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異国の勇者編13 偽聖女

 カレンとアディの二人とパーティを組むと約束した後、僕達はソーパー王城に向かった。


「カレン。会うのが不安?」

「まぁね。私にとって父親は、育ててくれたのは父さんだと思っているし、王様には良くしてもらった思い出もあるから複雑だよね」

 カレンは複雑そうな顔をしていた。今のカレンの格好は、勇者をしていた時の格好ではなく、女の子らしい軽装の服をしている。腰には剣ではなく解体用の包丁を差していた。アディも背中に包丁を差している。


「カレンさんには、もう一度だけ、勇者カイトに戻ってもらわなければいけません。もしかしたら必要ないかもしれませんけど」

 どういうことかとカレンが聞くと、もっといい方法を思いついたからと、いつきさんは僕の方を見た。

 僕はその意味に気付いた。

「いや、それって、僕はもうこの国に来れなくなるんですが?」

 僕がいつきさんに抗議したことで、よいやみやゆーちゃんも気付いたようだ。


 王の間付近に行くと王太子である、ヨハン殿下が僕達を王の間へと案内してくれた。

「いやぁ、まさか勇者カイトが僕の妹とはねぇ。びっくりしたよ」

 ヨハン殿下は笑って言っていたが、カレンは緊張した感じだった。

 そりゃそうだろう。少し前までは天上の人が今では兄という事なんだから、カレンも焦るよね。

 ヨハン殿下はカレンに「お兄ちゃんって呼んでいいんだよ?」と言っていたがカレンは「いや、流石にそれは」と返していた。ヨハン殿下は少しだけ残念そうだった。

「おにーちゃん」

 何故かゆーちゃんがおにいちゃん言い出した。それを聞いたヨハン殿下は「よし、この子も妹にしよう」と満面の笑みを浮かべていた。だけどゆーちゃんは渡さないぞ。

 ヨハン殿下に、何故お兄ちゃんと呼ばれたいのか聞いたら「だって、僕の妹はあれだよ?」と遠い目をして言われた。よいやみが頷いていた。


 王の間に入った僕達は、王から盗賊のアジト討伐のお礼を言われた。

「教会の事を聞きたいのだな。宰相。資料を彼女に」

 宰相と呼ばれた人が、いつきさんに資料を手渡した。あとから聞いたのだが、この人は魔法使いオーソンの父親だそうだ。息子の不始末の時に辞任しようとしたそうだが、王様に止められたらしい。

 息子と違って国には必要な人なんだろう。


「カレン。そういう格好をしてると、死んだあいつによく似ている。カレン、今まで済まなかった。言い訳をさせてもらうなら、お前を下らない政争に利用されたくなかった。恨んでもらっても構わない」

 王様はカレンに頭を下げる。王様の行動にカレンは焦って「頭を上げてください!!」と言っていた。

「私は、勇者に選ばれたことで様々な経験をさせてもらったし、これからもいい経験をできそうな場所も得ました。感謝こそすれど恨みは持っていません」

「いい経験をできそうな場所?」

「はい。私とアディはこの騒動が終わった後、黒姫さんの所でお世話になるつもりです」

 王様は僕の方を見て「いいのか?」と聞いてきた。

「はい。僕達としても、欲しかった人材が手にはいることになるので嬉しい限りです」

 僕の言葉に王様は心から安堵したようだった。王様は、カレンの将来を不安に思っていたのだろう。


 教会の資料を手に入れた僕達は、城の離れで幽閉されているローレルの部屋へと向かった。

 ローレルは少しだけやつれていたが、その性格は健在だった。

「おい、ビッチ。会いに来てやったっすよ?」

「帰れ。脳筋」

 よいやみとローレルは激しく罵りあっていたが、いつきさんに止められた。

「ローレル姫、初めまして。本物の聖女のいつきと言います」

 いつきさんの自己紹介に驚いていた顔をしていたローレルだが、カレンの顔をみて、納得したような顔つきになった。

「カイト。聞いたわよ。貴女妹だったそうね。まさか、教会が用意した勇者が妹とか、笑っちゃうわね」

 僕はローレルに疑問に思っていた事を聞いてみた。

「ねぇ、男癖が悪いと聞いていたけど、なんでカレンには手を出さなかったの?」

「貴女。かわいい顔してズケズケ言うわね。そうね。カイトが女ってことは知っていたし、同性に手を出す趣味はなかったからね」

 ローレルの言葉に、カレンは凄くびっくりしていた。

「なんすか?ビッチにはビッチのプライドでもあったんすか?」

「うるさいわね!!脳筋女!!」

 よいやみとローレルが再び睨み合いだした。

「話が進まないので、ローレルさん、いくつか聞いてもいいですか?」

「なに?」

「どうしてあなたが聖女に選ばれたんですか?言っては悪いですけど、貴女は国民からの評判も悪いようですし、貴女を聖女にしてもメリットが全くないと思うんですが?」

「うーん。そこまではっきり言われると気持ちが良いものねぇ」

「ビッチの上に変態属性までついたっすか?」

「うるさいわね!!ワタクシも詳しくは聞いてないけど、大司教の思惑では教会が選んだ勇者が、素行の悪い聖女を改心させたと美談にしたかったんじゃないの?それとワタクシを選んだ理由は、わたくしと寝たかったんじゃないかしら?相手をしてやったらすごく興奮していたし」

「大司教の評判はどうなんですか?私としてはあまり苦労をせずに神罰を与えたいんですが」

「神罰!?そ、それはわたくしにも下るの?」

 ローレルは顔が青褪めていた。彼女からしたら不安にもなるだろう。彼女はセリティア様の聖女を、詐称していたのだから。

「大丈夫ですよ。でも、聖女を名乗るのはやめた方が良いですよ?聖女は何かと面倒臭いですから。例え不慮の事故で死んだとしても、死後は死界で生まれ変わりを待つんじゃなく、永遠にセリティア様の世話をしなければいけませんし」

 知らなった。いつきさんはそんな事情を抱えていたんだ。

「大司教はどうなるの?」

「あれには、セリティア様が神罰を下すと思いますよ。なんといっても、巫女を手籠めにした…「してないわよ?」え?」

「だから、アロン王国から来た巫女に関しては、わたくしの権限で国外の教会に移動させたからね」

「何故?」

「なぜって?本物の巫女に入られちゃ、わたくしの聖女としての価値が下がるじゃないの」

「大司教が悪人なら、手籠めにした後殺すことも可能だったでしょう?」

「はっ!!あの大司教にそこまでのことは出来ないわよ。汚いことはほとんどママにやってもらってたんだから」

 え?それって……

「シスタークリスだっけ?アロン王国の教会のトップよ。あのおばさん、この国の教会によく来ていたわよ」

 いつきさんは無言で笑っている。たまにブツブツ独り言を言っている。怖い。


 ローレルの部屋を出た僕達は、その足で教会に向かうことにした。

「みつきさん。アルテミスさんに入れ替わってください」

「ん?どうして?」

「セリティア様の巫女に何もなかったのは嬉しい限りですが、このままでは神罰は与えられません。私は大変面白くないので、みつきさんの力を借りて神罰を捏造しようと」

「「「「え?」」」」

 ゆーちゃん以外の全員の声が重なった。

「セリティア様は基本ぐうたらなんで、身内に何かないと動きもしないから、アルテミスさんに神罰を行ってもらおうかと」

「いや、それはどうだろうか…」

 カレンとアディは何のことかと首を傾げる。

「ともかく聖剣アルテミスは召喚しておいてくださいね」

「あ…はい」


 僕が聖剣を召喚した後、僕達は教会へと乗り込んだ。


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