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勇者の品格

 

 アリ姉が魔大陸に帰った翌日。僕達は冒険者ギルドの要請があり、朝早くから冒険者ギルドに来ていた。

「ねむい」

 そう言って、ゆーちゃんはソファーでで寝ようとしている。

「依頼の説明とか受けるだけなら、ゆーちゃんが寝てても問題ないかな。起こしたら可哀想だし」

「相変わらずみつきはゆっきーには優しいっすね」

 リリアンさんが来るまでの間、よいやみとクエストでの立ち回りについて話してたら「やぁ! みつきちゃん!」と不快な声で呼ばれた。


「ウザイのが来たっす」

「酷くないかい!? よいやみ君!!」

「何か用?」

 僕が無愛想にそう言うと、クレイザーは苦笑しながら、僕達に忠告してきた。


「今日は、僕や君以外の勇者がもう一人来るんだ、君は勇者についてどう思う?」

 僕はクレイザーの質問の意味が良くわからなかったが、勇者についてどう思うか……。正直、どうとも思わないのが僕の答えかな?

「たまたまクジ引きで選ばれただけの一般人でしょ? 選ばれた段階では、なんの価値もないよ。勇者バトスさんのように、アロン王国の国民達のために身を削って活動して初めて、本物の勇者と呼ばれるんだよ。……多分」

 だから、僕はまだ本物の勇者じゃないと思う。なろうとも思わないけど。

「そうだね。みつきちゃんは僕なんかと比べ物にならないほど強いし、何より心が強いと言える」

 なんだ、こいつ? いつものウザさがなくて、今日は気持ち悪いぞ?

「でもね、中にはいるんだ。僕達はくじ引きで選ばれただけなのに、勇者の地位を盾に好き勝手やる勇者も」

 そりゃ、いるだろうな。僕やクレイザーにバトスさん。僕達は、冒険者達とわりと仲が良い。この二ヶ月で知ったが、勇者は、冒険者にあまり好かれてないらしい。

 勇者は自分は選ばれたのだと、冒険者をまるで道具のように扱おうとし、仮に男の勇者なら冒険者の女性仲間を奪ったりと好き勝手やってるらしい。

 実際、婚約者を奪われたと言う話も聞いた。

 そんな話をクレイザーとしていると、誰かがクレイザーの肩を組んできた。

「クレイザーじゃねぇか!! いい女連れてんじゃねぇか!? 紹介しろよ!!」

「げっ! リュウト」

 ドゴォ!!

 なんだ、こいつ? いきなりクレイザーを殴りやがった。

「てめぇ、誰に口聞いてんだ?」

 クレイザーはお腹を押さえ蹲った。

 殴った男の後ろには、何人もの女冒険者がにやにやしてクラウザーを嘲笑っている。ムカつく顔だな。でも、そういう事か……。

 周りの冒険者達が、リュウトと呼ばれた奴を睨んでいる。

「なんだ? てめぇら、勇者様の俺に文句あんのか?」

 なるほど、こいつがクソ勇者か。


「お前ら、いい女だな? 俺が彼女にしてやるよ!」

「あぁ?」

 僕は、こういうカスが大嫌いだ。殺気による威圧をリュウトに向ける。

「話しかけないでくれる? 僕はあんたみたいな下衆が、この世で一番嫌いなんだ。クレイザー大丈夫?」

「気の強い女は嫌いじゃないぜ。ベッドのなかでいつまでその態度で……」

 ズンッ!!!

