異国の勇者編6 ソーパー王国
僕達は謁見の間から、大広間の会議室のような所に通された。
「では、聞きたくはないが聞こう。いや、その前に一つ確認をしたい」
ソーパー王は、三人の方をチラッと見て「カレ……いや、カイトはどうした?」と言った。確か、今カレとか言った気がする。
「みつき。勇者はどうしている?」
「カイトならいつきさんが監禁しているはず」
僕の言葉に、ソーパー王が席を勢いよく立つ。
何故かソーパー王は焦っているように見える。
「し、失礼。しかし、彼も勇者、最低限の…その、扱いをだな」
「大丈夫ですよ。監禁と言っても、少しの間、外出を控えてもらっているだけですから」
いつきさんが、急に来た。この部屋にいた皆がビックリしているよ?
「いつきさん。ゆーちゃんは?」
「ゆづきちゃんは家で寝てますよ」
「ならよかった」
「そ、そうか。ところで君達は?アロン王、宰相殿、勇者バトス殿一行は以前会ったことがあるが、君達には初めて会う。自己紹介してくれんか?」
自己紹介か。じゃあ、僕からでいいかな?よいやみもいつきさんも頷いている。
「僕は勇者みつき。アロン王国では勇者黒姫と呼ばれています」
「突然現れて失礼しました。私はアロン王国で活動している、女神セリティア様の聖女いつきと申します」
僕達二人が自己紹介をした後、よいやみの方を見てみると、よいやみの顔がいつもと違っていた。
よいやみはすっと立ち上がり、貴族子女の挨拶をスカートを摘まむ振りをした。
「ご無沙汰しています。ソーパー陛下。ガスト王国元第六王女よいやみですわ」
よ、よいやみが壊れた!!!!!!
いつきさんも驚いた顔をしている。
「よ、よいやみ?何か変なものを食べたの?」
「みつき。一応、他国の王族の前だから、そういうのはやめるっす」
よいやみから冷たい目で見られた。
「お、おお!!よいやみ姫か!!大きくなって。え?元?」
「はい。あし…いえ、私は冒険者になるべく王位を返上しましたから。今はただのよいやみです」
「そ、そうか」
僕達の肩書を聞いて、思う事でもあるのかソーパー王は顎に手を置いて少し考えこんでいた。
「で、だ。ローレル達はアロン王国で何をしでかした?」
ソーパー王は少しだけ落ち着いて聞いた。
「その前に、なぜ、我が国に派遣した理由が聞きたい」
「そうだな。そこから説明しようか」
ソーパー王の話では、元々ソーパー王国は、教会や魔族に侵略をされない平和な国だった。しかし、最近になって魔族の侵攻があったらしい。らしいというのは、未確認だがいくつかの村が襲われたそうだ。
王は、確認のために軍の幹部を派遣したりしたが、成果はまるでなし。そんな時に、教会の幹部が王に会いに来たそうだ。
聖女にローレル姫を当てること。そう言われたそうだ。しかし、ローレル姫は男癖の悪い姫。どう考えても聖女に相応しいとは思えない。何故、教会が聖女にローレル姫を指名したのか、意味が分からなかったそうだ。
教会が言ったのは神の啓示。神の啓示と言われてしまえば、王としては文句も言えない。
「ちょっといいか?みつき。その辺を、あの方なら話せるだろうか?」
王様がボクに小声で言ってきた。
「え?ちょっと待ってくださいね。アルテミス?」
『はいはい。神の啓示ね。わかった。私が説明しますよ』
「えっと。ソーパー王、少しだけ失礼します」
僕は椅子から立ち上がり、少し下がって聖剣を召喚する。その瞬間、ソーパー側は騒めきだす。ソーパー側の兵士たちが剣を構える。
「大人しくするっす!!」
よいやみが闘気を放出させる。兵士は闘気に当てられて膝をカタカタいわせている。
僕とよいやみで闘気の使い方をいろいろ考えて生み出した闘気で人を威圧する。うまくいったようだ。
「あ、アロン王!!これは一体!!この席で抜剣するとは!!」
「すまない。これは必要なことだ」
「静まれ!!」
ソーパー王だけは落ち着いている。
「ありがとうございます。アルテミス良いよ」
僕が目を閉じると、アルテミスと入れ替わる。
僕が目を開くと僕の目は銀色に変わり、背中には3対6枚の銀色に染まった羽が出現する。最近は、魔力の使い方を覚えたせいか、髪の毛も少し銀色に変わっている。
「「「な!!?」」」
ソーパー側の人達が一斉に驚いた。
「初めまして。私は聖剣に宿る異世界の女神の残滓。アルテミスと言います」
