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新たな力

「ティタン様。ワズが滅ぼされました」

 俺の腹心であるゼズがワズの敗北の報告に来た。

「なんだと?あのワズが負けたというのか?」

「はい。侵入した勇者は思っていたよりも強者のようで」

 魔将が全て敗けたというのか?馬鹿な。サズやセズならまだしも、ワズは本物の勇者だぞ!?あのバトスすらも凌駕する力を持っていた筈だ!!

「まさか、侵入してきた勇者はバトスか!!?」

 バトスというのならまだ納得できる。いや、納得は出来ないが。

「いえ。勇者黒姫という、最近勇者になったものです」

 馬鹿な!!新参者の勇者に俺の魔将が打ち砕かれたのか!!?

 そういえば、フォズをとらえたものも、黒姫と名乗っていたな。

 まさか、教会から送り込まれたやつらか!?

「女神が動いているのか?」

「いえ、そのような報告は受けていません」

 女神は動いていない。俺があの国を攻めきれないのは、あの国には教会があり、セリティアの巫女が数多く存在する。噂では聖女まで現れたとか……そうなれば、セリティアとも敵対関係になってしまう。

 セリティアは神だ。たかが魔王程度では、相手にもなりやしない。

「ゼ、ゼズ。どうしたらいい?やはり俺には、王というのは重過ぎるという事か?」

 分からない。俺は間違っていない筈だ。ゼズもワズも俺に付いてきて、俺ならできると言ってくれていた。

 俺は情けなくも、ゼズに助けを求めていた。

「ティタン様。今こそ、貴方の力を見せるときです。私は戦闘職ではないので戦うことはできません。しかし、貴方は違う。私達と違い、全世界を統べる力を持っています」

 俺が直接戦うのか?勇者と?馬鹿な。ワズですら負けたんだぞ!!

 俺ではワズはおろか、セズやサズにも勝てない。

「勝てる方法がありますよ。ティタン様」

 か、勝てる方法!!そんなものがあるのか!!

 俺はその言葉に縋りついた。

 俺は死にたくはない。いや、一度死んだんだ。弟に殺された。死界にわたる前にゼズに救われた。

 今回も、ゼズが助けてくれる筈だ。

「これをお持ちください。」

 ゼズが剣を用意してくれた。この剣は一体?聖剣とは違うようだが。禍々しいが力を感じる。

「魔剣です。貴方なら使いこなせるでしょう」

 本当か?俺に使いこなせるのか?

「あとは、これをお飲みください。この薬は、貴方の体を完全に魔王化させる薬です」

 魔王化。そうだ、俺はあの国に復讐をするために人魔王を名乗ったのだ。

 ゼズに手渡された薬を飲む。

 体が熱い。体の内側から力が溢れ出るようだ。

「ティタン様はこの王の間でお待ちください。王は自ら出陣するものではありません。王たるもの、悠然としているものです」

「あぁ、分かった」

 俺の体の色が変わっていく。これは悪魔族と同じ色か?どうやら俺はゼズに、魔物変化症の薬を飲まされたらしい。いや、自ら進んで飲んだのだ。魔王になるために。

 体が少しずつ、魔物に生まれ変わっていく。だが気分はいい。

 俺はあの国を恨んでいる。俺を選ばなかったあの女。俺を否定した勇者。そして俺を討った弟。

 許せるわけがないんだ。

 俺は王だぞ?国民など俺の為に生き、俺の為に死ぬ。そんなことが当たり前な筈だ。少なくとも俺はそうやって育ってきた。

 俺が望んだことは、なんでも叶えてきたし、周りも俺の願いをどんな手を使っても叶えてきた。

 それの何が悪い?

 金も女も全て俺の思い通りでなければ、王の意味がないだろうが。

「俺の願いが叶えられないのならば、あの国などいらん。魔王と化した俺の前には、女神ですらも跪くのだ!!」


 暫くすると、俺の進化が終わったようだ。気分がいい。

 湧き上がる魔力。込められる力。何をとっても、さっきまでとは全然違う。

 今ならゼズに渡された魔剣もうまく使いこなせそうだ。

 さぁ、勇者よ。来るなら来るがいい。貴様らには絶望を与えてやろう!!

___________

 

 ティタンの進化の最中に我は王の間を出た。

「全く馬鹿な男だ。我を全く疑いもせずに、我の勧めた薬を簡単に飲むとはな」

 我は、ゼズ。表向きは、ティタンの腹心をしている。

「しかし、哀れだな。過去の栄光に縋って、一度死んだにもかかわらず、今も自分のために世界が動いていると思っている」

 我は知っている。この世界の生物は、他の世界に比べれば明らかに貧弱であることを。

 時の番人がいい例だろう。

 あいつらは、12人いるというが、この世界の人間は一人もいない。この世界最強と言われているヒヒイロカネというランクであっても、他の世界では中堅レベルでしかない。

 今回の勇者も、ヒヒイロカネという情報は入っているが、たいしたことはないだろう。

 強化した、ティタンなら、ヒヒイロカネ如きなら簡単に倒せる筈だ。

 あの廊下にいる男、我の部下ではないな。白いコート、時の番人か。

「見つけたぞ。魔王ゼドラ。ここで貴様を粛正させてもらう」

 時の番人だろうが、上位ではあるまい。あいつらは滅多なことでは動かん。

「ふん。貴様如きに、我を倒せるとでも?」

「倒すんじゃない。殺すんだ。」

 時の番人は、身の丈よりも長い槍を構える。

 口と武器だけは立派だな。

「魔宝玉の武器か。いいものを持っているじゃないか」

 ここではティタンに気付かれるな。

「ついてこい」

「逃げるのか?」

 逃げる?格下の物に我が逃げるだと?

「貴様の死に場所にふさわしい場所に連れて行くだけだ」


 転移魔法くらいはできるようだな。

「さて、ここがお前の死に場所でいいんだな?ゼドラ!!」

 自分が勝てるとでも過信しているのか?どこまでも愚かな連中だ。

 魔力を少しだけ開放してやろう。

「くっ!!」

 なかなかやるな。だがその程度でのぞけっている様では俺の相手は務まらんぞ?

「時の番人!!十一番目!!参る!!」

 騎士道精神という奴か?下らない。

 我はため息を吐いた。

 しかし、十一番か。最弱ではないか。末端の雑魚が我に勝てると思っているとはな。

 よかろう、相手をしてやろう。しかし貴様ら時の番人は。


「本当に鬱陶しいな。調停者気取りのゴミが」


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