救出依頼
少しだけ書き直しました。
いつきさんがパーティに加入してから、一ヵ月が経った。
いつきさんが仲間になった事で、薬草が六千ルーツで買えるようになった事は大きい。
本当はタダにしてもらいたかったんだけど、その事をいつきさんに話すと、三時間も説教を喰らったのは良い思い出だ。
僕も、アロン王国王都に来てから、早、三ヶ月、勇者にもだいぶ慣れてきたと思う。
「みつきー。さっき、食べ歩きをしていたら、リリアンさんと偶然出会って、みつきに伝言を頼まれたっす」
「え? 何?」
「冒険者ギルドにすぐに来てくれとの事っす」
「え? 今日は、僕達オフなんだけど? ちゃんと言った?」
「言うたっすよ。緊急らしく、あしも伝言を伝えるために、途中で帰ってきたんすから」
よいやみは、少し不満そうに「まだまだ食べたかったっす」と愚痴を言っていた。
僕はこの事をいつきさんに伝えるために、お店へと向かう。
「嫌です。今日はオフです」
いつきさんに、リリアンさんからの要請を伝えると、即拒否された。
「よいやみさん! せっかくのオフに、仕事なんて取ってこないで下さい」
「あしが取ってきたんじゃないっす!! リリアンさんに捕まっただけっす!! 断固、抗議するっす!!」
あー……。また、始まった。
僕達がパーティを組んでから、よいやみといつきさんは、よく言い合いをしている。
別に仲が悪いというわけではなく、よいやみが余計な事を言って、いつきさんに怒られるというパターンだ。
とはいえ、このままだと日が落ちてしまう。ここは僕が間に入らなきゃ。
「僕とよいやみの二人で行ってくるよ。ゆーちゃんも寝てるから起こしたくないし」
「下らないクエストなら、拒否してくださいね。人助けなら、まぁ、受けてもいいですよ」
「気になるんなら、来ればいいっすよ!」
「気にはなりますが、オフの日は店の売り上げの方が大事です!!」
いつきさんは、なんだかんだと言って、利益重視だから仕方が無い。流石にオフの行動には、文句が言えないので、僕とよいやみは渋々ギルドに向かった。
ギルドの中に入ると、クレイザーが新人冒険者達に、自分の武勇伝を語っていた。
「そこで、僕が輝いたんだよ!!」
いや、どこで輝いたんだよ……。相変わらず、意味の分からない奴だ。
僕が冷めた目で、クレイザーを見ていると、新人冒険者に気付かれた。
「あ!? 黒姫さんだ!?」
新人冒険者がこっちへ走ってきた。
「黒姫さん、いつも活躍してるのを聞いてます!! 憧れてます!!」
いや、僕だって三ヶ月前は、ただの小娘だったんだよ? 君達と同じ新人だよ? あと、黒姫ってやめてくれないかな。恥ずかしい。
とはいえ、憧れられているのを無下には出来ないから、愛想笑いをして握手をする。それを見て、クレイザーは歯ぎしりをしている。
新人冒険者達やクレイザーと話していると、奥の部屋からリリアンさんが出てきた。
「みつきちゃん! 来てくれたの!?」
「いや、まぁ、来いと言われれば来ますよ? オフの日でもね……」
僕は恨みたっぷりにリリアンさんを冷めた目で見る。
「ごめんね。で? いつきちゃんとゆづきちゃんは?」
「ゆーちゃんは寝ています。いつきさんはオフだから、拒否されました」
「そ、そう。取り合えず詳しく話すから、奥の部屋に来てくれる?」
僕とよいやみは、リリアンさんに案内されて、受付奥にある部屋へと、案内される。
リリアンさんに案内されて奥の部屋に入ると、初老の男性が仕事をしていた。
「ギルマス、みつきちゃんが来てくれました」
この人がギルドマスターか。確かアリ姉が初めて来たときに、王様と一緒にいた人だよね?
「おぉ!すまんすまん!そこに座ってくれ」
僕達がソファーに座ると、対面するようにギルドマスターが座った。
「俺が王都のギルドマスターをやっているオルテガだ。確か、以前にあったよな」
「あ、はい。みつきです」
「よいやみっす」
軽い挨拶をした後、オルテガさんは数枚の報告書をテーブルの上に置いた。
「お前らは、最近発見された遺跡の話を、知っているか?」
遺跡? そう言えば、いつきさんが昨日の夕ご飯の時に話をしていたな。
なんでも、若い冒険者が遺跡を発見して、遺跡を調査したらしいのだが、中の魔物が強くて引き返してきたとか。
中に、財宝があるかもしれないから行こうかなと、話していたところだ。
「知っていたか。その遺跡だがな、高ランクの冒険者に探索を行かせたんだが、そいつらでさえ二階層までしか行けなかったそうでな……。そうなると、王都のギルドで遺跡を突破できそうな力があるのは、お前らかバトスのところしかなくてな」
勇者バトスとそのパーティの話は、冒険者達がよく話しているので、噂程度に聞くが、まだ会ったことはない。
強さもそうだが、何より冒険者や国からの信頼が高いとの事だ。
しかし、僕達がそのバトスさん達と同等とか、意味が分からないんだけど。
「でだ、バトス一行にこの遺跡の調査を依頼したんだがな……。もう、四日間連絡がない」
「四日くらいなら、あしらも連絡せずに、クエストをやっている事はあるっすよ?」
よいやみが言ってる事は正しい。冒険者は依頼で、遠くの町に行く事は良くある。四日くらい連絡がないのも当たり前じゃないのかな?
「いや、こういった調査の依頼の場合はな、毎日定刻に報告する義務がある。連絡用の魔宝玉が壊れているのなら、それでいいが、もし、彼等に何かあったとなると、王都そのものが危険になってくる」
王都が危険? 確かに王都最強の勇者バトスさんがやられたとなると、多少の混乱はあるだろうけど、なぜ王都にまで危険が及ぶのだろう?
僕が沿いの事で首を傾げていると、バトスがいなくなった場合の事を、リリアンさんが教えてくれた。
「勇者バトスは強いわ。彼を殺せる程の魔物が王都の近くにいて、その魔物が牙をむけば、王都の冒険者達じゃ太刀打ち出来ない。そうなれば、王都の冒険者ギルドが終わる」
なるほど。城の兵士は城を守るのが仕事。軍を動かすのには時間が掛かる。冒険者ギルドが一般市民を守る身近な存在なんだ。
「そこでだ! お前達に緊急クエストを依頼したい。バトスの救出に向かってほしい」
「最悪だった場合はどうするっすか?」
最悪……。つまり死んでいた場合だ。冒険者である以上あり得ない話ではない。
「バトスの事だから死んではいないと思うが、もしもの時はその場に埋葬してやってくれ。聖剣だけは持ち帰って欲しい……」
僕は無言で頷いた。
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