異国の勇者編1 異国の勇者
新章です。
僕達がティタン討伐から帰ってきて数か月が過ぎた。
「黒姫様!!お仕事ですか?でも一人ですね。なんでですか?」
「うん?今日はオフだからね。ゆーちゃんも寝てるし、暇だからギルドに来ただけ」
ティタン討伐のおかげで、僕は黒姫と呼ばれることが増えた。抵抗しても、もう無駄だと思ったので、受け入れることにした。ついでに、僕が過保護気味にゆーちゃんをかわいがっているのもバレた。
最近は、見習い勇者の人達や冒険者との交流も増えてきた。見習い勇者は今までは嫌われていたけど、僕やバトスさん、それにクレイザーが冒険者とも仲良くしているのを知って、他の勇者達も自分達の考えを改めたそうだ。
まぁ、考えを改めるのは冒険者側も一緒だと思うけど。
「よぅ!みつき、今日はオフか?」
「こんにちは、バトスさんは後進の指導?」
「あぁ、面白い奴がいたらじいさんの所に送る予定だがな。なかなかそういう奴は出ないな」
「まぁ、そんなのがゴロゴロいたら怖いけどね」
僕達は、他愛もない話で笑いあっていた。ん?寒気?
僕が振り返ると、ルルさんがいた。
「るるさん。バトスさんは盗らないから、睨まないでよ」
「そ、そんな心配はしてないわよ?」
いや、明らかにしているよね?
「そういえば、クレイザーのバカは?」
「おぉ、あいつなら、新人冒険者と一緒にダンジョンに潜っているぞ」
お?ようやくクレイザー君にも春が来たか?
「戦士職の体のでかい男ばかりだけどな」
クレイザー君、君が汚れないことを祈っているよ。
「そういえば、お前ら、明日からの仕事はどうするんだ?」
「うん?明日は、魔大陸で小遣い稼ぎって言ってたかな?」
「お前、リーダーだよな?」
「そのはずだよ?」
バトスさんに呆れられたぞ?なんでだ?っていうか、僕がリーダーっぽくないのは分かっているよ!!
次の日、僕達は魔大陸で稼ぐ為の準備を始めていた。
「みつきさん。武器屋のおじさんからの追加注文です」
「ん?何を追加してた?」
「ゴブリンの骨を50本だそうですよ」
「あのおっさん。金払えんの?なんか最近、客いないよ?」
「払えなんだら、取り立てをするっす」
「お前ら勇者だろう?悪人のような面してるぞ?」
お店の準備をしていたゲンさんが、僕達の顔を見てそんな事を言ってきた。失礼な。
「お父さん?商売は信用の前に利益ですよ?」
「いつき、お前はどんどん人として駄目になってきている気がするぞ?」
「じゃあ、この店には薬草を卸しませんね」
「ちょと待て!!いつき!!」
「行ってきます」
いつきさんはゲンさんの話を聞かずに魔大陸に転移した。
魔大陸に到着した僕達は、今日の狩りの役割を話し合うことにした。
「さて、いつも通り、よいやみさんがゴブリンの森に行って、みつきさんがグレートビースト退治ですね。私とゆづきちゃんで西の平原で薬草摘みですね」
まぁ、役割は大体同じなんだけどね。
「さて、グレートビーストはどこかな?」
最近覚えた魔力を使った生体感知。精度が前よりも上がったので、獲物も見つけやすいかな?
一時間後。
僕は依頼に会ったグレートビーストの牙10本。最近気づいたけど、浄化の灰を使うより解体した方が良いものが手に入るという事が判明。それが分かってからは、王都の解体屋さんに頼んでいる。僕達では出来ないことが判明したからだ。
よいやみは血が苦手。ゆーちゃんにはさせたくない。いつきさんは取捨選択ができなくて時間がかかり過ぎる。僕は…………雑と言われた。おかしな話だ。僕は昔から解体をしていたのに。
こんな感じで、仕方ないので別料金で解体屋さんに頼むことにした。いつかは、うちのパーティ一行の為の解体屋を雇いたいね。そう思って解体屋の人を勧誘したら、死にたくないと断られた。なんでだろう?
狩りが終わって、集合場所に集まってきた。これでしばらく、お金に困ることはないだろう。
僕達とバトスさん達はクエストをすることを禁止されている。なんでも、僕達だけで、全てのクエストをやってしまうと他の冒険者が食っていけなくなるそうだ。んで、僕達は魔大陸で狩りを、バトスさん達は後進の育成で生計を立てている。
バトスさんも更に強くなった。あれからも、時間があればじいちゃんのところに特訓に行っているらしい。他の3人も同じだ。クレイザーはどうだろうね?
