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真なる進化

「実に気分がいい」

 ティタンからは禍々しい魔力が、溢れ出している。

「今なら、貴様ら全員を相手したとしても負ける気はしない」

 ティタンは魔力を集中させる。

「よいやみ、ここからは協力した方がよくない?」

「大丈夫っすよ。嫌な予感がするから、あれはまだ使わないでおくつもりっすよ」

「あれを使えば、目の前の魔王を簡単に倒せると思うんだけど」

 よいやみは、腕を組んで考え込む。ティタン自身には二発蹴りと手刀で腕を切断しただから、まだ気が済んでいないんだろう。

「せめて、全力を出さしてから全部壊してやろうと思っていたっすからね。今の状態ならまだ簡単に倒せるっすから、ちゃちゃっと終わらせるっすかね」

 ティタンの魔力の集中が終わったようだ。

「余裕ぶっているようだが、終わりだ!!!」

 ティタンの全身から黒い魔力弾が全方位にまき散らされる。

 僕は、ゆーちゃんを抱えて避ける。今は結界があるかもしれないけど、体が勝手に動くものは仕方がない。

 よいやみも、いつきさんを抱えて避けている。

「鬱陶しいっすね。ゆっきー!結界を張るっす」

「うん」

 僕はゆーちゃんを下した。ゆーちゃんは両手を前に出し「なないろけっかい」と魔法を唱えた。

 七色結界は、完璧ではないとはいえ、全ての属性を防ぐ結界だそうだ。

 結界の内側にゆーちゃんといつきさんを避難させると、よいやみが魔力を込め始めた。

「さてさて、第二回戦の始まりっすよ」

 よいやみ一気に踏み込んで、ティタンのすぐ目の前に移動する。

 無数の魔力弾を物ともせず、目の前に来たよいやみにティタンが驚く。

「威力の低いものなら、わざわざ避ける必要がないっすよ!」

 ティタンの腹部によいやみの拳がめり込む。

「ぐぼぉ!!!」

 無防備になったところを連続で、攻撃していくよいやみ。

 ティタン魔力を練りな襲おうとするが、よいやみの攻撃は止まらない。

「ぐばぁ……」

 ティタンは攻撃に耐えられずに、膝をつく。

 頭がいい感じで低い位置に来たので、よいやみは頭に踵落としを食らわせる。

 脳震盪を起こしたのか、ティタンはフラフラになったところを、さらに蹴り飛ばされる。


「なんすか、姿が変わっただけで、強さは変わらんっすね」

 いや、正直よいやみが強すぎるだけだ。今のティタンならバトスさんやクレイザーが相手だったら、かなりの苦戦を強いられるはずだ。

 まだ、踵落としのダメージが残っているのか、立ち上がったティタンはよろめいている。

 よいやみは落ちていた、魔剣を拾った。

「忘れ物っすよ!!」魔剣をティタンに投げつけた。

 魔剣はティタン胸に突き刺さる。

「ぐぎゃぁあああああ!!」

 心臓に刺さったのか?魔物化した人間に心臓があるのかは知らないけど苦しんでいる。

 ティタンは自身の胸に刺さった魔剣を抜く。

「ぎざま!!!ゆるざんぞ!!!」

 ティタンの表情は怒りに染まっている。変化したての頃の余裕はもうないな。

「さっきから、許さん許さん言ってるっすけど、さっきも言ったっすけど、あしはお前の敵っすよ?」

 よいやみから明確な殺意が生まれている。

「お前に許しを請う必要もないんすよ」

 よいやみは静かに低い声で威圧を込めていた。


「よいちゃんこわい」

「よいやみ怖いって!!」

 よいやみが冷めた目でこっちを見た。

「みつきー。真面目に戦闘やっとるんすから、空気を読むっす」と呆れた顔をされた。

 ちょっとだけ殺気が収まった。

「なぜだ!!!俺は究極の魔王に進化した筈だ!!!」

「究極?馬鹿言っちゃいけないっす。この世界には、本物の化け物もいるっすよ?あしの師匠もそうだし、みつきのじいちゃんもそうだし、魔王でいうなら、アリスさんの方が比べ物にならないくらい、恐ろしく強い魔王っすよ?お前はせいぜい、強い魔物でしかないっす」