 殺気をさらに強める。僕の周りの空気が一気に重くなった。

 周りの冒険者、下衆の後ろのハーレム軍団、下衆、全員が青褪めている。

「みつき、殺気が駄々漏れっすよ? まぁ、あしもこのゴミをどつきまわしたいっすけど」

 そういうよいやみだって、殺気をまき散らしてるじゃないか。

「て、てめぇら!! 勇者である俺に逆らうってのか!?」

「残念でした。クレイザーも勇者だよ。更に僕はあんたよりも格上の勇者、よいやみは僕の仲間、あんたみたいな下衆と一緒にされたくないし、あんたに従う義理もないね。さっさと勇者らしい、クエスト受けて死んできなよ。どうせ勇者ってだけで、女を騙すしか能がないんなら死んだ方が勇者らしい仕事が出来るよ。いや、どうせそれしかできないんだから、さっさと死んできたら?」

「俺は勇者だ!! クエストなんざゴミ冒険者共に、やらせときゃいいんだよ!!」

 あ? こいつ、もしかして選ばれてからクエスト受けてないのか? 後ろのハーレム軍団も「そうよ!」とか言ってるし、本当にアホ軍団なんだろうな。

 僕は、冒険者達を視線を移すと何人かが頷いていた。そう言うことか。

 勇者の地位を盾に好き勝手やっても許されるって訳はない。


「おい!! 俺に逆らうやつは、身体で教えてやるよ」

 リュウトが、下衆のような顔で僕に迫ってきた。

 いいよ。売られた喧嘩は買ってあげるよ。

 僕は、飛び掛かってきたリュウトの背後に一瞬で回り込み、蹴り倒した。さて、痛い目にあってもらいますか。


「あ、ががが……」

 喧嘩にすらならなかった、僕は執拗に顔だけを殴った。あと、股間も蹴り潰そうかと思ったが、僕の足が汚れるので、リュウトから剣を奪い取って柄で叩き潰しといた。

 リュウトは股間を押さえながら、腫れた顔で涙を流して、涎を垂らしている。汚い顔だなぁ。

「無様だね。勇者リュウト。さっきから、あんたを殴ってるけどさ、あんたの言うゴミ冒険者なら、避けるか受け止められるくらいの力でしか殴ってないけど、なんであんた反撃はどころか、避けることすら出来ないの? あんた、本当は弱いんじゃないの?」

「お、おい……! お前ら、俺の女はだろ!? 俺を助けろよ!?」

 弱い勇者様(笑)は自分のハーレム? の女冒険者に助けを求めたが、「弱すぎっす。この程度で威張り散らしてたんすか? アホ以外のなにものでもないっすよ?」そこには、よいやみによってボコボコにされた女冒険者達が転がっていた。

 僕はふらついている、リュウトの髪の毛をつかんで「クレイザーはアホだけど、あんたより遥かにマシだね」と言い、髪の毛を引きちぎってやった。

「みつきちゃん!! これは一体なんなの!?」

 リリアンさんが、慌てたように奥の部屋から出てきた。

 ……リリアンさん。慌てたふりしてるだけだ。口角が微妙につり上がったよ? 終わるまで待ってたね?

 

 ボロ雑巾のようになった、リュウトに仲間だった女冒険者達がふらつきながら、近寄っていった。

「手を貸してくれ。ゆ、勇者の俺をこんな目に合わせやがって、もうこんな国、み、見棄ててやる」

 女冒険者の一人が、リュウトの手を払いのけて、睨み付けながら「あんた、口だけだったのね。どうせ、あんたも私達もこの国にはいられないわよ。あんたに誘惑されて、仲間や彼氏を裏切ったんだからね。私達は勝手にこの国を出ていくわ。さようなら!」

 そう言って、女冒険者達は去っていった。ざまぁないな、と思ったが、そんなに簡単に手のひらを返せるものかな? と思った。

 でも、何人かの冒険者が追いかけて出てったぞ? 復讐か?

「復讐だけじゃないと思うけど、ま、それは彼等が決めることだしね」とリリアンさんが言っていた。 

 僕には、良くわからなかった。

 

 勇者リュウトは、今まで散々な目に遭わされてきた冒険者達に連れていかれた。


「ひーる!」

 突然、ゆーちゃんの声が聞こえてきたので振り替えると、ゆーちゃんがクレイザーにひーるを掛けていた。

 ひーるを掛けられたクレイザーは光を放ちながら、痙攣していた。

 あれは一体、なんの効果が出ているんだろう?

 というか、今回はクレーザーはまじめだったから止めてあげて。


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