噂はきか、ないなぁ?」
「そうなのか?最近では有名だと思ったんだがな。なんでも歴戦の戦士のような大女だとか」
す、すいません。目の前にいるちんちくりんが黒姫なんです。本当にすいません。
「じゃあよ、自分もアロン王国でクエストを出せば、バトスさんに特訓してもらえるのかな?」
「た、多分ね」
バトスさんの仕事が増えるけど、まぁ気にしないでおこう。
僕は軽く考えていたが、今の話を聞かれていたのかは知らないが、バトスさんへの指名依頼が圧倒的に増えて、バトスさんが日に日にやつれていくのはまた別の話だ。
「よいやみ。本当に大丈夫?部屋に戻った方がよくない?」
「あ、うううう。気持ち悪いっす」
「効きませんでしたか?」
いつきさんが心配そうに見ている。いや、違うな。あれは「今回の実験は失敗したなぁ」って顔だ。
「みつきさん。何か失礼なこと考えていないですか?」
おっと、危ない危ない…
よいやみはいつきさんから、もう一本ポーション貰い飲んでいた。効くんだろうか?
ポーションを飲んだ後のよいやみは、少しだけ顔色がよくなった気がする。
「いつき。これあれっすよ。酔った後に飲んだ方が効果が大きいっす」
よいやみ…自分が辛い時にも商売のこと考えるなんて。流石いつきさんの実験体。
よいやみを部屋に連れていくことに決めた僕達は、よいやみに肩を貸して部屋に戻った。
「まだ2、3日かかるからしっかり寝ておいた方が良いよ」
「ありがとうっす。ゆっくり寝させてもらうっす」
よいやみを休ませた僕達は、甲板へと戻ってきた。うん。風が気持ちい。
「さっきの姉ちゃん大丈夫かい?」
「うん。ふなよい?ってやつみたい。僕は良く知らないけど」
よいやみの様子を見ていたら凄くしんどそうだったなぁ。あれは病気の一種なんだろうか?
「船酔いか。俺達みたいになれりゃ大丈夫だけど、最初はきつかったからなぁ。嬢ちゃんは大丈夫なのかい?」
「あ、うん。大丈夫みたい」
「そか。まぁ、気持ち悪くなったら早めに横になるんだぞ!」
「うん、ありがとう」
僕とゆーちゃんが海を見ていると船が激しく揺れ始めた。海も水が大きく波打っている。
「ゆ、ゆーちゃん!・大丈夫!?」
「うん」
僕はゆーちゃんが落ちないように抱きしめる。
激しい揺れ。
なんだ?海が突然盛り上がったぞ!!
「キシャアアアアアアアア!!!」
盛り上がった海からドラゴン族のような魔物の首が出ていた。大きい。
「し、シードラゴンだ!!!!」
船乗りのおっちゃん達の顔が青褪める。冒険者達も青褪める。
「ゆ、優秀な冒険者の皆様!!あの魔物を退治してください!!」
偉そうな格好をした人が叫ぶ。あれは船の責任者だろうか?こんな場合はどうするんだろう?
僕が落ち着いていると、さっき話をした冒険者が「お嬢ちゃん達は逃げるんだ!!」と言って僕達を誘導しようとしていた。
「じ、が、ぐ「ゆづきちゃん待って!!!」」
ゆーちゃんが魔法を唱えようとしているのを、いつきさんが止めた。
「なんでとめる?」
「重力系の魔法じゃ海流にどう影響するか分からない。下手したら魔法を使った瞬間、船が沈むかもしれない。私の空間魔法でも同じ。だから…」
いつきさんが僕の方を見る。僕は静かに頷く。
僕が船の甲板に戻ると冒険者の人達が驚いた後、早く逃げろと怒る。
うん。良い人達だ。この人達が死ぬのも嫌だな。
「アルテミス。行くよ」
僕はアルテミスを召喚した。
数人は僕の剣が聖剣と気付いたらしく「嘘だろ?」「勇者なのか?」「あんなにちっちゃいのにか!?」などと聞こえる。一つだけムカつくの聞こえたけど。
僕は船の手すりに立って剣を振るった。
いくつかの闘気の矢がシードラゴンを襲う。これはアルテミスの技だ。
シードラゴンは体が大きいから逃げられず、闘気の矢を受ける。
ダメージを負ったシードラゴンは尻尾らしきもので船を叩き潰そうとする。
尻尾が弾き飛ばされた!!
誰と思ったらよいやみが蹴り返していた。その光景に冒険者達は呆然と見ていた。
「船が揺れるっす。みつきさっさとやるっす」
よいやみの目が座っている。いつもと目つきが違うぞ?あれは相当頭に来ているな?
僕はアルテミスに闘気を込めると、冒険者達の目線が一気に僕に集まる。
なんで?と思ったが今はそれどころじゃない
僕は剣を振るった。
シードラゴンは僕の斬撃をよけようと首を捻る。あ…もう一発撃たなきゃ。僕は二撃目を撃とう構えるとシードラゴンの首の位置が強制的に元の位置に戻された。これなら当たるな。僕は構えを解いた。
シードラゴンの頭から上は消し飛ぶことになった。ん?そんなに闘気込めてないのに。吹き飛んだ?
まぁ、目の前のシードラゴンは海に沈んでいったみたいだし、良しとしようか。
あとで聞いたが、いつきさんがシードラゴンを空間魔法でいったん入れて、拠点の地下に送ったらしい。
暫くして落ち着いてから、連絡用の魔宝玉でカレンさん達に連絡したと言っていた。生きているものは空間魔法に入れられないから、ちゃんと絶命しているはずだと言っていた。便利な魔法だ。
よいやみは静かになったことを確認してから再び寝に行ったようだ。
僕は、冒険者に注目されながら手すりを降りる。歓声が上がったが恥ずかしかった。
「見事。流石は黒姫といったところでござるな。拙者がドラゴンの頭を戻さなくても、倒せてたでござろうな」
ん?ここいる冒険者は、僕を黒姫だとは知らないはず。なんで?それにやっぱりシードラゴンの頭が僕の技の軌道上に戻ってきたのはこの人か。
「不肖の弟子が世話になったでござるよ」
不肖の弟子?誰のことだろう?それよりもしゃべり方が特徴的だなぁ。
その人は40代くらいの黒髪の少し細身の男性だった。
「ミカル」
弟子の名前だろうか…それともこの人の名前だろうか?いや、最近聞いたな……
………!
「あー!!あの変態かー!!」
「へ、変態!?」
男性は驚く。自分の弟子が変態と呼ばれたからだろうか?
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