異国の勇者編12 解体の腕
「女神セリティアを呼び出すっすか?」
「セリティア様ですよ?よいやみさん」
えりかさんに睨まれて、縮こまっているよいやみ。
でも、これは仕方がないと思う。だって、信仰心のないものからすれば、女神は所詮いないものと考えるだろうからだ。よいやみがどう考えてるかは、知らないけど。
「えりか。ソーパー王国に就任した巫女を、割り出しておいてくれますか?」
「分かりました」
えりかさんは、物音ひとつ立てずに部屋を出て行った。
エリカさんが出て行ったあと、よいやみが「えりかさんって実は強いんじゃないっすか?下手したら、あしらレベルの強さかもしれないっす」と言って震えていた。
いつきさんにえりかさんの事を聞いたら、微笑んでいるだけで何も言わなかった。
「さて、今からセリティア様を召喚します。粗相のないようにお願いしますね」
いつきさんは、祈るように膝をついた。
「セリティア様。暇でしたら、私の前に出てきてください。お金のこと以外で相談したいことがあります」
あれ?今、暇とかそういうのが聞こえた気が?
「今のが召喚っすか?」
『みつき、聖剣を召喚しておきなさい』
アルテミスが急に召喚を求めてきた。
「なんで?」
『もしものときの為にですよ』
僕は言われた通り、こっそりアルテミスを召喚した。
いつきさんがよく分からない、お祈りをした直後部屋の中心が激しく光った。
光の中から見るからに、そこら辺にいるような子供が現れた。
服装も、シャツに短パンという部屋着のような格好で金色の髪の毛をツインテールにしたツリ目の女の子が立っていた。ただ普通の女の子と違うのは神眼である銀の目。そして2対4枚の羽を背負っていた事だ。
「いつきー。何か用?」
「久しぶりですね。セリティア様」
え?この子供がセリティア?確かに神眼と羽はついてるけども、格好がただの子供だよ?
「セリティア様。またそんな恰好をして」
いつきさんがセリティア様の服装を見て怒る。
「だって仕方ないじゃん!!さっきまで寝てたんだしさぁ」
「もうお昼過ぎですよ!!」
「いや、神界には昼夜の概念無いんだけど…」
女神であるセリティア様でも、いつきさんの説教は苦手らしい。
「さて、いつき。何の用で呼び出したの?」
「ソーパー王国とシスタークリスの関係を教えて欲しいんですが」
「そうだねぇ。直接関係あるのは教会の方じゃなくて、大司教と呼ばれている詐欺師とあの婆さんが、親子ってことくらいかな?たいした問題じゃないでしょ?」
たいした問題どころか、衝撃の事実だよ?
「そこまで知っていて、あの教会を放置していたんですか?」
「そうは言うけどね。私達は、あまり世界に干渉するわけにいかないの。本当は神罰を与えたかったよ?」
いつきさんは少し考えてから、セリティア様の肩をガシッと掴んで。ちょっと怖い笑顔で「巫女が数人、大司教の手にかかっている可能性があります」というとセリティア様の顔つきが変わった。
「へぇ、あのババア。巫女を守ってくれているからと、今まで見逃してやってたけど、私の巫女を自分の糞みたいな息子に差し出していたのか。許せないなぁ」
セリティア様の周りの空気が一気に重くなる。これが神の魔力か。
でも…………よいやみ気付いてるかなぁ?
僕はよいやみの方を見ると、よいやみも違和感に気付いたようだ。
「あのババアには私から神罰を与えておくよ。もしあれだったら、いつきの望む神罰にするよ?」
「どんなのでも構いませんよ。ただし、周りに迷惑だけはかけないようにお願いします」
「分かった。大司教の方はどうするの?」
「あちらは、まだやることがあります。それより、もセリティア様はなぜあの国を嫌っていたんですか?」
いつきさんの質問に、セリティア様は少し考えて「信仰もしてくれない国には興味がないかな?」と笑いながら言っていた。
その後セリティア様を送還させた後、えりかさんから、この国からソーパー王国に派遣された巫女の数を教えてもらって、ソーパー王国へと移動してきた。
「カレンさん。ソーパー王国には冒険者ギルドはないんですか?」
「あるよ。案内しようか?」
僕達は、カレンの案内で冒険者ギルドにやってきた。
ギルドを見た僕の感想は、寂れているなと思った。なんというか活気がない。
「寂しいだろ?この国では冒険者の地位は低いんだ。国王は少しでも、冒険者の地位を向上をさせる様に、努力をしている様だけど、教会が邪魔をしてるみたいだね」
ここでも、教会が邪魔するのか。救いようがないな。
「とりあえず入りましょう」
中に入った僕達はさらに絶句した。
中に冒険者もいず閑散としていた。カウンターに酔っ払ったおっさんが一人いただけだった。
「ギルマス。カイトです」
「あぁ?うん?か、カイト!!!!帰ってきていたのか!!?」
この酔っぱらいはどうやら、ギルドマスターのようだ。
「お前、今まで何をやってたんだ!!心配したんだぞ!!」
酔っ払いがカレンに抱きつこうとしてきたので、とりあえず蹴り飛ばしておいた。
「せくはらだめ」
ゆーちゃん、いい事言ったなぁ。
「いてて、何しやがる。お前らアレか!!カイトの女か!?」
今のを聞いて、よいやみが闘気を解放した。
ギルドの建物がギシギシと軋む。よいやみの闘気に当てられているんだ。
「おっさん。口の利き方に気を付けるっす。あしは、みつきの女っす」
いや、お前も何を言ってんだ?
