聖女
少し書き直しました。
よいやみが、リュウトが崩壊した後の砂をじっと見ている。
たまに、足で砂を蹴っているようだ。
「何しているの?」
「リュウトからは、何も手に入らなかったっすね」
「人間や魔族や亜人に、浄化の灰を掛けても、何も出ませんよ? それに魔物変化症にかかったものは、砂になるので素材も魔石も残しません」
「そうなんすか!? 結局、魔物化した下衆を倒してもなんの意味もなかったんすね」
「随分、何も残らなかったことを気にしているね」
「せっかく戦闘したんすから、何かしら出るとは思ったんすけど、せめて魔石だけでも、欲しかったっすね」
あの下衆の一部が欲しいか? 要らないだろう。
「よいやみ。あいつから、何が出たとして、それ欲しい?」
僕がそう聞くと、よいやみは腕を組んで考えた後、「あー、要らんっすね」と、自分で言って、頷いていた。
しかし、気になることもある。あの魔物変化症は、女神の神罰という事だが、あのままリュウトが暴走していたら、女神はどう対処したんだろう?
「あの場に、みつきさんがいたのが、大きいでしょうね。女神セリティア様からすれば、勇者も十分可愛がる対象ですから」
なんで僕が可愛がる対象なんだ? 確かに、前の職業は《女神に選ばれし》とかついてたけど。今では《黒姫》だよ。自分で言ってて、恥ずかしくなってきた。
「ゆーちゃんのとこに戻ろうか」
僕達三人は、誰が使っていたのかわからないが、遺品である槍だけを持って、リザードマン達が居たところに戻った。
「ゆ、勇者様が戻ったぞ!!」
「族長は!?」
戻った僕達のところに、リザードマンの二人が駆けつけてきた。
僕は拾った槍を渡して。
「そこに族長がいたのかはわからないけど、この槍が落ちてた。もし、これが族長のなら間に合わなかったよ。ごめん……」
僕はリザードマン二人に頭を下げた。
「あ、頭を上げてください!!」
「僕も、貴方達を襲った男と同じ勇者だよ? 憎くないの?」
リザードマン二人は、困惑しながら僕に。
「貴女は、我々が襲われたとわかった時、誰よりも怒っていらっしゃった。真っ先にあの者を追いかけたのも貴女だ。貴女はあの者とは違います。貴女こそ、本物の勇者様です」
リザードマン達は、そう言って笑ってくれた。
「それに、貴女は救世主様の大事な人と聞きましたので」
「救世主様?」
「我々を助けて下さった、あの御方です」
リザードマンが掌を差し出した先に、ゆーちゃんがふんぞり返って座っていた。
「くるしゅーない」
「なにやってんの? ゆーちゃん」
ゆーちゃんは、僕を見つけると走ってこっちに来た。
「なんか、あがめてくれる」
そりゃ、リザードマン達からすれば、殆どの仲間を殺されて、一族滅亡の危機に、甦生魔法で、奇跡に近い事をしてもらえれば、救世主と変わらないだろう。
「ゆづきちゃん、また甦生魔法を使ったね。リスクが大きいからダメって言ってるでしょ?」
少し怒りながら、ふんぞり返っているゆーちゃんの肩に手を置いた。
ゆーちゃんはビクッとした後、いつきさんを睨んで威嚇しだした。
「おまえがなんでここにいる」
「今回の件は、女神様の神罰だから、聖女の私がいるのはおかしくないでしょ? それより、甦生魔法は禁術だからあまり使っちゃダメって言ってるでしょ?」
「うるさい」
今の会話だと、いつきさんはゆーちゃんの甦生魔法を知ってるってことになるよね。
「いつきさんはゆーちゃんの魔法のこと全部知ってるの?」
「知ってますよ。ゆづきちゃんは妹みた……「いつきさん!!ゆーちゃんを僕に下さい!!!!」……は?」
「みつき、なに言ってんすか?」
ゆーちゃんがいつきさんの妹ならば、僕の妹にする為に許可を得る必要あるでしょ? と言ったらよいやみに凄く可哀想なものを見る目をされた。何故だ?
「こんなのあねじゃない」
「みつきさん? 血は繋がってませんよ?」
いつきさんから、ゆづきちゃんは、幼馴染みで妹の様に可愛がっていたらしく、ゆーちゃんとしては、いつきさんに、よく怒られるので嫌いのようだ。
なんてこった。早とちりだったとは。
「ゆづきちゃん。使ったものは仕方ないとして、全員甦生できた?」
ん? ここに居たヒトは、全員甦生できたんじゃないの?
「ぜんぶはむりだった」
「わかったわ」
いつきさんの話によると、体の半分以上がなくなっているものや、未練がなく、心が死んでるものは甦生できないそうだ。
いつきさんは、リザードマンの住み処の中心に立ち、祈るように手を組んだ。
「甦生できなかったヒトは残念ですが、せめて安らかに眠れるように」
いつきさんが、祈るようにそう言うと、いつきさんの体が優しく光り、いくつかの光の玉が天に昇っていった。
よいやみが「人間性はアレっすけど、本当に聖女なんすね~」と言ったら、いつきさんが、よいやみを凄く優しそうな顔で見ていた。よいやみはそれが怖かったのか、黙ってしまった。
祈り終わったいつきさんが、リザードマンの一人を呼んで「これから、どうしますか? 私としては、人間と手をとっていただきたいと思っているんですが?」と言い出す。
リザードマンはそれを聞いて、驚いた顔をしていた。そりゃそうだろうな。さっきまで、人間の勇者に襲われてたんだし、かといって人間に助けてもらったのは事実、迷うのは当然だ。
「皆さんで話し合って下さい。もちろん、今まで通り、不干渉でも構いません。手をとる決断をしたとしても、隷属化しようとはしませんよ。したとしたら、怖い勇者様達が人間に牙をむきますから」
まるで、僕達が狂犬みたいに言われているが、多分、僕ならそうするだろうな。
「私達がここを去って、暫くすれば国から使者が来ると思います。そのときまでにある程度の決断をお願いしますね。話し合いもあると思うので」
そう言うと、いつきさんはこっちを向いて「じゃあ、帰りましょうか?」と言って、詠唱を始めた。
光り輝いたと思ったら、いつきさんの店の中にいた。
どうやら、先程の詠唱は転移魔法らしい。
「あ、一緒に頑張ってくれてた人達を忘れてたっす」
よいやみがそんなことを言い出したけど、いつきさんは「彼らの事は忘れましょう」とにこやかな顔で言っていた。この人は、本当に聖女なのだろうか?
「それ以前に、死んでないっすけどね」
と、よいやみが冷静に突っ込んでいた。
「とりあえず、リリアンさんに報告に行こうか」
「そうですね。私も行きます。ツケを払わない冒険者に、取り立てもしなきゃ行けませんし」
口角をつり上げ、聖女と思えない笑顔をしたいつきさんが僕の肩に手を置いた。その笑顔が怖かった。
今後は書きあがったら投稿します。




