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勇者 黒姫

少し書き直しました。


 王様の命令(王命の方が貴族を黙らせるのはいいらしい)で鬼族と人間が共存するようになってから、二ヶ月がたった。

 村の代表になったハグロは鬼族はもちろんのこと、村人からの信頼も厚くなり、国から派遣されているシドさんの部下の人とともに、村の発展に力を入れている。


 この村に僕達が残っても仕方が無いと、早々に王都に帰ってきていた。

 この二ヶ月、ゆーちゃんのひーるに悩まされたり、よいやみの大食いに怒りを覚えたりしながらではあったが、いろいろなクエストをすることによって、王都の事や冒険者の事が良く分かって来た。


 今日はクエストをお休みしてそれぞれ個人的にしたいことをするようにした。僕は町の探索がてら、いつきさんの店に必要なものを買いに来た。

「いつきさん。薬草三十個、毒消し草二十個ちょうだい」

「みつきさん、いつもありがとうございます!」

「いつきさん。少し安くならない?」

「なりません。合計44万ルーツです」

「ぐっ……はい……」

 僕は、昨日受けたクエストの報酬で薬草などのお金を払った。

「みつきさん。そろそろ、ちゃんとした僧侶を雇った方が良いんじゃないんですか?」

 いつきさんは至極真っ当なことを言ってくる。確かに僕達パーティの主な出費は、よいやみの食費もあるが、薬草などの薬類が圧倒的に多い。でも……。

「そんなことしたら、ゆーちゃんが可哀想じゃない」

「みつきさんは本当に、ゆづきちゃんが好きですよね」

 たとえ貧乏になっても、ゆーちゃんを悲しませたくはない。

 それにお金はクエストを受ければいいんだし。

「いつきさんが仲間になってくれれば、解決するんですけど?」

「嫌です。面倒だから嫌です」

 いつきさんを仲間に誘って断られる。これで何度目だろう?

 でも、諦めない……。僕はそう決意してお店を出る。


 いつきさんに振られたあと、僕は町中を歩いていた。

 ゆーちゃんは、今日は宿屋で寝るそうだし、よいやみは食べ歩きをするとか言っていた。

 今日1日フリーの日だから、こうやって街中をフラフラあるいているんだが、なにもないなぁ。冒険者ギルドにでも暇つぶしに行こうかな?

「のぅ、そこの黒髪のちんまいお嬢ちゃん」

 僕も王都に、慣れたものだ。二ヶ月もたてば、どこにどんな店があるのかもわかる。

 とはいえ、お金がそんなにないから贅沢はできないんだけどね。

「なぜ、無視するのじゃ!?」

 うん? もしかして僕を呼んでいたのか? 失礼な!! 僕は少し小さいがちんまくはない!

「婆ちゃん。僕はちんまくないよ? 目が腐ってんじゃないの?」

「口の悪い嬢ちゃんじゃなぁ……。まぁ良い。嬢ちゃんが《黒姫みつき》じゃろ?」

 く、黒姫ぇ!? なんだ、その恥ずかしい呼び方は!?

「僕がみつきなのは間違いないけど、黒姫ってなに? 気持ち悪い」

「嬢ちゃんがのことじゃ、嬢ちゃんいくつじゃ? その年で二つ名は凄いことなんじゃがなぁ」

「僕? 16歳だよ。ただの村娘に黒姫ってアホじゃないの? その二つ名とかいうのは誰がつけたの?」

「嬢ちゃんに助けてもらった者が、嬢ちゃんの黒髪と容姿を見てそう呼び出したらしいぞ?」

 助けたといっても、クエストを受けただけなんだけど……。

 町の人が言ってるなら文句が言えない。でも、町中で人に会っても、誰も黒姫なんて恥ずかしい名前で呼んできたことないよ?

