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鬼と人

少し書き直しました。


 僕は思いついたことをリリアンさんに伝えようと、役場へと戻った。とその前にアホ勇者はどうなったかな?

 クレイザーが寝ていたところを見てみると……。僕はまさかの光景に目を疑う。

 アホ勇者クレイザーの全身が光り輝いているのだ。

 いや、比喩表現とかそういうのではなく、物理的に光っている。正直、気持ち悪い。


「きらきらにふさわしい」

 ゆーちゃんは、光り輝くクレイザーを指差してニヤニヤしている。

「あしでも、引くっすわー」

 よいやみは、ドン引きしている様だった。 

 僕が役場に帰ってきたことに気付くと、二人が僕の所に駆け寄ってくる。

「ねぇ、あれなに?」

「あぁ、あれはっすね」

 よいやみが事の経緯を最初から教えてくれた。

 まず、ゆーちゃんが役場に入ってきて、それを見たクレイザーが逃げようとしたそうだ。

 まぁ、勝手に動かれても困るからということでよいやみが捕まえたそうだ。

 捕まって泣き叫ぶクレイザーに、ゆーちゃんはひーるを()()()使ったそうだ。

 一回目は毒にかかったらしく血を吐いていたと、二回目はただ苦しむばかりで何が起こったかまではわからないと、三回目は回復効果のない回復をし、四回目で全身が光ってしまったと。それ以降は光が強くなるばかりだったそうだ。

 

 うん。全く意味がわからない。特に三回目の回復効果のない回復ってなんだ?

 ともかく害がないのなら、この光ってる奴は放っておこう。僕は回復魔法で治療をして回っている、リリアンさんに声をかけた。

「リリアンさん、ちょっと話があるんだけど。時間ある?」

「もう少しだけ待っててくれる? あと、二人だから」

「うん。わかった」

 怪我人に治療をしているリリアンさんを待つ間、物理的に光るふざけた勇者を見ていた。

「ははは!! 僕こそ光の勇者だ!!」

「そうっすね、別の意味で光る勇者っすね」

「君は僕の素晴らしさがわかるかい? ならば? 僕の嫁になるかい?」

「頭蓋骨、砕かれたいっすか?」

「ひ、ひぃ! じ、冗談じゃな、ないか!? そんなに怒らなくても」

「あしは、低レベルな冗談は殺意がわくほど嫌いっす。ゆっきー、鼻と股間だけ光るようにはできないっすか?」

「んー? やってみる、ひーる!」

 流れるように、そして何の躊躇いもなくひーるを使うゆーちゃんと、更に光るならと受け入れる馬鹿勇者。

 なんだ? あいつら……。

 僕がボーっと勇者を見ていると、勇者の股間が小規模爆発を起こした。

「ぎゃあああああ!!」

 勇者は股間を押さえてのたうち回る。流石に哀れになってきたな。

 というより、あんな下品なものをゆーちゃんに見せるわけには。と僕はゆーちゃんの手を引きに行こうとする。

「みつきちゃん、おまたせって何があったの?」

 リリアンさんがタイミングよく治療が終わって、僕達の所へと戻ってくる。

「あのアホ勇者の事はどうでもいいとして、オーガの事で思いついたことがあるんすけど」

「オーガの事で?」

 僕は、さっき思い付いたことをリリアンさんに話してみた。

 僕の話を聞いたリリアンさんは、少し困った顔で「陛下ならきっと賛成してくださるけど、国の幹部連中がどういうかしらね。まぁ、それは陛下に頑張ってもらいましょう。わかったわ。陛下に連絡を入れておくわ」と魔宝玉を取り出す。