「め、女神!!?いくら何でも女神の詐称は、許されてないのじゃないのか!!?」
詐称か。確かにそう思われてもおかしくないね。
「ソーパー王。女神の神格は知るにはいろいろありますが、その一つが羽の数です。アルテミスさんは3対6枚。セリティア様よりも羽の数は多いです。つまり、アルテミスさんの本体はセリティア様よりも神格が上になります。
「ソーパー王。教会の神の啓示と言っていましたが、女神セリティアと魔神ゼルの二柱しか、この世界に直接干渉することは出来ないはずです。つまりセリティアに嫌われているこの国は、神の啓示があるはずがないのです」
「嫌われているか…それはそうだろうな。なんと言っても聖女を詐称していたのだ。勇者とて…」
勇者もやっぱり嘘だったのか。でも、アロン王国もクジ引きで選んでいるから変わらないと思うけど。
「いえ。セリティアがこの国を嫌っているのは、教会が原因ですよ」
「なに?教会が?」
「私は聖剣ですから、詳しいことは分かりませんが、セリティアの感情くらいは読み取れます、セリティアの憎悪は間違いなく教会に向かっているはずです」
「ならば、勇者には罪はないのだな!!」
「ありませんよ。ただし、そこの三人は流石に知りませんがね」
「それはいい。我が娘ローレルを含めこの三人は地位と権力を笠に着て散々他の国に迷惑をかけてきたからな」
ソーパー王の言葉に転がっている三人は顔が青褪めている。
「さて、勇者をアロン王国に派遣した理由だが、噂を聞いたのだよ。人魔王を勇者一行が倒したと。調べてみると、アロン王国の勇者というではないか。そこで考えた、本物の勇者に会ってくれれば勇者パーティとしての自覚も出るのではないかと。しかし、それすらできなかった。儂の方にも報告はあったのだ、アロン王国に入ってからというもの、三人が問題ばかり起こしているという事に頭を抱えておった」
「俺の方に一言あっても良かったんじゃねぇか?」
「分かっておるよ。しかしできなかった。カイトの事があったからな」
「勇者だけは、まともな性格だと聞いていたが?」
王様のその言葉を聞いて、ソーパー王は少しだけ嬉しそうな顔になった。
「あ、あぁ。ここだけの話にしてくれぬか?」
「ん?あぁ。人払いが人用なら…」
「いや、勇者黒姫。人魔王を倒した勇者だろう?そのくらいは知っておるよ」
「いや。ティタンを倒したのはよいやみだね」「よいやみさんですよ」「あしっすね」
「なに?人魔王を倒したのはよいやみ姫?そう言ったのか?」
「そうっすよ?」
「僕は、黒幕の方を相手にしたからね」
ソーパー王は暫く呆然としていた。転がっている三人は、顔色が青を通り越して白くなっている。
おそらく、自分たちは何に喧嘩を売っていたのかということに気付いたのだろう。
「そうだったのか。よいやみ姫はそこまで強くなっていたのか」
「よいやみは僕よりも強かったからね」
「今もっすよ」
僕とよいやみが睨みあっていると、ソーパー王が神妙な顔つきになって、僕達に真実を話し始めた。
「カイトについてなのだが、この国では兵士の息子という事になっておるが、実際は儂の子供で娘じゃ。本当の名をカレンという」
「え?」「は?」
僕とよいやみは耳を疑った。何故なら、女っぽい顔立ちとはいえ体が……まっ平だったよ?
「はい。カイトさん、いえ、カレンさんは女性ですね」
「いつきさん気付いていたの?」
「はい。実は私もみつきさんに聞く前に会っていたんですよ。私には女神の目がありますから。だから聞いたんですよ?神眼で見たのかと」
神眼で見ていたら、本名とか性別も全て見れていたから、そういう事だったのか!?
ソーパー王が言うには、妾の子であるカレンには王位継承権がないため、下らない政争に使われないように兵士長である親友に預けて実の娘のように育ててもらったそうだ。
まさか、自分の娘が教会から、勇者認定されるとは思ってもいなかった。我が子可愛さに、身分を偽らせせめて実力をつけて生き残ってもらうために、アロン王国に向かうように言ったらしい。
しかし、もう一人の娘に邪魔されるとは思ってもいなかったそうだ。
「カレンには父親と思ってもらわなくても構わないが、せめて強くなって自分の力で幸せに生きて欲しいと、願っただけの馬鹿な父親なんだよ儂はな」
ソーパー王は悲しそうな目をして話していた。




