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≪みつき視点≫

 僕達は、いつきさんの魔法で王都のギルドに帰ってきた。

 あれ?誰もいない。ラビさんやゲイルさんもいないや。いつも、うるさいクレイザーもいない。なんでだ?


「みつきさん!!?帰ってきていたんですか!!?」

 ラビさんがギルドに入るなり僕達に駆け寄ってきた。顔は心配そうな顔で、泣きそうな顔をしていた。

「どうしたの?何かあったの?」

 僕はラビさんを落ち着かせようと、優しく聞いた。

「みつきさん、ティタンを討伐に行ったって」

 なんだ。その事か。

「うん。無事に帰ってきたよ」

 ラビさんは、僕に抱きついて泣いている。そんなに期待されてなかったかな?


 落ち着いたラビさんに、今の状況を聞いた。新人の勇者に、人魔王の討伐を押し付けるように任せるなんてと反対して。オルテガさんが王様に直談判に向かったそうだ。

「なんか嬉しいね。そうやって、心配してくれる人がいるって」

 僕、いい事言った?流石、僕。そう思ってよいやみの方を見てみると、よいやみからの視線が痛いぞ?


「ラビさん。リリアンさんやバトスさん達も陛下のところに?」

「はい」

「みつきさん。急ぎましょう」

 そう言って、転移魔法を発動させる。ちょっと待って!!ゆーちゃんがソファーで寝ようとしている!!


 僕の叫びは遅く、ゆーちゃんを置いて王様のいる所に移動してしまった。


≪レオン視点≫

「陛下!!今すぐ、黒姫一行を呼び戻せ!!」

 ギルドマスターのオルテガが吠える。いやな、お前の言ってることもわかるがよ。魔王アリス殿が提案してきた事に、俺がとやかく言えるかよ。アリス殿はみつきの姉のようなものというじゃねぇか。

「陛下。私からもお願いします。みつきちゃんたちは強いと言っても女の子なんですよ」

 リリアンに言われたら、嫌われたくないから、言う事聞いちまいそうじゃねぇか。困った。せめて、ハイン殿がまだ残っていてくれたら、説明もできたのに。

 シド!!何かいい案はねぇか?ってお前!!無視決め込んでんじゃねぇ!!

「ギルマス落ち着け。みつきは、俺なんかよりも遥かに強い。そこまで心配することもねぇんじゃないのか?」

「バトス!!あの子は、何の説明もなく、無理やり連れてこられたんだぞ!!クジ引きっていう、下らん方法でな!!」

 待って、それを言われると凄く耳が痛いんだが。

 大体、その方法に固執してたのは、国の重鎮のじじい共だよな?あいつらのせいじゃん。

「ガキみたいなことを考えないでください」

 シド!!こいつ役に立たねぇ癖に、人の心を読むんじゃねぇよ!!

「みつきちゃんを、戻してくれない限り、私は貴方に会いません」

 え!?リリアン?いや、それは……それだけは待って!?俺が涙目になるよ?

 俺が、リリアンのセリフに焦っていると、扉付近が光った。

「ゆーちゃんがソファーで寝てようとしているから!!」

 みつき達だ……無事だったのか?良かった。生きて帰ってきてくれたか。

「え?」


≪みつき視点≫

 うっわーーーー!!恥ずかしい!!転移していきなり、僕のあの発言か!?

 よいやみは笑いを堪えてやがる。くそぉ!!僕は地団駄を踏む。

「みつきさん、静かにしてください」

 怒られた……。よいやみは指をさして、。声を出さずに笑っている。ムカつく。

 いつきさんは、ティタン討伐までの話を細かく説明している。

 ティタンを倒したのが、よいやみということにも、僕達以外の皆は驚いていた。


「というわけで、人魔王は滅びました。問題があったのはその後です」

 いつきさんは、ゼドラのことを話すのか?いくらなんでも、信じてもらえないんじゃ。

 よいやみも、焦って僕に目で訴える。

 そんな目をされても僕が止められるわけ無いじゃないか。

 いつきさんは、異世界の話をし始めた。


「ルルさんとはるさんは私やゆづきちゃんと一緒にあの方にお会いしましたから知っているでしょう?」

 あの方って誰だろう?王様の顔が、困惑している。それはそうだ、異世界の話をされても普通に生きているのなら、関わることのない話なのだから。

「いつき、ティタン瀕死で異世界に逃げたのか?」

「いえ?先程も説明しましたが、ティタンはよいやみさんが倒しましたよ?簡潔に言いますが、その後に黒幕だった、異世界の魔王ゼドラと遭遇、みつきさんとの交戦中に女神様がみつきさんの中に降臨してゼドラを滅ぼしました」

 えええええええええええぇ!!!

