世界
僕とよいやみは、お風呂に入った後二人で話し合っていた。
どうやったら、グレンさんに追いつくか。
僕はただの村娘だったけど、今は勇者だし、なんとなくよいやみには負けたくないと思っていた。
それをよいやみに話すと「あしもっすよ」と言っていた。
「強くなる方法っすか。それが分かったら苦労はしないっすが、あの熊に一泡食わせたいのは一緒っす」
僕は、昨日も時の番人に負けている。ゆーちゃんをこの先守ろうと思えば、負けるのは許されなくなる。
「みつきのじいちゃんなら、何かを知ってるかもしれないっすよ?」
確かに、じいちゃんはあのグレンさんに勝ってるんだ。じいちゃん部屋にいるだろうか。
僕達はじいちゃんの部屋を訪ねた。
「じいちゃんいる?」
僕が、扉を開けるとじいちゃんが茶を飲んでいた。
「なんじゃ?みつきとよいやみちゃん、じゃったかの?」
「じいちゃん、僕、強くなりたいんだ。昼間にグレンさんに鍛えて貰ったんだけど、グレンさんの強さは、僕達とは桁が違っていた。僕達に足りないものって何?」
「いきなりじゃのぉ。何があったか話してみぃ」
僕は、時の番人の事。ゆーちゃんの力と今後の事を話した。
「無限の魔力と甦生魔法に即死魔法か。どこの国でも欲しがる能力じゃな」
じいちゃんは、しばらく考えた後、僕達を見た。
「今はここにいるけど、アリ姉のところに行った後は、人魔王という奴を相手にしなきゃいけない。もし人魔王がゆーちゃんを狙ってきた場合、僕達が守らなきゃいけない」
じいちゃんが、不思議そうな顔をした。
「その人魔王という奴は、それ程強いのか?今のお主らでも倒せると思うのじゃが?」
そうかもしれないけど、グレンさんが言ったことが気になる。
油断と手を抜くこと。
油断の結果、ゆーちゃんやいつきさんが危険にさらされるのは嫌だ。
「あやつ、自分の弟子を何と戦わせるつもりなのじゃ?」
じいちゃんはため息を吐く。
「お主らの強さは、すでにこの世界では上位の強さじゃ。時の番人はこの世界の強さではないし、アリス嬢やヴァイス魔王軍の幹部ども、そしてグレンはこの世界の理から外れとるだけじゃぞ?」
この世界?まるで、別の世界があるみたいな言い方だ。
「じいちゃんも、理ってやつから外れてるんすか?」
「むっ」
じいちゃんは、明らかにしまったという顔になった。じいいちゃん、何か隠してるな。
「よし!よいやみ、色仕掛けで口を割らせるんだ!!」
「いやっす」
即答で断られた。
「やる気なんてこれっぽちもないっすけど、そもそも、口に出した時点でダメじゃないっすか?」
よいやみに正論を言われた。
「自分の孫が、こんなにアホの子とは思わなんだのぉ」
アホの子とまで言われた。
「他の二人も呼んでくるのじゃ。聞いといて損はない」
いつきさんとゆーちゃんを呼んできた後、じいちゃんがこの世界と別の世界の事を話してくれた。
「まずじゃがな、この世界以外にも、別の世界は存在する」
「しってる」
「え?どうして、ゆづきちゃんが知っているの?」
いつきさんが、ちょっと驚いてゆーちゃんに聞いた。
「きのう、かーちゃんとべつまかいのまおうにまほうをおしえてもらいにいった」
ゆーちゃんの話では、自分の身を守るために、常時発動型の結界魔法を教わりに別の世界の魔王に会いに行ったそうだ。無限の魔力があるので、かなり強力な結界を張れるようになったそうだ。
「シンクレアの小僧か。確かにあやつは結界魔法のスペシャリストじゃからのぉ」
じいちゃんの話では、世界一つ一つに神が二人はいて、この世界の場合は女神セリティアと魔神ゼルの姉弟の二人だそうだ。
「という事は、他の世界にもグレンさんやじいちゃんみたいな化け物が、たくさんいるんだね」
そう考えたら、僕達は弱いものだ。
「いや、そうでもないぞ?もしかしたら、わしやグレンのように表に立たないのもいるかもしれんが、それ程多くもないだろうし、接触してくることもない」
「で、表舞台に立っておる強者もそれほどはいない。まず、時の番人じゃが12人おる。シンは当時の10番目と言っておったわ」
あんなに強いのに、12人もいるのか。狙われたら終わりだね。
でも、現状ゆーちゃんが狙われる危険があるのなら、僕も時の番人くらい強くならないと。
「あとは、わしも詳しくは知らんが、更に強いのもいるらしいがな」
僕達は、じいちゃんの話を聞いた後、4人で話し合った。
「実際、ティタンたちの強さはどうなんすかね?」
仮に、じいちゃんやグレンさんほどの強さがあった場合、僕達には勝てないと思う。
でも、フォズくらいの弱さなら脅威でもない。
「みつきさん。忘れましたか?彼は、研究職ですよ?その彼でも、王都の英雄よりも強かったんです。お二人があまりにも一方的に倒してしまっていたから、弱いと勘違いしてますが」
確かに、バトスさんは二階層のヘルハウンドで苦戦していた。今は、ハインさんが王都を守っているからいいけど、フォズが作った魔物レベルで王都は簡単に滅んでしまうんだ。
でも、ティタンがもし強かったとしたら、なぜさっさと王都を落とさないんだろう。
「王都には教会もあります。前にも話しましたが、女神様は身内には甘い方なので、ティタンが教会に手を出せば、出てくるとでも思って攻めきれないんじゃないですか?」
そういった後、いつきさんは少し考えていた。
「みつきさん、バトスさん達をどう思いますか?」
勇者バトス。実力はあるとは思うけど、僕やよいやみに比べればすごく弱く感じてしまう。
ただ、あの人は、心がすごく強いし、誰よりもアロン王国を思って戦っている。そんな人を悪くは言いたくはない。
「じいちゃん、人間には限界があるの?」
「なぜじゃ?」
「王都に英雄がいるんだけど、覚醒も終わっているから、これ以上強くなれないのかなって」
じいちゃんは、少し考えていた。
「覚醒は一種の火事場のくそ力ってやつじゃ。だが、限界というものは存在するぞ。お主ら二人が、今その状態じゃ」
え?じゃあ、僕達はこれ以上強くなれないの?
「と、同時に限界を超える方法もある。わしからグレンに話をしておくから、お主ら二人には、明日から、その特訓を受けてもらう」
「お爺さん、王国の英雄を鍛えなおして欲しいのですが」
いつきさんもしかして。
「バトスさん一行、クレイザー君には強くなって貰わないと、王都で何かある度に、いちいち呼び出されちゃたまりませんからね」
「わしゃ構わんぞ。ただし、お主らよりも強くすることは出来んぞ?みつきは、わしが強くなるように仕向けて育てたし、よいやみちゃんも、グレンにそう育てられとる」
え?僕ってそんな風に育てられてたの?
よいやみも驚いていて「あの熊。明日、真相を聞いてやるっす」と息巻いていた。
「お願いします。明日にでも、連れてきますので」
バトスさん達はともかく、クレイザーにとっては地獄の始まりだろうな。
そう思っていたが、明日からの数日は、僕たち二人にとっても地獄になることを僕達はまだ知らなかった。