 なんでだろう? なにか、悪意を感じるんだが。

 しかし、二つ名か。クレイザーのアホが聞いたら、またうるさくなりそうだな。


「んで? 婆ちゃん。声かけてきたけど、僕に何か用?」

「いやな、うちの大将よりも強いと噂されている勇者を見てみたくなってのぅ」

「大将?」

「勇者バトスじゃ」


 勇者バトス? ……。王様が最も信頼する勇者だったかな? リリアンさんがそんなこと言っていたような……。

 会ったことはないけど、シドさんに聞いた話だと王様が勇者と認めているのは数名しかいないとか言ってたな。

 バトスさんはその筆頭だと聞いた。

 クレイザーのアホとか僕なんかは認められるわけないよね。むしろ認めて欲しくないよ。

「こんな小娘の僕が、王様に認められている勇者バトスさんより強いわけないじゃない。何言ってんの? ボケているの?」

「ふぁふぁふぁ。聞いてた通りじゃな。黒姫は自分を過小評価しすぎじゃ。後、さっきから口が悪すぎるのぅ……」

「アホらしい。用がないんなら僕は帰るよ。それと、黒姫って呼ぶな! 恥ずかしい!」

 町中を探索といった気分じゃ無くなったので、僕は宿に帰ることにした。


≪はる視点≫

 わしは、勇者バトスの仲間の一人、賢者はる。

 わしとの会話に不快感を持った黒姫の後ろ姿を見送りながら、思う。あれが陛下の言っていたバトス以上の勇者……ヒヒイロカネの勇者か。

 正直、陛下にこの話を聞いたときは信じることなど出来なかった。わしは仲間として、バトスは力も心も誰にも負けない勇者だと思うておる。

 わしは、冒険者ギルドに行きその勇者のことを調べてみた。

 ギルマス専用の魔宝玉で見せて貰ったのだが、二つ名まで持っておるとはな。ただ、今まで幾人もの勇者を見てきたが、たった二カ月で二つ名を持つことになった勇者を見たことはない。

 わしはその勇者黒姫に興味を持った。

 で、実際にワシの目で見ることにしたわけじゃが、実際に見つけてみると、黒髪を後ろで縛った、小柄の可愛らしい女の子じゃった。

 本当にこの嬢ちゃんが黒姫なのかと思い、わしの持つ『魔法の目』で強さを見てみたが、まず思った事は……。なんじゃこの娘は!!? だった。

 この世界には三つの特殊な目があると言われておる。

 一つは女神の目、相手の人となりを見破る目らしい。貿易ギルドのゲイルも弱いながらこの目を持っておるようじゃ。

 二つ目は、魔眼。相手の隠された能力を見破る最強の目じゃ。今のところ、ワシの知る限りは誰も持っておる者を見たことはない。噂ではどこぞの魔王が持っておると聞いたことがある。

 最後は魔法の目、相手の強さを見破る目じゃな。これは、ある程度修行を行えば会得できる一般的な目じゃな。

 魔法の目で黒姫を見た結果は、バトスを遥かに超えておった。しかし魔力は感じられなかった。しかし、何故かはわからぬが、背筋が凍り付くような強さを感じた。あんな化け物はとある国の姫君を見たとき以来じゃ。

 おっと、見た目は普通の可愛らしいお嬢ちゃんを化け物とは可哀想じゃったな。


「はる婆! そろそろ次のクエストにいくぞ!」

「わかったわぃ」

 バトスが迎えに来たよったわい。わしはゆっくり立ち上がった。

「バトスは、黒姫……。勇者みつきをどう思っておるのじゃ?」

「あぁ? 陛下の言っていた勇者か? 別にどうとも思ってねぇよ。陛下が俺以上って言うならそうなんじゃねぇのか? それに、歳を食った俺達じゃ、魔王に勝つには体力不足で不可能だしな。それでも、陛下は俺達を大事にしてくださっている。それだけで、この国のために働くってのも良いもんだろ?」

「そうじゃな」

 わしら、勇者バトスパーティであるパリオットの皆は、バトスのこういう性格に惹かれ集まっておるからな。

「若い奴等が頑張ってくれるならそれで良いさ。ほら行くぞ!」

 そう言うと、バトスは歩き出した。わしは年寄りなんじゃから、お主の歩くスピードについていくのが大変なのじゃ、ゆっくりいかんかー!


≪みつき視点≫

 全く、なんだったんだ? あの婆ちゃんは。

 なにかを見透かされてるような目をしてたけど、それは良いとしても、黒姫ってなんだよ!? 恥ずかしい!?

 僕は、恥ずかしい気持ちが大きくなって早足になっていた。


「みつき~。そんなに急いでどこ行くの~?」

 え?

 ちょっと待って!? 後ろから、聞こえちゃいけない声が聞こえてきたような……。

 いや、あの人がこんな所にいるわけがない……空耳だ。

「ちょっとぉ~。勇者になったからって、ワタシとみつきの仲になんの変わりないわよねぇ~。なんで無視するの~」

 いや……。空耳じゃないな。

 僕は、おそるおそる振り返った。

 振り返った先には、僕のよく知る女の人が立っていた。

「みつき~。久し振り~。連絡くれないから寂しかったし、妹に会いたくて、つい来ちゃった」

 この人は絶対ここにいちゃいけない人だ……。

「何でここにいるの!? アリ姉!!」

 アリ姉。魔大陸にあるヴァイス魔国を統べる、魔王アリス・ヴァイス。

 人間の国であるアロン王国に魔王が来るなんて、誰も想像をしないだろうがアリ姉はここにいる。

 なんでか知らないけど、いやな予感しかしないんだけど……。


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