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ゼロの魔力

 魔力には、二つの究極が存在している。一つはゆーちゃんの持つ無限の魔力。

 絶対に枯渇することのない魔力。魔法職の最高到達点と言われている。そして、前衛職にも最高到達点が存在するそうだ。

 ゼロの魔力。一見魔力が全く無いことから魔法が使えないと言われるが、瞬間敵にだけなら上限なく魔力を放出できる魔力だそうだ。


「僕に魔力が?」

『はい。ゼロの魔力。それが貴女の魔力です。今はまだ使いこなせないようですが、闘気という形で別の力を引き出していた貴女なら、使いこなせます』

「僕に力が」

『はい。私が魔力の放出はやります。貴女は今までの経験を活かして戦ってください!!』

『二人で楽しそうだな。俺もお前の力になるぜ。お前の魂を強化してやる。魂の強化は先読みと神眼を付加する。使いこなせよ』

 僕は目を開いた。ゼズがよく見える。

「お前のその眼はなんだ!!何故、眼の色が銀色に変わっている!?」

 僕の眼が銀色に?

 まぁ、いいや。アルテミスの話では、普通に戦っていいって話だよね。

 僕は、聖剣二本でゼズに斬りかかる。あれ?速い?

「ぐ、くそ!?何故、いきなり強くなった!?出来損ないの分際で!?」

 僕は、ゼズを観察する。

 ゼズ?違うよね?

 あんたはゼズじゃなくて。

「魔王ゼドラだよね?」

 急に本当の名を呼ばれたゼドラは、驚愕した。

「ここの世界よりも、遥かに強い世界から来たみたいだけど、全力状態のよいやみにでも負けそうな強さじゃない。そんなんじゃ、グレンさんやじいちゃんには勝てないよ?」

 僕の仲間も、僕が何を言っているんだって顔をしている。

 見えるんだ。

 全部。

 こいつの魂は腐りきっている。救いなんてないよ?

 僕は静かにゼドラに近づく。

 ゼドラは魔剣に魔力を込め始めた。

「はぁああああ!!!」

 ゼドラは、目にも止まらない速さで僕に向かって斬撃を連続で与えようとしている。

 目に止まらない程度じゃ、僕からしたら、見えてるんだよ?

 僕はゼドラの魔剣を叩きつけた。

「ぐ!!」

『そろそろ魔力を使って攻撃していきますね』

 アルテミスの声が聞こえた。そっか、今までのはフレーズヴェルグの力だったのか。

『そいつは違うなぁ。俺の力は神眼を与えることと、先読みをしやすくしているだけだ。身体能力の高さは無意識に使っている魔力の恩恵だ』

 ん?それだとなんで今まで、闘気を使わなきゃ戦えなかったんだ?

『そりゃあ、お前自身が魔力を完全否定していたから、無意識にも魔力を使わなくなっていたからだ。しかもだ、代わりに使っていたものが闘気となると尚更な』

 闘気を代わりに使ってたのはまずかったのかな?

『まぁな。闘気は本来放出して使うものであり、内側に溜めるものじゃないからな』

 そうだったのか。

『この世界では、闘気の存在は一部の者にしか認識されてない。よいやみだって闘気を使えば更に強くなるぜ』

 僕はよいやみの方を見た。よいやみは、いつきさんに貰ったポーションを飲んでいた。あ、僕が見てるのに気づいた。

「みつき。戦闘中っすよ!?」

 あ、忘れてた。


「出来損ないの分際で我を無視するとは!!!!」

 ゼドラの魔力が膨れ上がる。これ以上魔力を膨れ上がらせられると迷惑だな。

 あの魔剣か。魔力を増大させているのは。

 

 ゼドラの右腕が飛んだ。僕が斬った。ゼドラは反応すらしていない。

 ゼドラからすれば、僕が急に目の前に現れたにすぎなかっただろう。今の僕の動きは、全力状態のよいやみと変わらないくらいの速さだ。

『あの子は凄いですよ。自身の力で移動術の奥義に辿り着いてますから』

 僕は、アルテミスに力を借りているからね。

『違います。これはみつきの持つ魔力本来の力なんですよ』

 でも、使いこなせないと意味がないんじゃ?

