村とアホ勇者
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少し書き直しました。
オーガは、僕を狙って襲いかかってくる。
だけど、遅いんだよね。
闘気を纏った斬撃で、オーガの首を落とす。闘気を使って一瞬で移動し、次のオーガの腕を斬り、そのまま首を落とす。
流れるように別のオーガを蹴り飛ばす。
オーガは、血を吐きながら吹っ飛ぶ。生きていても死んでいても暫くは動かないだろう。
あれ? あと一匹は?
……ドンッ!!
馬車の方から鈍い音がした。何の音?
僕が馬車の方を見ると、腹部を押さえながらうずくまり動かなくなっているオーガと、拳を突きだしたよいやみがいた。
「なんすか? 柔らかいっすね。思ったほど、強くなかったっす」
驚いた……。確かにそこまでは強くなかったけど、オーガを一撃で仕留めるなんて。もしかして、本当に強い?
僕達は手分けして、浄化の灰でオーガを燃やす。燃えた後には魔石と角が残されていた。
「あんなに大きい魔物なのに、残るのは角だけっすか?」
僕もそれは思った。戦利品としてはあまり大きな収穫にはなりそうもない。まぁ、オーガの角が高く売れるといいんだけど。
道具袋に角と魔石をしまっていたら、リリアンさんがオーガの角を見て「今回は角だったのね。レアなケースで金棒が残るの。それなら、かなり高く売れたのに、残念だったわね」とため息を吐きながら言った。
なんですと!? 高く売れるのは金棒か!!
「よいやみ!! さっさと村に行ってたくさん狩って、金棒を手にいれるよ!!」
「みつきー。金、金、言うと守銭奴見たいっすよ?」
守銭奴? それがどうした!! 薬草ひとつ満足にも買えず、更に馬鹿みたいな食欲の仲間まで増えるんだよ!! 金、金、言って何が悪い!!
あれ? 僕の中では、よいやみはすでに仲間になってる?
食欲で思い出したけど、昨日の馬車でのよいやみは、人並しか食べてなかったよね?
「よいやみ、昨日のご飯足りたの?」
「全然足りなかったっす。もっと食べたかったっすけど、旅の最中は我慢できるっす!」
我慢できるのなら、一日食わなかっただけで倒れるなよ……。
「でも、その反動が必ず来るっす! お腹が減ると、弱体化するっす!!」
確かに空腹で倒れると、弱体化もするだろうよ。しかし、今から村にいくのに、馬車で食べてない分こいつはいつ倒れるか分からないってこと?
こいつを仲間にしていいんだろうか……。
馬車が村に近づいてきた。ここから見るに、今はオーガは攻めてきていないみたいだ。
リリアンさんは村の入り口付近で馬車を停めた。
見張りのようなおじさんが立っていたが、ボロボロでふらついている。体も怪我だらけだ。
「つつけば倒れそうな見張りっすね」
確かにその通りだけど、そういう事を言うなよ……。
ゆーちゃんが目をキラキラさせながら、見張りを見ている。
「ゆーちゃん。ダメだよ。ひーるを使ったら、見張りのおじさんが下手したら死んじゃうからね」
僕が注意すると、面白くなさそうに足元の小石を蹴っていた。うん。その仕草もかわいい。
僕は道具袋から、薬草を取り出す。
「おじさん。この薬草を使ってください」
「こ、これは? それにお嬢ちゃん達は?」
「僕達は王都の冒険者ギルドの依頼で、ここに派遣されてきた冒険者です。これは薬草です。見た感じ、あちこち怪我をして大変そうだし」
見張りのおじさんは、僕の出した薬草に感動していたようだが「この薬草は、村役場で怪我に苦しむ勇者様に使ってくれ」と頼み込んできた。
は? 怪我で苦しむ勇者?
「あのアホ勇者!! やられて寝こんどのかい!?」
僕はつい大声を上げてしまった。
しまった! 見張りのおじさんが目を丸くしてに僕を見ている。
「そ、その勇者は、ウチの僧侶が回復魔法で治しますので、その薬草はあなたが使ってくださいね」
僕はそう言うと、村にそそくさと入っていく。
僕の言葉にゆーちゃんが目を輝かせている。
しかしだよ? ハグロの話では少し前に勇者が村に向かったと言っていたけど、あれからそんなに時間は立ってないよね。
それなのに、いきなりやられるって、どれだけ弱いんだよ!