 その魔宝玉の事を聞くと、連絡用の魔宝玉だそうだ。便利なものがあるものだ。

「じゃあ、僕はハグロのところに行ってくるよ。よいやみ! この仕事終わったら腹一杯食わしてやるから、村の防衛頼むよ!」

「まかせるっすよ!」

 そう言って、アホ勇者を蹴りながら答えてくれた。

 さっきの戦闘で思ったが、よいやみはかなり強いと思う。だから村の護衛も楽だろう。

 村を出発する前に、気になることがあったので、村人に話を聞いて回った。

 村人から帰ってきた答えを聞いて、唯一心配していたこともこの村なら大丈夫と安心した。


 僕は、ハグロと出会った場所に闘気を使いながら、小一時間くらい走って戻ってきた。

 闘気を使うと疲れるから、嫌なんだよね。

 遠目に誰かいる。大きいな。オーガ? 違うなぁ。

 僕は大きな鬼族と思われる青年のもとへと駆けていく。

 丁度いいから、彼にハグロの事を聞いてみよう。


 鬼族の青年は、突然現れた僕に驚いていた。

「ねぇ。そこの鬼族の人」

「てめぇはさっきの!? やっぱり俺達を襲いにきやがったか!?」

 いきなりなんだ。失礼な。

 でも怒っても仕方が無い。

「ハグロの会いたいんだけど、案内してくれる?」

 僕は出来るだけ威圧をしないように話してみる。だけど。

「嫌だね。何で人間なんかの言うこと聞かなきゃいけねぇんだよ」

 うん。ばっちり断れちゃった。

 僕としては、さっさと僕の考えをハグロに伝えて、協力してもらえたらと思うんだけどなぁ。

 やれやれ……。

「力を示せとか言うんなら、見せてあげるよ?」

 僕は剣を抜く。殺さないように手加減はしないと……。

「え? そんなこと言ってな……」

 ん? どうやら鬼族の青年は顔が少し青いようだ。

 僕は少しだけ、闘気を放出させた。

 鬼族の青年は急に小刻みに震えだす。顔は完全に青褪めさせていた。やりすぎてしまった。


「何事だ!! 今、凄まじく強い力を感じたぞ!? むっ! お前は!!」

 奥にある林から、ハグロと鬼族の女性が出てきた。

「あら、かわいい子だねぇ。凄く強い力を感じて来てみれば、お嬢ちゃんかい?」

「お前、この先の村に行ったのではなかったのか?」

「わたしは、ボタンってんだ、ハグロの妻だ!! よろしくな!お嬢ちゃん!」

「あっはい。僕は一応、勇者をやっている、みつきです」

「な!? お前も勇者だったのか!?」

 うーん。勇者を誇らしく名乗る気はないが、クレイザー(あいつ)と一緒にされるのは嫌だなぁ。

 僕は、アロン王国の事と、クジ引きで勇者に選ばれたことを二人に話した。


「クジ引きでねぇ……。伝説の勇者《覇王》が女神のクジ引きで選ばれたからといって真似をするのはどうかと思うけどねぇ」 

 そう言って、ボタンさんは笑っていた。

「鬼族も、伝説の勇者を知ってるんですか?」

「当然さ! 勇者《覇王》には鬼族の仲間がいたのさ! その仲間こそ、ハグロのひい爺さんなのさ!」

「そ、そうなんですか!?」

「そんな話は今はいいだろう。で? みつきはなぜ俺に会いに来た?」

 思い出話に花を咲かせていると、ハグロが面倒くさそうに僕に聞いてくる。

 僕は、村での状況、オーガを駆逐するのは困ると言われたことを話した。あのあと、リリアンさんに聞いたのだが、オーガは物を壊すなどはするが、人には殆ど攻撃をしなかったそうだ。

 僕達を襲ったのとは、違うオーガの群れだったのかもしれない。

 怪我をしていた人の殆どが、逃げるときの怪我や、オーガに挑んでの怪我だそうだ。

 あのアホ勇者は、オーガにボコボコにされたらしいけどね。あいつの事は、オーガでも鬱陶しかったかんだろう。

 その話を聞いて僕が考えたのが、オーガが人に危害を加えないのであれば、鬼族に間に入ってもらえれば共存できるんじゃないか、と思ったのだ。

 鬼族の彼らならば、オーガの縄張りの事も当然知ってはいるし、なによりハグロは、たまに村に行っては間を取り持っていたのだろう。話の分かると言っていたオーガはおそらくハグロの事だ。

 僕は、ここに来る前、村人にオーガのことを聞いてみたが、誰もオーガを憎んでるわけではなかった。

 家を壊されたの人もいたが、そもそも自分の村の村長が縄張りに入らなければ、こんなことにはならなかったと、村人は話していた。


「ってことを考えているんだけど、無理?」

 ハグロは僕の話を、黙って聞いていた。

 ハグロに代わって、ボタンさんが自分達の考えを言ってくれた。

「みつきの嬢ちゃん、それは難しいんじゃないかい? 村の奴等は受け入れるかもしれないが、あんたらの国の奴等は話は別だろう?」

「その事なら、今村にいる女の人が王様に連絡を取ってくれているよ。王様は亜人や魔族には偏見を持ってないらしいし、もしこの話が無くなった場合……。僕がある人に連絡を入れるよ」

 問題はどうやって連絡するかだけど……。もしもの時はハグロ達を連れて、()()()()

「ある人とは?」

「魔大陸の魔王。ヴァイス魔国の魔王アリス・ヴァイスさんだよ」

 僕がこの名を出すと、ハグロ達を驚愕している。

「ま、魔王アリス!!? どうしてその名が出てくる!!」

「僕とアリ姉は友達だからね」

 勇者と魔王が友達というのも変かもしれないが、もしアリ姉を倒して来いと言われるのなら、僕はアリ姉に付く。

 魔王の名を出したからか、ハグロ達はすんなり提案を飲んでくれた。と思っていたら、ボタンさんがコッソリ僕に教えてくれた。

「亭主のやつ、最初っからこの話を受けるつもりだったみたいだねぇ。魔王の話は、もしもの時の保険に聞いたようなものだよ」

 ボタンさんが言うには、ハグロは人間と仲良くできないかと常々考えていたそうだ。今回の話は、ハグロにとってもいい話だったそうだ。

 ここから、人間と他の種族が仲良くなってくれるといいんだけどね……。

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