異国の勇者編11 教会のこれから
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ギルドの中に入ると、冒険者たちが一斉に僕達、というよりいつきさんを見た。
「なんですか?」
いつきさんが冒険者たちを見回すと、冒険者たちは目を逸らす。
冒険者たちからすれば、いつきさんは店にいる時も、聖女としている時もニコニコしていた。そのいつきさんが、今はほとんど無表情。そりゃ、冒険者も何事かとみるよね。
「いつきちゃん!!どうしたの?」
「リリアンさん。至急、陛下はソーパー王国から、戻ってきていますか?」
「え?えぇ、昨日に戻ってきたわよ。何故?」
「シスタークリスに神罰が下ります。これから数日はあのババアの近辺に人が寄り付かないようにして欲しいと伝えてください。大至急で」
「わかったわ。でもね」
そう言って、リリアンさんはいつきさんを優しく抱きしめた。
「何があったかは、知らないけどそんなにピリピリしちゃだめよ。貴女は黒姫一行のリーダー。貴女までピリピリしていると他の三人の暴走は誰にも止められないわよ?」
リリアンさんに抱きしめられ、落ち着いたのか、いつきさんから発せられていた妙な空気感が消えて、僕達を見回した。あれ?僕がリーダーだった気がする?
「みつき…」
よいやみがなぜか、僕を哀れんだ目で見ている。
「すいません。ちょっと頭にきすぎて、自分を抑えられませんでした」
「それはいいっすけど、結局ギルドには何しに来たっすか?」
「はい。カレンさんを連れて行こうかと思いまして」
「カレンをっすか?」
「はい。カレンさんは何だかんだと言って、ソーパー王国では勇者なんですよ。教会を潰すことは確定事項なんですが、潰した後、王様の言葉では弱いと思うんですよね。そこで、カレンさんに私達と行動を共にしてもらって」
「ちょっと待ってくれる?教会を潰すって何?」
リリアンさんに、盗賊のアジトで見つけた資料と、偽聖女について説明する。
「うーん。大司教ね。たしかにこの世界には、いろいろな神を信仰する教会があるけど、セリティア様を信仰しているのであれば、大神官はいないはずよね?」
「はい。リリアンさんも元は巫女でしたよね」
「そうね」
え?リリアンさんって巫女だったんだ!!だった?もしかして!!!?
「みつきちゃん、顔が真っ赤よ?」
「リリアンさん。相手は誰っすか!?陛下じゃないんすか!?」
「ふぅ。みつきさんによいやみさん。巫女は別に処女じゃないとダメとかないですからね?教会には、子持ちの巫女さんもちゃんといますよ。」
「で、でも、リュウトの時の原因になった巫女さんは、汚されたから巫女じゃなくなったって」
「あれは、あの子が思い詰めていただけなんですよ。というより、巫女じゃなくなったこともそうですけど、汚された方のショックが強かったんですよ」
「じゃあ、リリアンさんは……」
「えっと、みつきちゃんたちは何を失礼なことを言っているのかな?」
とりあえず、リリアンさんに怒られた。
「ともかくカレンさんには私達に付いてきてもらって、最後に勇者として教会が解放されたと宣言してほしいんです」
「わかったわ。カレンちゃんなら、よしおさんと一緒に新人の訓練をしているはずだからもうすぐ帰ってくると思うわ」
暫く待っていると、ギルドの扉が勢いよく開いた。
「ん?みつき達じゃないか!!」
ギルドに汗だくで入ってきたのはよしおさんとカレンだった。
「みつき、カレンを紹介してくれてありがとうな!!こいつ、見た目はナヨナヨしてるけど、かなり強いな。もしかしたら、ミスリル?いや、オリハルコンかもしれないぞ」
見た目がナヨナヨ?もしかしてよしおさん、カレンが女の子だってまだ知らないの?
カレンは黙って、よしおさんの横についている。ちょっと顔が赤いのは気のせいだろうか?