そんな勇者様には、ゆーちゃんの実験回復で充分だ。
むしろ、見張りのおじさんのほうがこの村にとって必要だよ。
村役場に入ると、何人もの怪我人が、なにも敷いてない広間の床で寝ていた。寝ているだけで体が痛そうだ。
そんな広間の隅で、一人だけベッドで寝ているアホ勇者がいた。
「なんで、勇者だけベッドで寝てるんだよ。もっと、重症な人がいるじゃない」
僕の呟きに、よいやみが頷いていた。勇者を見る目は汚物を見るような目だった……。
蹴り起こしてやろうかと思ったが、そんなことより怪我人をなんとかしないと。勇者以外の怪我人をね。
僕はリリアンさんが回復魔法を使えるという事を、以前に聞いていたので、リリアンさんに回復魔法を使って回るように頼む。
「わかったわ。それで勇者はどうするの?」
「村長に話を聞いてから考えます。村人を守るために、戦って傷ついたっていうなら、その時はお願いします」
流石の僕でも、怪我の理由が分からないのに無茶なことは言えない。
僕はゆーちゃんと役場を出て、村長の家に向かおうとしたが、村長の家を知らなかったので、見回りしたいるおじさんに、村長の家を聞いたのだが「村長なら、一番最初に逃げたよ」と吐き捨てるように言われた。
「ごめんな。お嬢ちゃんはなにも関係ないのに。で? お嬢ちゃんはこんな村で何を?」
「オーガを討伐に来ました。単刀直入に聞きます。最初にオーガの縄張りに入ったバカは誰ですか?」
「お嬢ちゃんが討伐!?」
おじさんを見ると、装備はボロボロで疲れたような顔している。この人もかと思ったが、周りの見回りしてる人も、皆同じような顔をしていた。
「冗談はやめておくんだ!! オーガは強い。あの、勇者様ですら歯が立たずに怪我までされてしまった」
おじさんは悔しそうに、剣を地面に叩きつける。
「縄張りに入ったのは二人だけだ。最初は逃げた村長。そして、漸くオーガの被害が落ち着いたときに、オーガを討伐すると言いながら、わしらが止めるのを聞かずに、勇者様が縄張りに踏み込み、結果、数多くのオーガに襲われ怪我をされた」
僕は耳を疑った。
あ? わざわざ、縄張りに踏み込んだ? 制止を振り切って?
僕は決心した。
「ゆーちゃん。勇者に好きなだけひーる使ってきていいよ。もし強化しちゃったら、よいやみに外に出すように言って。同じ勇者として、天に帰らせてあげるから」
「みーちゃん、まじおこ」
そう言うと、ゆーちゃんはアホ勇者のもとに駆けて行った。
ゆーちゃんが役場に入った後、役場からはおぞましい程の悲鳴が聞こえる。
「いぎゃああああああ!!! ゆ、ゆづきさ、ぎゃあああああ!!」
ゆーちゃんの献身的なひーるで、アホ勇者も元気になっただろう。
ゆーちゃんの様なかわいい子に回復魔法? を使ってもらえて、幸せでしょ? もっと、ゆーちゃんに癒して? 貰いなさい。
僕が満足そうに役場の方を見ていると、おじさんが声をかけてくる。
「お嬢ちゃん。わしには今、同じ勇者としてと聞こえたんだが? それに今の悲鳴は?」
「悲鳴は気にしないでください。あ! 僕は、一応勇者です。今回、冒険者ギルドの依頼で、オーガを討伐に来ました。しかし、あれですね。縄張りに二回とはいえ立て続けに浸入した以上、オーガの怒りが収まることはないかもしれないですね。完全に駆逐するしかないですかね?」
「待ってくれ! オーガにも話がわかる奴もいるんだ! 基本、ワシらが縄張りに入らなければ襲っても来ない!」
話がわかる? もしかして、今までこの村がオーガに襲われなかったのは、ハグロがこの村でオーガと人間の間に入って無駄に争わせないようにしていたのかな?
僕達を止めようとしたこともそうだが、本当にいい奴だなー。
………。!!
そうだ。良い事を思いついた!
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