『それは、今までは闘気が邪魔を……』

 自業自得ですかー。そうですかー。

『拗ねないでください!!』

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」

 ゼドラが叫び始めた。

 斬られた右腕にようやく気付いたようだ。膨れ上がった魔力が霧散していく。

「い、いつの間に斬られたんだ!!!?」

 ゼドラは斬り落とされた腕を拾う。

 あ、再生した。

 流石、異世界の魔王だけあるなぁ。

 ゼドラは魔力の球を僕に向かって放ってくる。数が多い。

『体の所有権を一度借りますね』

 え?僕は体が動かせなくなった。

「よいやみさんも覚えておいてくださいね。闘気は本来こう使うんですよ」

 よいやみの顔が驚いた顔になっている。僕は背中の方を見る。

 うっわ。三対の銀色の羽が生えているよ!?

 僕が、聖剣アルテミスに闘気を流し込んでいる。身体能力に使っていた分、全て、剣に注ぎ込めるんだ。

 聖剣アルテミスが白銀に光る。

「闘気を使う場合は、斬撃の場合は振り斬るときに、打撃の場合は相手にヒットした瞬間に放出します」


「とその前に、この魔力弾を消しておきましょう」

 僕の周りに光の矢のようなものが発生する。

「これは、私本来の技ですから、みつきさんには使えませんよ?」

 僕の口から僕では使えないという。第三者からしたらおかしい状況だろうな。

「私は本来、弓を使いますからね」

 光の矢がゼドラの魔力球を全て撃ち落とす。

「なぁ!!?」

「何を驚きますか?本当に驚くのは今からですよ?貴方が出来損ないだの、真似事だの言っていた、闘気の本当の使い方で貴方は傷ついていくんですから」

 ゼドラは焦って逃げようとするが、アルテミスが逃がすわけがない。

「き!!!貴様!!?出来損ないじゃないな!!!何者だ!!」

 アルテミスはにっこり微笑み「貴方と同じ異世界の女神の残留思念ですよ」と、ゼドラを斬りつけた。

 ゼドラを斬ると同時に、ゼドラの背中に一筋の光が走る。

「ぐがぁあああ!!!な、なんだ!!?この威力は!!?」

 何が起きているのか分からないゼドラは、とっさに後ろに下がる。

 アルテミスがそれを逃すわけがない。フレースヴェルグを収納すると、剣を持っていない拳でゼドラを殴りにいく。

 拳は、ゼドラに当たったと同時に、ゼドラの体を凄まじい衝撃が襲う。

「がぼぉ!!!?な、何が…?」

「これが本来の闘気の使い方ですよ?決して、体にため込むためのものじゃありませんよ?」

 怒られた。まるで自分に怒られている変な気分だ。


「しかし、自分で使っていても思いますけど、ゼロの魔力は在り得ないくらい強いの魔力ですね。これで、まだ発展途上なんですから」

 アルテミスの言葉にゼドラは絶句する。

「ゼロの魔力だと?ば、馬鹿な。まさか、いや。しかし」

 ゼドラが明らかに動揺している。

「そんなわけあるか!!!!」

 ゼドラが、いきなり僕に向かって魔力を放出しながら襲いかかってくる。

「ふふっ、苦し紛れですね」

 アルテミスは聖剣を両手持ちして、魔力を最大限に込める。

 刃がガラスのように透明でなおかつ銀色に輝いている、巨大な剣に変わる。

 それを振るうと、ゼドラは光とともに塵に変わっていく。

「ば、馬鹿な!!!わ、我は…………」

 ゼドラがいたところには、何もなくなっていた。

 

 あれ?眠い?なんで?

『力を使い果たしたみたいですね。ちょっとやりすぎました』

 や、り…すぎた、って?

 僕は睡魔に勝てずに眠りに落ちる。


 眠る前にアルテミスが何かを言っていた。


『お疲れ様、私の勇者様』


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