僕達は、解体屋さんに魔物を持って行った。僕達の道具袋は特別製で、いつきさんが最大限に空間を大きくしているので、竜王系の魔物でも何体でも入る。竜王系はバカでかいので、入る道具袋がなかったのだ。そこで、魔大陸の魔法具屋のおばちゃんの所で新しい道具袋を開発してきたのだ。
「こんにちは!!」
「「「うわ!!?来た!!!」」」
ん?おかしいな?仕事を持ってきたのに?
「今日はゴブリン50匹と、グレートビースト10匹です。明後日までにお願いしますね」
「遅れたらわかっているっすよね?」
そこで、よいやみがなぜか脅す。
「それじゃあ、明後日また来ますね」
いつきさんが笑顔で言うと、解体業の人たちが泣いて喜ぶ。
泣いて喜ぶ解体屋を後にする僕達。何故、いつきさんを見て泣いてまで喜ぶんだろう?
僕達は、時間ができたので久しぶりにギルドにやってきた。
「あ!!みつきさん!!ちょうどいいところに」
「ラビさん、どうしたの?」
「実は、宰相様がギルドに来ているんですよ。すごい剣幕で」
「…………………」
「嫌な予感しかしないっす」
「僕達帰るね」
「待ってくださいよ!!ギルドを見捨てないで!!」
僕達が帰ることが、なんでギルドを見捨てることになるのか。
「ゆーちゃん、ソファーで寝ていていいよ」
「うん」
ゆーちゃんはソファーに寝に行く。
ギルマスの部屋から、疲れ切った顔のオルテガさんと明らかに機嫌の悪いシドさんが出てきた。
「おや、黒姫一行ではありませんか。今暇ですか?」
シドさん、僕達を見た瞬間、すごくいい笑顔になった。いやな予感しかしない。
「暇じゃないのでこれで失礼します」
流石いつきさん。嫌な予感がしたら一瞬で断る。
だけど………
「まぁまぁ、君達にも関係ある話なんですが?」
「僕達に?」
「あ!!みつきさん!!」
しまった!!反応してしまった!!
「はい!!興味を持ちましたね。では、貴女達に依頼しましょう」
「ちょっと待ってください!!私達はクエストを国から禁止されていますよ!!」
いつきさんが焦って拒否しようとする。他の人なら引き下がってくれるけど。
「大丈夫です。私が許可します」
いつきさんでも勝てないのが唯一、シドさんだけなんだよなぁ。
シドさんの依頼は、他の国から勇者がこの国に調査をしに来ていると。
大変鬱陶しいので、潰してしまえとの命令だ。
シドさんは、何か勘違いしてるんだろうか。僕達は勇者なんだけど?
何故、他国の勇者を潰さなきゃいけないのか。
「大丈夫です。もみ消してあげます。もしくは貴女達を切ります」
無茶苦茶だ。この人。
「死んでください。糞宰相」
「聖女の癖に、貴女も大概口が悪いですね」
いつきさんとシドさんが睨みあっている。
結局、僕達が折れてしまった。シドさんには勝てない。
シドさんは、笑いながら城へと帰っていった。いつきさんは悔しそうだった。
シドさんが帰る前に、異国の勇者の事を教えてくれた。異国の勇者は、僕達とは違って教会が選び抜いて選抜してるらしく、僕達のようなクジ引きじゃないから、特別視されているそうだ。
「お前等、面倒臭い仕事を押し付けられたな。あいつらはもうこの国に入っているらしいぞ?」
バトスさんが後進の指導を終えて、ギルド内に戻ってきたようだ。
「うわぁ……面倒臭い。バトスさん、異国の勇者ってどんな性格なのかな?」
「さぁな。イケメンな勇者とは聞いたがな。異国ではモテてたらしいぞ。真面目とは聞いたがな」
「ふーん」
真面目ってのなら、話し合いで何とかならないかな?
そんな事を考えていたら、クレイザーが絶叫を上げながら走って出て行った。
「あいつ、帰ってきてたんだね」
「あいつも黙ってればモテると思うんだがな」
それは、どうだろう?
僕達は、嫌な仕事を押し付けられたので、気分転換にオフという事にした。
とりあえず、異国の勇者に出会うまでは、それぞれ自由な時間を過ごすことにした。
まさか、それぞれが異国の勇者達に会うことになるとは、思ってもいなかった。




