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人魔王ティタン

 静かだ……まるで、誰もいないみたいだ。

「みつき、生体関知になにか引っ掛かるっすか?」

 よいやみに言われて生体感知を使ってみたが、なにも感じない。いや、一番奥の部屋に強力ななにかはいる。これが、ティタンなのだろう。よいやみも同じ結果だったようだ。

「生体関知に引っ掛からない魔物の存在もあります。気を引き締めて行きましょう」


 ある通路に差し掛かった時、ゆーちゃんが、なぜかキョロキョロし始めた。何かを感じたんだろうか?

「嫌な、魔力回路が張り巡らされてますね。気分が悪いですね。ゆづきちゃんもそこに反応してるんでしょうね」

 いつきさんもゆーちゃんのように何かを感じているようだ。魔力回路?何だろう?

 魔力回路というのは、魔法職が使う罠を組むときに、必要な魔力の流れだそうで、この城には至るところに監視用の回路が組まれているといつきさんが教えてくれた。

「監視っすか。ティタンがあしらを、監視してるんすかね?」

 僕達を監視か。監視してるにも関わらず、襲ってくるとか、罠をかけてこないということは、余裕ということか?

 フォズのように声をかけられても、困るといえば困るんだけどね。


 誰もいない静かな廊下を歩いていると、よいやみが急に立ち止まった。

「みんな、あしの我が儘、聞いてほしいっす」

 我が儘?よいやみは基本、自分勝手に動くからたいして気にしてなかったけど、僕達が指示すると、その通りに動いてくれていた。だから、我が儘を言うことがなかったけど、なんだろう。

「我が儘の内容にもよりますよ。あくまで、私達は全員で生還する事が、最低条件なので、命を粗末にするというなら、却下します」

 やっぱり、僕よりもいつきさんの方が、リーダーっぽいんだよね。

「よいちゃん、しぬのきんし」

「ええー!?いやいや、玉砕覚悟で戦うとかじゃないっすよ!?」

 違うのか。てっきりそうだと思って、本気で止めなきゃいけないと思ったじゃないか。

「じゃあ、我が儘って何ですか?」

「ティタンとは、あしが一人で戦いたいっす」

 一人で?なんで?

「王族を抜けたあしが言うのもなんなんすが、王族は国民の為に存在するのであって、王族の為に国民が存在してるわけじゃないっす。あしは、小さいころから親父にそう教わって、生きてきたっす。ティタンは王族に生まれたにも拘らず、国民の為に、国の為に生きるんじゃなく、自分の欲望の為に国民を犠牲にしていたっす。あしは、それが許せないんすよ」

 それで、ティタンや魔将と戦っている時に、不機嫌になったり、殺気を洩れさせたりしていたのか。

「分かりました。よいやみさんが強いのは私達も知っています。だけど、貴方の命に危険があるときは、戦闘に介入させてもらいます。それが条件です。いいですか?みつきさん」

