異国の勇者編10 証拠
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よいやみが蹴り破った扉の先には、血まみれた盗賊の親分みたいな奴が、裸の女の人を椅子にしていた。その周りには何人もの女の人の死体。こいつが親玉か。
「あんたが盗賊の親玉?ゲスのような顔をしているね」
「ぎゃはは。女の方から来るとはな。たっぷり楽しんでやろう」
親玉は立ち上がると、椅子にしていた女の人の首を絞めて殺した。
「こいつ!!」
僕とよいやみの殺気で部屋全体の空気が重くなる。
親玉は、自分の立場が少しだけ理解ができたようだ。自分はこのままでは殺される。そう感じたようだ。
でも、残念。殺しはしないよ。ただ、徹底的に痛めつけるけど。
「お、お前ら。なにもんだ!?普通のやつらじゃねえな!!」
「勇者黒姫」
「ゆ、勇者は俺達の仲間だろ!?あの司祭のやつが言っていたぞ!!」
僕は親玉が逃げないように、足を斬り飛ばす。
親玉は、足が無くなったので、地面を転がる。
「ぎゃあ!!痛い!!なんでだ!!俺達の行動は教会が後ろ盾になっているはずだ!!」
「いつきさん、拘束魔法でこいつも拘束しよう。こいつをソーパー王の所に持っていく」
「そうですね。この部屋にもしかしたら、教会とのつながりの証拠があるかもしれません」
「ひーる」
ゆーちゃんのひーるで親玉が血を吐く。目がボーっとして虚ろになる。
「ひみつはどこ?」
親玉は、震える手で奥にある宝箱を指す。
「おまえがあけろ」
ゆーちゃんがそう命令すると、親玉は這いずりながら、宝箱に向かう。
親玉が宝箱を開けると、小規模な爆発が起こる。どうやら宝箱に罠がかかっていたようだ。
いつきさんが宝箱の中から、何枚かの手紙と小さい麻袋を持ってきた。
「手紙に何が書いてあるの?」
「どうやら、大司教が村を指定して、襲わせていた様ですね」
「大司教が?何のために?」
「さぁ?それにこの麻袋。教会の至宝と呼ばれている宝石ですね。これが報酬かなんかでしょう」
いつきさんがそう言って、一つの宝石をじっと見ている。
「もしかしたら、村の人が何か知っているかもしれんっすね」
「私一人で一度ソーパー城に戻ります。私が戻ってくる間に、生存者がいるか見ておいてくれますか?」
「うん。わかったよ」
いつきさんが転移魔法で移動した後、生存者を探したが、生存者は誰一人見つからなかった。
「くやしいっすね。それと同時に教会が許せないっす」
「うん」
僕は生体感知で、何度も調べてみたがやっぱり生きている村人はいなかった。何人か、盗賊の残党は見つけたけど。盗賊の残党は、親玉の惨状を見て素直に捕まることを選択した。
暫くすると、いつきさんが二十人ほどの兵士を連れて帰ってきた。
「いつきさん?」
「盗賊共は、兵士の皆さんに任せましょう。まずは村へ帰って、大司教の事を聞かないと」
僕達は、転移魔法でさっきの村に帰る。
村に帰った僕達は、村長に会うことにした。
村長は怪我をしていたが、薬草とポーションで何とか元気になった。
「聞きたいこととは、何でしょう?」
「大司教の事を知っていますか?」
「はい。初めて盗賊の襲撃があった時に撃退してくれたのが、大司教様なのです」
撃退した?何のために?