「ゆーちゃんもみーちゃんのー」
うん。それは嬉しい。
「な、なんて魔力を放出しやがる!?この女は一体!?」
よいやみは、睨みながら酔っ払いに近づく。
「ま、待て!!カイトの女と言ったのは謝る!!!!」
「冗談っすよ。それとカイトはもういないっす。そこにいるのはカレンっすよ」
「へ?カレン?何言ってんだカイトだろ?」
カレンは少し困ったように頬を掻く。
「それよりだ!!聖女が更迭されたと聞いたぞ!!お前は無事だったのか!?」
「うん。私は、アロン王国に匿われています」
「アロン王国?私?お前何言ってんだ?」
「ギルマス。私は勇者カイトじゃありません。本当の名前はカレン。性別は女です」
酔っ払いは電撃を受けたように、背筋をピンっとして、カレンをまじまじ見た。
「いや、胸がないじゃないか。あれか?心は女ってか?」
この酔っぱらいは、またセクハラ発言をしている。救いようがないな。
「脱いでみ、ぐほぉ!!!!!!!!」
よいやみに思いっきり蹴られた。アホだ。このおっさん本物のアホだ。
酔いを醒ましてもらうため、ゆーちゃんの水の魔力球をおっさんの顔に連射した。
暫くするとおっさんは目を覚ましたので、カレンの事を説明した。
「なるほど。要するにお前は元男で今は女ってことだな?」
「お前はアホっすか!?言葉が通じないんすか!?もう一発殴られとくっすか!?」
よいやみが拳を握るとギルマスは焦って「そんなこと言っても、俺が知ってるのは男の姿のカイトなんだよ!?」と半泣きで言っていた。
カレンには、別室でサラシを取ってきてもらった。うん。僕より胸があるね。ネタマシイ…………
おっさんは、カレンを見て絶句していた。
「アディは最近どうしていますか?ギルドに来ていますか?」
「あぁ、来ているが、最近は大司教によく声をかけられるらしい。あの男には嫌な噂があるから、あまり近付かないように言ってあるが」
カレンは今のを聞いてアディのもとへ行こうとする。
その時、ギルドの扉が勢いよく開いた。
「カイト!!帰ってきたか!!!」
扉を開いたのは、緑色の髪の毛の短髪の女の子。元気そうな子だ。
「アディ!!」
「カイト!!ちょ!?胸!!?」
「あ、あぁ。これには事情があって」
カレンはアディに今まであったことを説明した。
「じゃあこれからは、カレンって呼んでいいんだね?」
「うん」
再会を喜ぶ二人にいつきさんが近づく。
「お二人さん?再開を喜ぶのはいいですが、アディさん。貴女に話があります」
「え?俺に?」
カレンはボクっていうのを恥ずかしそうにしてたけど、アディは自分の事を俺って呼ぶんだね。
「はい。貴女は魔物の解体ができると聞いたんですが?」
「あぁ、出来るよ。そこまで上手いわけじゃないけどね」
「ギルマス。大きい部屋はありますか?」
「何故だ?」
「解体の腕を見たいので」
「あぁ、こっちだ」
僕達はギルマスに連れられ、地下の訓練場に案内された。
殺風景だけど、結構広い部屋だ。この大きさならグレートビーストを出せるかな?
「みつきさん。ありますか?グレートビースト」
「あるよ」
僕は道具袋からグレートビーストの死体を取り出す。
いつきさんが作った道具袋は特別性なので、空間内の時間を凍結してある。だから腐ることはない。
僕達4人以外の人間がグレートビーストに驚いている。見たことなかったのかな?
「アディさん。これを解体できますか?」
アディさんは少し考えたあと、グレートビーストの周りを歩く。
「カレン。久しぶりに手伝ってくれるかい?」
「あ、うん」
そう言って、二人は解体用の大きな包丁を取り出した。カレンも持っているんだ。
「いくよカレン!!」「オッケー!!」
そう叫んで、グレートビーストに斬りかかった。
一言でいえば凄かった。文句のつけようがない。よいやみは驚いて変な顔になっている。いつきさんは満面の笑顔だ。
「アディさん、そしてカレンさん。この騒動が終わったら、私達の専属の解体屋になっていただけませんか?報酬と今後の身の安全は保障します」
いつきさんは二人を黒姫一行に引き入れるとつもりだそうだ。もちろん僕も賛成だ。
もちろんゆーちゃんとよいやみも賛成していた。
二人は、少し考えた後、この話を了承してくれた。