 僕は黙って頷く。よいやみの方が僕よりも強いので、そこのところは心配はしていないが、僕達にとって大事なのは、よいやみの命の方だ。

「ありがとうっす」


 城を暫く歩いていると、大きな扉を見つけた。この奥にティタンがいるようだ。

 よいやみが、拳に魔力をためている。


 よいやみが繰り出した拳が、扉を粉砕させる。


「お前がティタンっすか?」

 30代くらいの男が玉座に優雅に座っている。

「あの国の勇者は、国王に似て野蛮なものだな。何せ、血を分けた兄を殺すような奴だからな」

「あれっすよね。王族なら、そういう状況もあり得る話っすよ?王が無能なら尚更っすよね」

 ティタンの顔が怒りに染まった。

「黙れ!!王族でもないガキが俺に偉そうな口を聞くな!!」

「残念っす。あしは元っすけど魔道大国ガスト第六王女っすよ?あんたよりも、そういう争いが近くにあったっすよ?あんたみたいにぬくぬく育ってないっす」

 よいやみも王族として、苦労はしていたんだ。

「う、嘘を吐くんじゃない!!」 

 ティタンは手をよいやみの方に向けて魔力の衝撃波を放ってきた。

 よいやみは、焦ることもなく衝撃波を片手で受け止める。

「今のは先制攻撃っすか?」

「ふむ。少しは出来るようだ」

 ティタンは玉座から立ち上がった。

 何もない空間から、剣を召喚する。聖剣か?いや、僕の聖剣とは共鳴はしていない。

「この剣は魔剣ビフロンス。聖剣にも劣らない魔剣だ!!」

 魔力を解放したティタンの威圧感はたいしたものだとは思うけど、ワズほどじゃない気がする。


「んじゃ、始めるっすか?」

 よいやみは強いから、ティタンが何をしようと興味が無さそうだ。 

 ティタンは、よいやみに斬りかかる。

「うわっ。遅いっすね」

 よいやみは笑いを堪えながら、ティタンの斬撃を体をひねって避け、ティタンの顔面に蹴りを入れる。

 ん?どうやら、魔力を込めてはいないようだ。


「みつきさん。よいやみさんは、なぜ魔力を込めてないんですか?」

「わかんないけど、油断とかじゃない筈だよ。僕達は、油断をしないことを徹底的に教わっているからね」


 ティタンは、少しだけよろける。よいやみは、片足を軸にして、一回転してティタンのこめかみ辺りに追撃の蹴りを入れる。やっぱり、魔力を込めてない。

 ティタンは、無様に床に転がる。


「ちぃ!!俺は王だ!!王の顔に二度も攻撃を加えるとは!?貴様!!貴様のような奴は処刑されるべきだ!!」

「何言ってるんすか?お前はあしの敵で、あしはお前の敵っすよ?」

「何をほざく!!俺が王である以上、貴様らは俺に逆らうことを許されていないのだ!!なぜわからん!!この世界は俺の為に存在しているのだ!!」

 よいやみは、拳に魔力を込めだした。

「お前、何か勘違いしていないっすか?あしも今は、アロン王国のギルド所属っすけど、アロン王国なんて世界からしたら、軍事的には弱いほうの国っすよ?あ、今はバトスさん達がいるから軍事的にも強者になりつつあるっすけど。ようするに、ワズやお前がいた時は、ただの弱小国でしかなかったんすよ?」

 よいやみの言うことも、一理あると思う。今でこそ魔将レベルの敵なら苦戦もなく倒せるだろうけど、じいちゃんから特訓を受ける前のバトスさんは、確かに英雄だったけど、戦力で言えば魔将レベルの敵にもやられていたと思う。

「だ、だまれぇ!!!!」

「いや、あんたが黙るっすよ。口が臭いんで、これ以上声を出さんでくれるっすか?」

 ティタンの魔力がさらに上がり、顔が怒りで歪む。

「貴様は許さんぞ!!!!」

 ティタンは、魔剣を振り回してよいやみに迫る。よいやみは、簡単に魔剣を蹴り落す。

 ティタンが腕をよいやみに伸ばすと、ティタンの腕がよいやみに向かって伸びる。

「!!」

 一瞬だけ、腕が伸びたことに驚いたようだが、すぐに冷静な顔に戻り、手刀でティタンの腕を切り落とす。


「マジかー。よいやみ、斬撃まで使えるようになったのか!?」

 僕は素直に驚いた。よいやみは血が苦手なので、出来るだけ、血を流させない方法で攻撃していた。それを、斬撃を使うなんて。

 ティタンも驚愕している。

「ば、ばかな!!?俺の腕が!!こんなに馬鹿なことがあるか!!俺は正しいのだ!!!」

 ティタンは発狂していた。ん?ティタンの体が浅黒く。そして一回り大きくなった。

 頭に角が2本生え、背中には漆黒の翼。上半身の服は吹き飛び、筋肉も増大している。

 目が深紅に染まり、口も裂けた。

 ティタンは深紅の目をこちらに向け。

「さぁ、地獄の始まりだ……」と笑った。


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