「大司教は何の為にこの村に?」
「さぁ?大司教様は視察と言っていました。その時巫女に選ばれた娘がいたのですが、婚約していると拒否しました。あの時拒否していなかったら死ぬこともなかったのに。ううっ」
お爺さんは泣き出してしまった。
「つらい出来事を思い出させて申し訳ありません」
僕達は、いつきさんに連れられ村の外にまで来た。
クレイザーが付いてきていたので、クレイザーに引き続きこの村の警護をお願いした。
「僕でよかったら、それよりもこの村を襲った盗賊はもしかして…」
クレイザーはいつきさんと村長の話を聞いてピンときたようだ。
「大司教様も殺していたのか!?」
きていなかったようだ。やっぱりクレイザーはクレイザーだった。
「違うっすよ。大司教もグルという証拠を見つけたんすよ。恐らくっすけど、巫女に選んだ娘を手に入れようとでも、思ったんじゃないっすか?」
「そんな馬鹿な!?女を手に入れる為に、村を襲う?最低じゃないか!!」
「あくまで、あしの推論っすよ」
よいやみの推論は正しいと思う。いつきさんが何も言わないことを思うと、そうなのだろう。
いつきさんは何も言わずに転移魔法を発動させた。
「いつきさん?」
「王都の教会に向かいます」
転移されてきたのは、大きな教会。アロン王国に住み始めて知ったのだが、この教会は世界の中でも屈指の大きさだそうだ。
「こちらです」
いつきさんに連れられて教会内を歩く。
すれ違う人達がいつきさんに頭を下げる。その光景を見ていると、いつきさんが本物の聖女なんだなと、今更ながら思う。
「いつき、どこに向かってるんすか?」
「地下の牢獄ですよ。教会の地下の牢獄と、王城の牢獄はつながっていますので」
地下の牢獄がつながっているのか。脱獄とかの心配はないんだろうか?心配になっていつきさんに聞いてみると。
「その点は大丈夫ですよ。教会の僧兵は、ミスリル級以上ですし、最近はよしおさんやはるさんに鍛えて貰っていますから」
そうなのか。それならちょっとした犯罪者なら問題はないな。
「ところで、誰に会いに行くんすか?」
「シスタークリスに少し用がありましてね」
地下の牢獄が並ぶ一番奥にひときわ大きな牢獄がある。ここは、地位の高いものを入れる牢獄だそうで、一応シスタークリスもここに入っているそうだ。
牢獄の中には、恨みがましい目をした老婆がいた。
「久しぶりですね。シスタークリス」
「何の用じゃ!!強欲聖女が!!」
いつきさんは牢獄を思いっきり蹴った。
「ババア。あんた、ソーパー王国の大司教は知ってるか?」
いつきさんの口調が変わった!!?
「知らんわ!!!知っていても、守銭奴に教えるか!!!」
いつきさんは盗賊のアジトから持ち帰った、麻袋を取り出した。
麻袋から、一つの宝石を取り出し、シスタークリスに見せた。
「そ、それは!!?」
「あんた、これの事を知っているよな。うちの教会にあった筈の、セリティア様の涙と呼ばれる宝石だ。何故、盗賊がこれを持っていた?」
「と、盗賊に盗まれたんじゃないのかい!!!これは失態だよ!!」
「あんた。この教会にいたんだろ?この教会の僧兵が、盗賊如きに後れを取るとでも思ってるのか?」
そう言われて、シスタークリスは口を紡ぐ。
「吐け。大司教との関係を吐け。あんた、まさかと思うがうちの巫女を大司教に就かせたとかいうのはないよな?もしやっていたら神罰を喰らうぞ?」
「な、何を根拠に言っておる!?貴様に神罰が下せるわけがなかろう!!」
「という事は、巫女を大司教に就かせたんだな」
いつきさんは魔法の詠唱を始める。
「き、貴様!!何をするつもりだ!!」
「呪怨呪縛」
いつきさんが魔法を唱えると、シスタークリスは絶叫を上げて苦しみ始めた。
「今の悲鳴は!?せ、聖女様!!?」
僧兵と城の兵士が走ってきた。苦しむシスタークリスを見て驚愕している。
いつきさんは、冷たい目でシスタークリスの苦しむ様を見ていた。
「行きましょう。陛下にシスタークリスの現状を、伝える必要があります。貴方達二人は、ここで見たことを忘れなさい。そしてできるだけ近づかないようにしてください。近いうちに、確実に神罰が下りますから」
いつきさんの転移魔法で移動する。いつもは行き先を言ってくれるのに、今日はよっぽど怒っているようだ。無言過ぎて、僕も怖いんだけど。
着いた先はギルドだった。




