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大型新人編1 交渉

 ≪黒女神≫結成を決めた次の日。僕達は王城に、報告と報酬を取りに行くことにした。

 いつきさんに言われるまで忘れていたけど、元はカレン達、異国の勇者を追い出せとのシドさんからの命令だという事を、思い出した。いつきさんは覚えてたみたいだけど。

 僕達はカレンとアディには拠点に残ってもらって、王城に向かった。

 いくら僕達が勇者とはいえ、王様にはすぐに会えるわけじゃないから、受付で謁見希望の手続きをした

。今日の謁見の数が多い場合、今日は会うことは出来ない。

「黒姫様。謁見許可が下りました。今すぐ謁見可能という事です」

 良かった、今日は謁見が少なかったのかな?そう受付に言うと「報告を速く聞きたかったんじゃないですか?」と言われた。受付の人によると、今日の謁見はいつもより多いらしい。


 僕達は案内役の兵士に連れられ、謁見の間に通された。

 この場所は相変わらず緊張する。王座に王様が座っている。すぐ隣には宰相のシドさんが立つ。逆には騎士団長かな?前に見た時より魔力がすごく上がっている。きっとバトスさんと特訓をしたんだろう。バトスさんとは昔からの友達だと聞いている。


「ご苦労だったな。ソーパー王からの通信は昨日のうちにきていて、とても感謝されたぞ。教会の方も巫女を何人か派遣することで落ち着いた」

「はい。ところで陛下。報酬の件で話があるんですが?」

 流石いつきさん。謁見の間だろうが関係なしに請求する。するとシドさんが一歩前に出てきた。

 すごく嫌な予感がする。

「確かに黒姫一行には、異国の勇者を追い返せとは依頼はしましたが、昨日の話では、ソーパー王国の勇者をパーティに組み込んだそうじゃないですか?それは依頼に沿ってないですよねぇ?」

 うわぁ、これはいつきさんがキレる。

「確かに、カレンさんはうちのパーティ黒女神のメンバーです。それでも依頼は依頼です。報酬は貰いますよ」

「黒女神?あぁ、パーティ名を決めたんですか?おめでとうございます。じゃあ、この報酬はお祝いという事で」

 兵士から小さい麻袋を渡されたいつきさん。麻袋の中を見てブチギレる。

「おい。桁が三つ程足りねぇぞ?」

「ははは。聖女ともあろう者が、言葉使いには気をつけねばいけませんよ?」

「あぁ?」

 いつきさんはシドさんを睨みつける。空気が凍るように冷たい。帰りたい。

 王様もシドさんを呆れた目で見ている。

「分かりました。私達は国を出ます。今までお世話になりました」

 いつきさんが、とんでもないことを言い出した。ちょっと待って?出てどうするの?

「魔大陸でのんびり暮らしましょう。こんな国にいるより幸せです」

 た、確かに。僕の希望は引退することだし。

「おや?逃げるのですか?」

「どう思ってもらっても結構です。別に勇者だからと言って、国のための奴隷になる必要もありません。それに、私個人としても信用の出来ない方への商売は控えたいので、城に卸している商品の取引を全て取りやめようと思います」

 いつきさんは個人的に、薬草やポーションなどの回復アイテムや道具袋などを、お城の方に安く卸している。

「ま、まぁ、待ちなさい。この依頼のは「いえ、勇者業は危険と隣り合わせです。それにも拘らずその対応なのならば、私どもはこれ…」わかりました!!私の負けです!!」

「あら?逃げるんですか?」

 いつきさんは満面の笑みで、シドさんに追い打ちをかける。よっぷどムカついたんだろうな。

「はっはっは!!!シド。お前の負けだ。当初から渡す予定だった報酬を、きちんと渡しておけ。いつき済まなかったな。俺達としても、今お前らに国を出ていかれるのも取引を止められるのも困るんだよ」

「今回だけです。次にこんな真似をしたら…」

 いつきさんの怒りはまだ収まらないようだけど、これは喧嘩を売った方が悪いと思う。仕方がない。

「わかってるよ。済まんかった。ほれシド。お前もちゃんと謝れ」

「はい。申し訳ありません。ただ、他国と商売するのなら、この程度で本性を見せてはいけませんよ?世界には私より狡猾で、貴女以上の守銭奴もいるのですから。いつでも冷静でいること。そして鉄壁の仮面を身に付けなければ、こちらが舐められますよ?」

「ぐぬぬ……」

 いつきさんが悔しそうな顔をしている。図星だったんだろうか?


 正式な報酬を受け取った後、パーティ≪黒女神≫としてギルド登録しに行くためにカレンとアディを拠点に迎えに行った。

 二人を連れてギルドに入ると、冒険者たちが一斉に僕達を見る。何があったのかは知らないが、皆疲れ切った顔をしている。僕達がいない間に、問題でもあったかな?

 そんな風に思っていると、一人の冒険者が僕に話しかけてきた。

「黒姫。気をつけろ。お前に喧嘩を売ろうとしている馬鹿が一人入ってきた。俺達が止めておけと言っても聞きやしない。今はいないがあいつが帰ってきたら厄介だ。用事を済ませて早く帰った方が良い」

 このギルドは比較的に教育がしっかりしていると思うのだけれど、それでもダメだったのかな?

 冒険者に聞くにはそういう問題じゃないそうだ。ランクが初期でオリハルコン。冒険者からすれば格上になるという。格下の言うことは聞かない、そういう感じの新人だそうだ。

「それって勇者なの?」

「いや一般の冒険者だ。ここ最近はくじ引きをしなくなったので、勇者は増えてはいない」

 勇者じゃないのにオリハルコン?それは確かにすごいな。でも新人なのに、ランクで偉そうにするのならギルドのランク制度も少し、考えた方が良いんじゃないだろうか。

 僕は忠告してくれた冒険者にお礼を言ってから、勇者専用の受付に行った。

「あ、みつきさん。今日はどうしました?」

 ラビさんが対応してくれる。今日はリリアンんさんじゃないんだ。

「リリアンさんは?」

「あの人は……これは、まだ言っちゃいけないので話しません」

 ん?もしかして!いや、秘密にしてるみたいだから今は僕も黙っておこう。

 リリアンさんが事実上の引退をしたことにより、ラビさんが僕達の専属の担当になったようだ。

 ちなみに、ゲイルさんがギルドのサブマスターに抜擢されたとラビさんは言っていた。


「それで今日はどのようなご用件で?4人揃ってるってことはクエストですか?前にも話したと思いますが黒姫一行はクエストを受けるのを禁止されてますよ?」

「違いますよ。ラビさん、パーティ登録したいのですが?」

 パーティ登録と聞いて、ラビさんはビックリしているようだった。

「そういえばいつも4人でいるので勘違いしていましたが、パーティ登録はしてなかったんですね。少しお待ちくださいね。準備をしますので」

 ラビさんは受付の奥からピンク色に光った魔宝玉を持って帰ってきた。

「さて、登録をしますので、こちらへどうぞ」

 そう言われ僕達はいつもの部屋に通されるのだった。


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