大型新人編4 決闘にもならない。
僕は手紙を読んでプルプル震えていた。なんであったこともない奴に、ここまで馬鹿にされなきゃいけないんだろう?ムカつくムカつくムカつくムカつく。
僕はこの手紙をすぐに破ってやろうと思った。でも大事なことに気付いた。この手紙には決闘場所が書いてない。アホじゃないのか?
「いつきさん。今から行ってボコってきていい?かなりムカついたんだけど?」
ゆーちゃんが椅子を持ってきて、そこに乗ったと思ったら僕の頭をナデナデしてきた。
「ゆーちゃん!!!!!」
僕はゆーちゃんを抱きしめた。この子は僕の癒しだよ。
「みつきさん。私が行ってきます。アホの相手は決闘だけでいいですよ」
そう言って、いつきさんはギルドに戻った。
暫くすると、疲れ切った顔のいつきさんと、同じく疲れ切った顔のバトスさんが帰ってきた。
「あのアホは救いがないです。滅ぼしてもいいですよ」
「あぁ、あいつには少し痛い目を見せる必要がある。決闘はギルドの地下訓練場だ。お前には狭いかもしれないが多少のハンデがあっても楽勝だろう?ただし、殺すんじゃないぞ?」
「え、あ。いや戦っていないから分からないけど僕はそこまで派手な戦い方はしないよ?それに聖剣を使うことないから」
「なんでだ?あいつは仮にも剣聖の弟子で、剣術だけは一流だぞ?」
「いや。僕の剣技は全て、敵を一撃で殺すような技ばかりだし、急所狙いか部位欠損を狙っているから、あの男死んじゃうよ?いいんだったらそうするけど?」
僕が普通にそう言うとバトスさんは少しだけ顔が引くついていた。
「一応殺しはなしの方向で頼むわ。話がややこしくなる」
「了解」
バトスさんは、いつきさんを送ってに来ただけという事で、帰っていった。
いつきさんからギルドで何があったかを聞いたが、あの男には、まず話が通じないそうだ。何度もブラックホールで吸い込んでやろうかと思ったそうだ。
とりあえず決闘は明日の昼間、逃げずに来いとのことだ。
今すぐに引導を渡しに行ってやろうか?久しぶりに本気でムカついた。
次の日。僕は早くに目が覚めた。イライラしすぎて寝れなかったが、ゆーちゃんが一緒に寝てくれた。それだけで僕の元気は最大限に回復する。
よいやみが起きてきた。
「みつきー。調子はどうっすか?」
「いいよ。ゆーちゃんが一緒に寝てくれたからね。まぁ、調子が悪くても負けることはないけどね」
「いつもと違って好戦的になってるっすね」
「そりゃあね。しっかり会って話したわけじゃないけど、ムカつくんだ」
「あの手紙は確かに殺意が沸くっすよね」
「うん」
時間は昼前になり、僕はギルドに向かった。今日は聖剣を使う予定はない。聖剣を使わずボコボコにしてやる。
僕がギルドの地下に降りると、黒髪の男が待っていた。見物人も多い。よいやみ達も、しっかり見物席で見ている。
「黒姫はまだか!!!!早くつれて来い!!!それとも恐れをなして逃げたか!!!」
僕は目の前にいるのに目が見えてないのか?
「ガキ!!!神聖な決闘の場に上がりこむんじゃねぇ!!!!」
見えているんじゃないか。誰がガキだ。
「僕が黒姫だよ。決闘相手の容姿くらいちゃんと調べてこい。バーカ!」
「こんなチビが黒姫な訳がないだろう!!!俺を騙すな!!!」
チビ?今こいつ僕をチビと言ったか?
