みつきの父親
「みつきちゃんのお父さんかい?」
「うん、よく考えたら、母ちゃんにも聞いたことなくって」
物心ついた時から、頭のおかしいじいちゃんの相手で忙しかったし、母ちゃんも自分の話を自分から話す人じゃなかったし。
「私もよくは知らないんだよ。つきのに聞いても答えてくれなくてね。ただ、時の番人を止めてくれたのは確かだよ」
「なんで、お父さんが関わったと?」
「時の番人が言っていたんだ「シンと交渉した結果、お前を粛正するのは中止になった」ってね」
シン、お父さんの名前だ。名前くらいは知っている。
「実際、それ以降は、時の番人が来ることはなかったからねぇ」
お父さんは、何者だったんだろうか?
「で?この空間魔法は、時の番人に狙われる事になるが、それでも使いたいと思うかい?」
いつきさんは、僕たちの方をチラッと見て、ため息を吐いた。
「みつきさん達を危険にさらしてまで、利益を求めようとは思いませんよ」
「それでいい、代わりと言っちゃなんだけどね、あんたらいつまでこの村にいるんだい?」
「二週間はいようと思っているけど」
おばちゃんは、少し考えて「その二週間で、いつきちゃんにいくつかの魔法を教えてやろうかい?」と聞いてきた。
「いえ、王都で売りさばくために、薬草集めをしなくてはいけませんので」
え?断るの?
「人が入れる空間魔法は、お金になると思ったから教えて欲しかったんです。そうでもないのなら、別に教わらなくても問題ありません」
「ハッキリいう子だねぇ」
おばちゃんも呆れていた。
「お金になる魔法が欲しいんだろ?みつきちゃん、余った武器は持っていないかい?」
いつきさんが、僕をチラッと見たので、道具袋からロングソードを一本取り出した。
おばちゃんは、ロングソードは受け取ると魔法をかけ始めた。
魔法がかけ終わると、ロングソードの刃の部分が薄っすら赤く染まっていた。
「ほら、見てごらん」
いつきさんがロングソードをじっと見ている。
「炎の属性剣ですか?帆脳属性を付加したと。でも、これは空間魔法じゃないんじゃないですか?」
「空間魔法が使えるんなら、このくらいの魔法程度なら簡単に使えるよ。ただし、武器やアイテムに定着させるのに、空間魔法は必要になるけどね。これを量産すれば、高く売れるよ」
「なるほど、空間魔法は武器を包むように使うんですか」
「おやまぁ、見ただけでわかるのかい?随分、才能にあふれた空間魔法使いだねぇ」
おばちゃんが、いつきさんを褒めている。仲間が褒められるのはうれしいな。
「空間を固定するのは簡単なので、この属性付加、ぜひ教えてくれませんか?ポーションと薬草、そして属性剣。王都でまた大儲けができそうです」
「気に入ってもらえて、光栄だよ。ついでにいくつかの魔法も覚えてもらうけどね」
おばちゃんも楽しそうだ。
魔法職の人は、基本、教える事が好きというのを王都で聞いた事がある。
いつきさんはこのまま、店に残っておばちゃんから魔法を教えて貰うそうだ。
いつきさんと別れた後、村をぶらぶら歩くことにした。
「ゆーちゃんどこか行きたいところある?」
「つえつかいたい」
杖を使うか…ちょっと、村の外に行ってゴブリンでも狩ろうかな?
ゆーちゃんと村の外に出て、ゴブリンを探した。
ん?視線を感じる?
生体感知で僕達周辺をを調べてみたが、感知に引っかかるものはいない。
ゴブリンを三匹発見。ゆーちゃんに、ゴブリンの居場所を教える。
ゆーちゃんは、杖に魔力を込めていた。
「えい!」
ゆーちゃんが杖を振ると、杖の先端から氷の塊が放たれた。
ゆーちゃんが放った氷の塊は、ゴブリン一匹に命中し、爆散した。
「爆散?なんで氷の塊なのに爆発したの?」
「わかんない」
「ゆーちゃん、魔力お抑えて使える?」
「うん」
ゆーちゃんは、再び魔力を込め始めた。
ゴブリンは、一匹がいきなり爆発したので、周りをキョロキョロしている。辺りを気にするくらいならさっさと逃げるか、隠れるかすればいいのに。
そういうところが、自我のない魔物と言ったところだろうか。
「えい!」
杖から、さっきと同じくらいの氷の塊が、ゴブリンに向かって飛んでいく。
氷の塊は、ゴブリンの頭を貫く。
今度は、爆発しなかったようだ。
流石にゴブリンでも、僕達の存在に気付いたようだ。
ゴブリンは、僕たちに向かって猛スピードで突進してきた。
僕は聖剣を取り出し、突進してくるゴブリンの胴を真っ二つにした。
ゴブリンの死体に、浄化の灰をかけて、ゴールド魔石二つとミスリルの角は一つだけ、もう一つは小さいゴブリンの斧。特別なのかな?帰ってからいつきさんに鑑定してもらうか。
む?また視線を感じる?
やっぱり何も感知しない?
「よう、シンの娘」
僕は急に声をかけられてビックリした。振り返って見てみると、白いコートを着た、40歳くらいの男性が立っていた。
そんな、生体感知に引っかからなかったのに!?でも、この男がさっきから僕達を見ていた奴だろう。
「そっちの子供が、禁術を使いまくってる子供だな」
僕は、ゆーちゃんの前に立つ。聖剣を握りなおす。
「あんた何者?なんで、生体感知で分からなかったの?何の用?」
「あーあー、戦う気ねぇから安心しろって。今回は警告しに来ただけだ」
警告?こいつ何者だ!?しかも、さっき僕のことをシンの娘って。
「あんた、お父さんのことを知っているの?」
「ん?あぁ、知ってるぜ。同期だったからな」
同期?さっき禁術がどうとか……まさか…
「俺は時の番人、八番目だ。それに生体感知にいちいち反応されてるようじゃ、時の番人は名乗れんからなぁ」
時の番人?でも、さっき、お父さんを同期と言っていた。
「しかし、シンの娘が、完全甦生魔法の使い手と一緒にいるとはなぁ」
「完全甦生魔法?」
「その子供が使う魔法さ。その魔法は本物の禁術。今までは、個人に対する嫌がらせの身に使っていたが、今回は、リーザードマンたちに対して大規模に使っちまった。それが実は問題でな」
問題?まさか、抹殺対象に選ばれたのか!?
守らないと!?でも、こいつの強さ……強さの次元が違う!?
勝てない…
でも…
僕は、聖剣に闘気を纏わせた。
「まったく、人の話を聞かねぇのは、あいつ譲りか…いいぜ、ちょっと相手してやるよ」
男は、静かに構えた。
空気が重くなる。殺気か?いや、魔力を解放しただけだ。
足に魔力が絡む。
「ほれ、稽古をつけてやるからかかってきな」
退院後ちょっと忙しかったので、二日間、投稿できませんでした。今日から毎日投稿できたらと思います。