「カレンさん、ちょうどよかった。カレンさんに話があったんです」
「え?私に?」
「ほら!!男なんだったら私じゃなくて俺と言えって!!」
「あ、いや、その……」
カレンさんは顔が真っ赤になっている。
よいやみがニヤニヤしている。でも、よしおさんって既婚者……
「他人の不幸は蜜の味っすよ」
よいやみが最低なことを言っている。いや、ダメでしょ?
「いけないかんけい」
ゆ、ゆーちゃん!?どこでそんな言葉覚えてきたの!!?
「よしおさん。ダメですよ?浮気は」
「あん?」
「カレンは女の子だよ?」
「はぁ?」
よしおさんはカレンの方を見る。カレンは俯いている。
「い、いや。ちょっと待てよ。俺は男だと思って、体を結構触ってたぞ?」
「へんたい」
ゆーちゃんの容赦ない言葉に、よしおさんは膝から崩れる。
「そんなことより、カレンさん。協力してほしいんだけど」
「私に?よしおさんから聞いたけど、黒姫さん達は、私よりもはるかに強いから、私じゃ役に立たないんじゃないかい?」
「みつきでいいよ。いつきさんから詳しく聞いてくれたらいいけど、戦闘はしない予定だから」
「はい。戦闘はしません。あえて言うなら、教会が滅ぶのを笑いながら見るだけですよ?」
いつきさんの言葉に、カレンは顔を青褪めさせる。
「私の聞き間違いかい?教会が滅ぶと聞こえたんだけど」
「聞き間違いじゃないっすよ?ソーパー王国の教会はいったん滅ぶっす。そのあとはちゃんと女神様を信仰する教会になるっす」
いつきさんは、カレンに盗賊に襲われていた村の詳細や、教会が関わった可能性のある証拠を見せた。
「確かに、大司教が就任してから、行方不明になり女性が増えたと聞いたな。私も、アディには気を付けるように言っていたんだ」
「アディって?」
「私の幼馴染かな。とても仲良くしていたんだ」
僕は一つの可能性に気付いた。アディって人は実は男だと。
カレンは女の子だからちょうどいい。
「何がちょうどいいんだい?」
「なぜ、僕の心が読めるんだ!?」
「声に出ているからね。アディは女の子だよ。少し変だけど」
「変?」
「うん。アディは魔物の解体が得意でね。私の倒した魔物を解体してもらってたんだ」
カレンの言葉に僕は即座に反応した。反応したのは僕だけじゃなく、よいやみといつきさんも反応していた。
「それはいい事を聞きましたねぇ」
いつきさんの顔が悪く笑っていた。
「そんな事より、まずは教会を潰すことに専念しましょう」
僕達はカレンさんを連れて、ソーパー王国に行く前に教会によることにした。
よしおさんは、僕達がギルドを出ていくまで呆然としていた。
「私も遠巻きにこの教会を見ていたけど、うちの国の教会とは大きさの桁が違うなぁ」
「この教会は、セリティア様がこの世界で一番、降臨なさる教会ですしね」
えりかさんが教会から出てきた。
「あれ?いつき様と黒姫さん。教会に何か御用で?」
「えりか。貴女に話があるんですけど」
「あ、はい。いつき様の話ならいつでも聞きますよ」
「そう、えりか。私達は今からソーパー王国の教会を潰します。潰した後の教会を貴女に仕切ってほしいんです」
えりかさんは、少し考えていた。それはそうだろう。いきなり一つの組織を仕切れと言われても困るはずだ。
「分かりました。いつき様と離れるのは残念ですが、その神命は受けましょう」
「ありがとう。それと、セリティア様の降臨を祈ります」
「!!」
降臨を祈るって何だろう?
僕が疑問に思って、首を傾げているとエリカさんが教えてくれた。
「黒姫さん。降臨を祈るとは、セリティア様を呼び出すという事です」




