ジルキン編1 ギルマスからの依頼
地下特訓場の決闘?から一カ月。僕は魔大陸で魔物を狩っていた。王都にいるとルルさんに睨まれるので、怖くなって避難してきてるのだ。魔大陸の空気は懐かしいし過ごしやすい。冒険者達にも、この話をしたが理解してもらえなかった。冒険者達といえばバトスさんが見込みありと見たなら、鬼の特訓を受けるために魔大陸に派遣させられる。僕と鬼が身内だと知ると、何故か納得された。
僕も驚いたのだが、見習い勇者ちゃんも魔大陸に来ているようだが、いつも泣いているようだ。なんでこの子を魔大陸に連れてきたんだろう?
ゴブリンだと思って戦ったら、殺されかけたという話をよく聞く。魔大陸のゴブリンは他とは違うので、そこのところは注意して欲しい。見習い勇者ちゃんにはぜひとも、頑張ってほしいものだ。
村に帰ってきた僕をカレンが出迎えてくれる。今僕は、ゆーちゃんとカレンの三人で村に滞在している。カレンはアディと比べると、半年ほどとはいえ勇者をやっていた事もあり、解体業の腕に差が出ていることを気にして、単身魔大陸の魔物の解体をして修行をしている。ただ魔大陸の魔物でもピンキリなので、例えばゴブリンやグレートビースト程度なら一人でも解体できるそうだが、僕の持ってくる魔物はアディと一緒じゃないと出来ないそうなので、王都に帰った時に解体してもらっている。
「みつきちゃん、今日は何を狩ってきたの?」
「今日は珍しいよ。竜王ゲガガドンを狩ってきたよ」
僕が狩ってきたものをカレンに話すと、僕の家に寄宿している冒険者たちの顔が険しくなる。冒険者にどうしたのか聞くと、バトスさんから「竜王、獣王、虫王という魔物にだけは手を出すな。あれは俺達でもかなりやばい」と言われていたらしく、それを簡単にしかも単騎で狩ってきた僕が信じられないという事だ。
僕達は正式なクエストを受けられないから、魔物を狩ってお金にするしかないからねと、冒険者に話したら竜王一匹で一生遊んで暮らせますよと言われた。
僕とカレンさんがお昼ご飯を食べていると、母ちゃんが帰ってきた。
「みつきちゃんただいま!!カレンちゃんもただいま。あれ?ゆづきちゃんは?」
「お帰り母ちゃん、ゆーちゃんは魔法具屋さん」「お帰りなさい」
「そう、残念だわ。代わりに二人をぎゅうってさせなさい!!」
そう言って母ちゃんは僕達を抱きしめた後、満足したように部屋を出て行った。
母ちゃん襲撃後、カレンは昼からの仕事があると家を出て行った。僕は暇だったので家でゴロゴロしていると、いつきさんが部屋に入ってきた。
「みつきさん。一週間ぶりです。ってなにをゴロゴロしてるんですか?」
「あーいつきさん。久しぶり。ゆーちゃんは魔法具屋さんに遊びに行っているよ」
「そうですか。ってそうじゃなくて、今日の狩りは終わったんですか?」
「うん。竜王ゲガガドンを倒してきた。道具袋に入っているよ」
「そうですか。みつきさん明日帰りますよ」
「なんで?」
「ギルマスから呼び出し要請がありました」
「うへぇ~。あんまりギルドには行きたくないなぁ」
僕がギルドに行きたくない理由はルルさんだ。あの目には本当に耐えられない。
「大丈夫ですよ。ギルマスがルルさんには別の依頼をあてがって、ギルドからは遠ざけたそうですから」
それなら安心だ。僕はルルさんが苦手だ。
「みつきさんは強くなっても変に憶病と言いますか、自信の無さは相変わらずなんですね」
「いや、だってさ怖いじゃんあの目」
「はぁ。とりあえず、明日の朝には帰りますから用意をしておいてくださいね。カレンさんとゆづきちゃんにも伝えておいてください」
「分かりました」
黒女神も発足して一カ月以上たったけど、やっぱりいつきさんがリーダーのような気がするよ。
僕はカレンに、明日帰る事を伝えるために、解体をしている場所までやってきた。今日の夜でもいいと思たけど、解体の進捗状況もあるから早めの方が良いかなと。
カレンさんは村の外にある柵に囲まれている場所で解体を行っていた。
仲間の皆に雑と言われた僕の解体技術だが、そんな雑な僕でもカレンの解体技術は高いと思うんだけど、冒険者達の人から見ればどうなんだろう?僕は近くにいた冒険者に、カレンの所で解体を頼んでいる理由を聞いてみた。
「カレンちゃんの解体はかなり質が良いよ。王都の解体屋では3日かかることも半日でやってくれる。さらに安いとなれば、カレンちゃんに頼む方が得だろ?しかもカレンちゃんは可愛いしね」
おぉ!!カレンのファンまでついてる。
うーん。カレンの為にはカレンをここに残すのもいいかもしれないな。
カレンは僕に気付いて、こっちへと走ってくる。
「みつきちゃん。解体場に来るなんてどうしたの?」
「さっきいつきさんが来てね、ギルマスから呼び出しがあったんだって。明日の朝帰る事になったけど、カレンはどうする?」
「うーん。悩むところだけどいったん帰る事にするよ。アディにも会いたいし、それにどんな用事でギルマスが呼んでいるかもわからないんだろ?それなら一緒に帰った方が良い」
「じゃあ。キリのいいところで仕事終わらせて、帰ってきてね」
「わかったよ」
僕はカレンと別れた後、ゆーちゃんを迎えに行った。魔法具屋に着くと、おばちゃんが疲れ切った顔をしていた。
「どうしたの?」
「聞いとくれみつきちゃん。アロン王国からいろんな魔術師やら魔導士が教えを請いに来るから、私の本来の業務に支障が出るんだよ」
確かにおばちゃんの所には、魔法職の人達がこぞって来ていると聞いた。数か月前までは静かな村だったけど変わったものだ。
暫くおばちゃん愚痴を聞いた後、ゆーちゃんを連れて家に帰ってくると、よいやみがいた。
「あれ?明日帰るのにこっち来たの?」
「そうっすよ。帰りたくないと駄々っ子が出た場合の保険っす」
僕は子供か!?失礼だなー。
「でもあれっすよね?ルルさんがいたら」
「逃げるよ?」
僕が即答するとよいやみは呆れた顔をしていた。
家に来たのはよいやみだけじゃなくて、いつきさんとアディも来ていた。
二人にどうしてきたのか聞くと「この一週間の報告会をしようと思いましてね」と言っていた。
その日の晩は、遅くまで報告会という名のお喋りをして楽しんだ。
次の日、僕達は王都に帰ってきた。いつきさんの店は今日も繁盛している。薬草の安定生産とポーションの低価格提供で財を成した。別の国からも発注があるなど、いつきさんの笑いは止まらないくらいだった。
「さてギルドに向かいましょうか?」
「うん」
オルテガさんからの呼び出しか。初めてだけど一体なんなんだろう?