 いつきさん何を正直に話してるの!!?しかも、女神様って?たしかにアルテミスはいたけど。

「あー、ちょとまて。話が大きすぎる。それは女神セリティアか?」

 オルテガさんも困惑している。

「違います。別の女神様でした。セリティア様は面倒なことはしない方なんで」

「面倒ってお前。聖女であるお前が危険になれば出てくるだろう?」

「どうでしょうね?私は聖女の力があるだけで、セリティア様を信仰してるわけじゃありませんし」

 いつきさんが爆弾発言をしている。

「セリティア様も知っていますし、大丈夫ですよ?」


 僕は、いつきさんの傍に行って小声で「アルテミスに説明してもらう?」と聞いてみたら、「いいんですか?」と逆に聞かれたので頷いた。

「みつきさんからの許可が出ましたので、女神様に説明してもらいます」

 王様たちは何を言ってるんだ?って顔をしている。


≪レオン視点≫

 いつきが、女神様から説明があると言った。正直、こいつは何を言ってるんだ?と思ってしまった。

 それを思ったのは俺だけじゃない筈だ。かばっていた筈のオルテガでさえ、いつきを不審な目で見ている。普通はそうなるよな。女神は聖女、もしくは巫女以外の人間に、姿を現すことはないという事を教会から聞いている。現に、シスタークリスは巫女ではないので女神に会った事はないそうだ。逆にシスタークリスを連れてきた、えりか嬢は女神の姿を「すごくいかわいらしい方でしたよ」と言っていた。


 みつきがおもむろに聖剣を取り出した。

 ん?あの聖剣、形状が変わっていないか?それに刃の色も前の金色がかった色じゃなく白銀に変わっている?どういうことだ?

 あの剣はオルテガも見ている。オルテガの方を見ると、顎に手を当てて不思議そうにしていた。

「アルテミス、説明お願い」

「……え?嫌だよ。説明してよ」

「……あ…うん」

「わかったよ!!でも僕の体だからって、食べ過ぎないでね!!」

 何を一人で言っているんだ?まさか、精神を病んでしまったのか?

 うっ・・・リリアンたちからの視線が痛い。きっと、無理やりティタン討伐を行かせた結果だと、思われている。ち、違う。あれはアリス殿にだな。


 そんな中、みつきが目を閉じる。

 再び目を開けたみつきは、銀色の目をしていた。何よりその背中には少し透けた3対6枚の銀色がかった白鳥のような羽が生えていた。

 俺達は、その姿に絶句した。間違いなく、普通の人間じゃない。なんというか神々しい。

「初めまして。私は聖剣に宿る月の女神アルテミスの残滓。この世界とは別の世界の女神です」

 アルテミスと名乗った女神は、ティタン討伐後の説明を事細かくしてくれた。普通なら信じられないことなのだろうが、彼女の言葉には何故か分からないが、妙な説得力があった。


「ありがとうございます。アルテミスさん」

「いえいえ、みつきにも言いましたが、美味しいケーキ類を楽しみにしていますね」

 なんだ?女神と言っても普通の女の子と変わらないんだな。しかし、食う時はあの羽を広げて食うのか?……絶対に騒ぎになるぞ。


 みつきの目が再び黒に戻ると、羽もなくなっていた。黒姫は本当に規格外な勇者だな。

「陛下、ティタンのことですが、遺体を持ち帰っています。お引き取りをしていただきたいのですが」

 ティタンの遺体。いつきの話では魔物化していたということだが、遺体が残ったのか?

 いつきが空間魔法の空間から取り出したティタンは俺の記憶のままの姿だった。

「馬鹿やろうが。下らない野心を持たなければこんな結果にならずにすんだというのに」

 こんな奴でも、一度は俺自身が殺したとはいえ、一応は俺の兄だからな。こんな奴でも………

「勇者黒姫とその仲間の皆、ご苦労だった…報酬は後日払う…今はティタンと二人にしてくれ」


 俺以外は、全員王の間から出ていったと思っていた。

「今日だけは、側にいてあげますよ。陛下………」

 こういうところに、惚れたんだったなぁ。リリアンは黙って俺の隣にいてくれた。


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