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遺跡三階層

 転移魔法陣で移動してきた先は、まるで魔王城で見た、魔導研究所のようなフロアだった。

 通路の両壁はガラス張りで、その奥には人造されたと思われる、魔物が眠るようにはいっていた。

 数はかなり多く、これだけいるにも関わらず、生体関知を使っても、なにも察知しなかった。

「ここの遺跡では、生体関知もあてにはならんっすね」

 全くだ。何処から魔物が出てくるかも判らず、常に警戒しながら歩くしかない。

「しかし、あのフォズってやつ何があったんすかね?」

「ゆーちゃん、即死魔法に持続性とか遅効性とかあるの?」

「ない」

 良かった。聞いといてなんだけど、そんなものがあったら暗殺し放題だ。

「しかし、不気味な部屋っすよね」

 よいやみが、そう言うのもよく判る。

 ここにいる魔物は、全てが改造されてように、自然に発生したようには見えなかった。

「コイツらが目覚めて、一気に出てきたら、流石に厄介っすよね」

 よいやみが、余計なことを言う。こういうときは、大体その通りになるものだ。

「そういうのをフラグと言うと、女神様が昔言ってましたね」

 そういえば、いつきさんは聖女だから、女神様と交信出来るんだろうか?

 それを聞くと「交信は出来ますけど、大体が「今から行くよ!」って感じで、神託は目の前で話されますから、神託というより伝言なんですよね」ということらしい。


 暫く警戒しながら進んでいく。

『はぁーはっはっは!!』

 さっき死んだ奴の声が聞こえてきた。

 生き返ったのか?

 さっき、不自然に声が途切れた時に、生体関知を使ってみたら、確かにフォズは死んでいたはずだ。

「よいやみ、さっき、あいつ死んでたよね?」

「間違いないっす」

 僕達二人の話にゆーちゃんが反応してきた。

「ころしほうだい?」

 首を傾げ、かわいい顔で恐ろしいことを言っている。

「・・・・・・・・・」

 いつきさんは、顎に手を当てて何かを考えている。

『私を無視しないでもらおうか!?さて!!君達には僕のかわいい人造魔物達と遊んでもらおうか!!』


 ガラスの割れる音と共に、魔物が飛び出してくる。

 その姿は、色々な魔物の部位を無理矢理引っ付けたような姿だった。

「キメラですか。趣味の悪い」

 いつきさんは、嫌悪感を露にして顔をしかめていた。

 通路を埋め尽くす勢いで魔物が沸いてくる。

 よいやみは目の前の魔物の頭を、躊躇なく吹き飛ばす。

 魔物は倒されると砂になる。

「ねぇ、こんなときに聞くのも何なんだけどさ、この遺跡に入ってからあんたの魔物の倒し方、変わってない?」

 普段は、首の骨を折るなどして、出来るだけ血を見せないように魔物を倒しているのに、この遺跡では問答無用で頭を吹き飛ばしたり、腹に風穴を空けたりしている。

「それを今聞くっすか?まぁ、いいっすけど。あれっすよ、血をみるのが嫌いっすから、普段は出来るだけ血を出さずに倒してるだけっす。ここの魔物は血が出ないから、雑に倒しても構わないっすからね」

 成る程。よいやみにもかわいいところがあるもんだな。

 僕も剣を抜いて、魔物の首を狙う。ちなみに僕は、普段から魔物の急所を狙って斬っている。

 そっちの方が楽でしょ?

「いつも、お二人に戦ってもらうのも悪い気がしますね」

 いつきさんは、何かの魔法を詠唱し始めた。

「漆黒の海に消えろ《ブラックホール》」

 いつきさんが、魔法を唱え終わると、なにもなかった空間に黒い渦のような物が現れた。

 黒い渦は、魔物のだけを吸い込んでいく。

 物の数秒で、通路に溢れていた魔物が全ていなくなっていた。

「ふぅ、終わりですね」

『ば、バカな!!?最強の空間魔法ブラックホールだと!?』

「そうですよ?なにかおかしいですか?」

『おかしいだろうが!?何故、人間ごときが《ブラックホール》を使える!?神の領域魔法だぞ!?』

 僕達も吃驚だよ。まさか、いつきさんがの魔法が、これ程強力だとは思わなかった。

「とは言っても、私にはよいやみさんやゆづきちゃん程の魔力は高くないので、乱用は出来ないんですけどね」

 それでも、一撃であれは反則だろう。

 フォズも黙り込んでしまった。

───────────────────────


 く、くそぅ!?なんなのだ、あいつらは!!

 あの黒髪と金髪の小娘二人さえ気を付けていればなんとなると思っていたが、あの魔導師の女!?神の領域魔法だと!?

 どうする?私では勝てないかもしれない。いや、一人いるではないか、役に立ちそうな子供がいたな。

 あれを、人質にとればあいつらもなにもできないはずだ!!


 よし、勝機がでてきたぞ!!


 もしもの時には、アレもあるからな。

 私に、もう負けはない。

「ふははははは!!よかろう!!貴様らに真の地獄を見せてやろう!!そのまま、進んでくるがよい!!」


───────────────────────


『進んでくるがよい!!』


 さっきまで、焦っているように感じたが、急にテンションを上げてきたな。

 おそらく、下らない案でも出てきたんだろう。

 

 僕達は言われた通りに、長い通路を進んでいく。

 途中で、魔物に襲われたりもしたが、一撃必殺で魔物を倒していく。

 出てくる魔物も、姿はともかく、強くはないんだよな。

 二階で戦ったガーゴイルが出てきてたら厄介だっただろうけど。


 暫く進むと、巨大な魔方陣の書かれた広間に出た。

 その魔方陣の中心部分に、一人の男が立っていた。


 男は眼鏡を掛けた神経質そうな顔をしていた。

「ようこそ、私がティタン様に従う魔将フォズである」

 

 僕は、フォズの姿を見て確信した。


 魔将フォズは・・・・・・・・・人間だ。

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