確かに僕は同世代の子より少し小さいがチビではない。ムカつくムカつく。
「早く本物の黒姫を連れて来い!!!!時間の無駄だ!!!」
僕は少しだけ、殺気を放った。これで反応できなければただの馬鹿だ。
地下訓練場の空気が重くなる。僕の殺気の影響だ。冒険者の中には気分を悪くしたものもいるようだ。
「く!!!!汚いぞ!!!重力魔法で俺の動きを鈍くする作戦か!!!!やはり黒姫は卑怯者だ!!本物はどこだ!!あれだけの噂を持つ女だ!!本物は筋肉で身体がでかくなった大女だろう!!」
想像で人を化け物女にするのはやめてくれるかな。それに重力魔法は一応認識はされているけど、使い手はいないはず。ゆーちゃんは無限の魔力があるから使えるけどね。ただギルドの人間でも知らないはずだからこいつが知っているはずはない。
ふぅ……
「バトスさん。さっさと始めてください。こいつと話をするのはもう嫌です」
「あ、あぁ」
バトスさんは決闘の合図を送る。
「ふざけるな!!目の前のチビとやれってか!!」
まだ言うか。
僕は地を蹴って男に迫る。僕の蹴りを男は避けた。意外だ。
「ふん!!剣聖の弟子である俺が、そんな不意打ちにやられるわけがないだろうが!!俺はミカル!!ガキが軽い気持ちで、神聖な決闘場に上がったことを後悔させてやろう!!!」
ミカルは剣を抜いた。あれが反った剣という奴か。なかなかかっこいいな。あの男はアホだけど。
僕は正直、このアホの相手をもうしたくないと思いだしていた。
怒りはもうない。ムカつくが、このアホの相手は面倒臭くなってきた。
ミカルは地を蹴り僕に斬りかかる。僕はあっさりミカルの剣を摘まんだ。遅いんだよ。
「馬鹿な!!?わが剣を掴んだだと!?」
「あのさぁ。口だけは威勢がいいけど、動きが遅いよ?」
僕はミカルの腹を思いっきり殴る。ミカルは腹を抱えて蹲る。
「さて、立つ?立てなかったら、もう終わらせるね?」
僕は笑顔でミカルの脳天に踵落としをいれた。
ミカルはそのまま気絶した。
「はい。僕の勝ち」
あまりにもあっさり決闘が終わったので、見物人からブーイングが起こっていた。見物人に「じゃあ、次の僕の相手は誰がやる?」と聞いたら黙った。
僕はそのままギルドの地下から出て行こうとしたらバトスさんに止められた。
「なに?」
「一応こいつに謝らせようと思ってるんだが…」
「いらない。話しの通じないアホは相手はしない方が良いと学習した。ただし今度絡んできたら容赦なくその場で殴る。どこでも殴る。たとえ王様の前でも殴る」
僕は精神的に疲れたのでゆーちゃんを連れて拠点に帰った。
帰り道でゆーちゃんに「なんであっさりおわらせたの?」って聞かれたから「関わりたくなくなったからだよ?」と答えておいた。
拠点に帰り、ゆーちゃんとお昼寝をしていたらよいやみが帰ってきたので、あの後どうなったか聞いたら、あの後なぜかルルさんとミカルが決闘したそうだ。結果は相打ち。両者は握手をして和解。その場は収まったらしい。何故かバトスさんが、頭を抱えていたそうだ。
よいやみが見ていたところからは会話の内容がよく聞こえなかったらしいが、ルルさんがマジ切れしてカミルと言い争っていたらしい。ルルさんがキレるとなるとバトスさん関連しかないと思うんだけど。
話を聞いていた冒険者が話すには、痴情のもつれとの事だ。何を言っているか分からない。
よいやみは、ミカルから手紙を預かってきたらしい。手紙を渡してきた時のミカルは、喧嘩を売ってきた時のようなアホな態度ではなかったそうだ。
僕は嫌々手紙を受け取った。今回の手紙も何故かかわいらしい封筒に入っていた。というか決闘直後なのになんでこんな封筒を持っていたんだろう?よいやみに聞いてみるとカミルの持っている道具袋から普通に取り出していたそうだ。手紙はその場で書いたようだが。
僕は嫌々ながら手紙を開いた。
【みつきさん。ありがとう!!直に会ってお礼が言いたいので、明日ギルドにお越しください】
昨日の手紙とは偉く違う。何故かこの手紙を読んだとき、背筋がぞわっとなった。なんでだろう?しかも、謝罪ならわかるけどなんでお礼なんだろう?
次の日僕は嫌だったが、嘘つき呼ばわりとか卑怯者扱いされるのが嫌だったので、ゆーちゃんと一緒にギルドにやってきた。ギルドではミカルが待っていた。今日はバトスさんの代わりに、はる婆ちゃんがミカルの保護者?のように一緒にいた。
はる婆ちゃんに「バトスさんはどうしたの?」と聞くと、高熱でうなされて拠点で寝ているらしい。昨日、何があったんだろう?
ミカルの方を見ると、昨日のアホ面はしていなかった。それどころか爽やかな顔すらしている。なんかムカつくんだけど。
「で?何の用?お礼って何?」
「みつきさん。貴女のおかげで真実の愛に目覚めました」
なに言ってんだ?こいつ。気持ち悪い。はるさんは苦笑いをしている。
「あのあと、バトスさんに優しく起こしてもらって気付いたんです」
何を気付いたんだよ。こっちは子供がいるんだぞ?ま、不味い。ゆーちゃんに聞かせちゃだめだ。僕はゆーちゃんの耳を塞ぐ。
「バトスさんに一生ついて行こうって!!俺を正妻にして貰おうって!!」
本当にこいつは何を言っているんだ?帰っていいかな?
「ほもぉ」
ゆ、ゆーちゃん!?どこでそんな言葉覚えてくるの!?
「この気持ちに気付いたのは、みつきさんの踵落としの結果です!!ありがとうございます!!じゃあ俺はバトスさんの看病をしなきゃいけないので!!」
人のせいにするな!!僕がホモに気付かせたみたいじゃないか!!
言いたいことだけ言って、ミカルは去っていった。
僕はなんとなく嫌な予感がして、はる婆ちゃんにバトスさんが高熱出した理由を聞いてみたところ、ミカルが夜這いに行ったらしく、そこからバトスさんがうなされだしたらしい。
バトスさん。僕は悪くないけど、ごめんなさい。
その日から暫く、ルルさんに睨まれ、バトスさんからは恨みがましい目をされる日々が続いたため、数日はギルドには近付けなかった。
大型新人編これで終わりです。
登場人物によいやみの絵を追加しました。