「だまれぇええええええええ!!!!!」

 ティタンの腕が伸び、ゆーちゃんに向かう。

「いくら魔法を防げても、直接攻撃は防げまい!!!!」

ゆーちゃんは魔法を唱えて、手を前に出す。

「しんしょーけっかい」

 ゆーちゃんの前に透明度の高い、氷のようなものの壁が現れる。

 ティタンの拳は、透明の壁にはじき返される。

「何!?」

「しんしょーけっかいはぶつりこーげきをとーさない」

 ティタンは驚愕している。こいつもフォズと同じように、ゆーちゃんを人質にしようとでも思ったんだろう。ゆーちゃんはご立腹だ。

「よいちゃん。ゆーちゃんにかわって」

「嫌っす」

「むー」

 ゆーちゃんが地団駄踏んでいる。


「貴様ら一体何だ!!俺は魔王だ!!本来ならば、俺は恐れられる筈だ!!」

 ティタンが何か叫んでいるが、僕達にとっての魔王の基準はアリ姉になる。

 アリ姉を基準に考えると、ティタンは弱いくらいになるのだ。


 よいやみがティタンの顔面を思いっきり蹴った。蹴り飛ばされたティタンは、壁に激突した。

「だから言っているじゃないっすか。あんた程度のやつはきっと弱い部類なんすよ。そんなのに、恐れるわけないじゃないっすか」

 よいやみはよろけながら壁に手を吐き無理に立とうとしているティタンに近づいた。

「さーて、そろそろ終わろうっすかね」

 よいやみはティタンを殴った。

 殴った。

 殴った。殴った。殴った。殴った。

 ティタンの顔が、殴られるたびに変形していく。

「や、やめ、やめろ」

 ティタンの腕が、殴り続けるよいやみの腕をつかもうとする。

 よいやみはその手を払いのけて殴る。

 最後の殴りで壁ごと貫く。

 ティタンは、城の外に放り出された。

「これで終わったっすかね?」

「よいやみさん?なぜティタンを外に放り出したんですか?生死の確認がめんどくさいじゃないですか!!」

 いつきさんに怒られて、よいやみは少し落ち込んでブツブツ言っていた。

「なんで、頑張ったのに怒られるんすか……」

 

 魔剣が怪しく光る。魔剣が浮いている。禍々しく怪しく赤く光る。

 ドス黒い魔力が魔剣を覆う。

「あの剣、嫌な感じがするっすね」

「聖剣で魔剣を滅ぼせませんかね」

 僕は、聖剣を取り出す。

 闘気を全力で纏わせ魔剣に向かって斬りかかる。

 魔剣は、ひとりでにティタンが落ちた壁からティタンのもとに向かうように飛んでいった。

「しまった!!」

 いつきさんが叫んだ。

 魔剣は持ち主のところに戻る習性があるという事を思い出したそうだ。

 外が禍々しく光った後、人影が見えた。

 魔物変化症にかかり魔物化する前のティタンの姿に戻っているティタンが空に浮いていた。

 血塗られた魔剣を持ち、肌の色が浅黒く目が深紅以外は、初めて会った時のティタンの姿だった。

「そうか、お前も許せないよなぁ。俺は魔王でお前は魔剣。俺達は最強ではいけないよな」

 ティタンが口を開くたびに強烈な威圧感を感じる。魔力もさっきまでとは桁が違う。

「よいやみ……」

「大丈夫っすよ。これ以上は進化しないことを祈って、ここからは本気で行くっす」

 そう言って、よいやみは魔力を練り始めた。

 ティタンは、魔剣を二・三度振り、「力が馴染んできたようだ」と一言いい、よいやみの傍に移動してきたともったら、よいやみを殴り飛ばした。

 殴られたよいやみは、そのまま壁に突っ込んだ。

 ティタンは口角を釣り上げて「これが本物の力か…」と一人愉悦していた。


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