腹ペコよいやみ
少し書き直しました。
拾った女の子は顔がかわいいが、お腹からは大きな音が鳴っている。この子、一体何日食べてないんだろう……。目の前で倒れられては、助けないわけにはいかないじゃないか。
僕は、女の子を背負って食べ物屋さんを探した。
ついでに、僕達もご飯を食べようか。
「ゆーちゃん、なにか美味しい食べ物屋さん知ってる?」
「こっち」
ゆーちゃんに連れられて来たのは、見るからに高級そうなお店。
「いや、流石にこの店は……」
僕の横には嬉しそうなゆーちゃん。うん。そんな顔をされたら断れないよね……。それに三人ならそこまでの金額はいかないでしょう。
僕はそう思って、お店に入った。
一時間後、僕は後悔した。この店に入ったことじゃない。この女の子を拾った事だ。
僕は一般的な食事をしただけだ、ゆーちゃんは物凄く小食だった。食べてる姿がかわいかった。
問題はこの拾った子だ。
食べる量がおかしかった。
「支払いは28万8千ルーツです」
「は、はい……」
お、おかしい。このお店に入るまではそれなりにお金があったはずだ。今は、薬草を二個買うお金すらない。
「いやー。助かったっす。ありがとうっす。じゃ!!」
「まて!!」
僕は振り返って逃げようとした女の子の首根っこを掴む。逃がすか!!
「な、なんすか!? お、お金ならないっすよ!?」
女の子はじたばたしている。うっ!? 結構力が強い。
「そうだねぇ、お金なら僕達もないんだよ?あんたのせいでねー」
女の子には出来るだけ優しくしてあげたいが、こいつはダメだ。
「ゆーちゃん、こいつにひーる」
「ひーる!」
女の子の体が優しく光る。
「い、癒してくれるっすか?……!!!?……か、体が痺れて動かんっす」
よし、毒にでもなればいいと思ったけど、うまいこと麻痺になったか。僕は、道具袋に入っていたロープで女の子をグルグル巻きにした後、女の子を引きずって宿泊している部屋に帰ってきた。
途中、町の人に凄い目で見られてたけど気にしない。
「あれ? みつきちゃん、その子は?」
宿泊施設内にリリアンさんがいた。リリアンさんもここに一室借りて住んでるらしい。
「腹ペコ食い逃げ犯です」
「し、心外っす!ちゃんとお礼いったっす!」
「お礼を言ってどうにかなる限度ってあるんだよ?あんたには、常識と遠慮って言葉を教えておこうと思ってね」
「そ、それくらい、知ってるっす」
「そっかぁ……よかったねぇ」
ここで話しててもしかたないので、部屋まで連れていって尋問することにした。リリアンさんは「頑張ってね……」と言い、ギルドへと戻っていった。
僕達は女の子を部屋に投げ入れて、ベッドに座る。女の子は床の上だ。
ゆーちゃんは早速、ベッドで寝ようとしている。
今日はこれ以上出かける用事はないので、寝かせてあげよう。
さて、用があるのはこっちのやつだ。
「で? あんた、名前は?」
「こ、こんなことする連中に名乗る名はないっす!!」
「ほぅ?」
……。
「すんませんっす! あしはよいやみって言うっす!」
「僕はみつき。こっちはゆづき。よろしくね……」
ちょっと睨んだら、すぐに素直になった。
しかし、口調と顔が似合わないやつだ。
「まずは、この痺れるのを治してほしいっす。逃げないっすよ?」
「治す? どうやって? そのうち、治ると思うよ」
そう言うと、よいやみの顔が真っ青になった。
「お、おしっこ行きたくなって、痺れてたら漏らすじゃないっすか! 漏らしたらどうするんすか!!?」
「出そうなら言ってね。トイレに持って行ってあげるよ?」
「あしはモノじゃないっす!! それに今したいわけじゃないっす」
一応そういうのは気にするんだ、見た目美少女なのに、口を開く残念だなぁ。
「で? あしはどうすれば、解放してもらえるんすか?」
「お金を返してくれたら解放してあげるよ。ただね、あんなことしてたらそのうち酷い目にあうよ?」
僕達がたまたまよいやみを拾ったからいいけど、あの三馬鹿みたいな奴等に拾われていたら、きっと酷い目に合わされていたよ。
「いや、体を痺れさせられて、ここまで引きずられて来られたのも、大概だと思うっすよ? そもそもみつきは、その細い腕でよく片手で引きずってこれたっすね」
よいやみが何か言ってるけど、自分の状況がわかってるんだろうか?
「で? あんた、これからどーすんの? いや、何ができるの? どうやって僕達のお金返すの? というか、なんであんなところで倒れたの?」
「質問が多いっす。あしはこの国で冒険者になろうと思ったんすが、お金が尽きてしまって食べるものもなく、冒険者ギルドの場所も分からず倒れてしまったっすよ」
「よいやみ。あんた、何日くらい食べてなかったの?」
「へ? 一日っすよ?」
………。
聞き間違いかな?
「もう一回聞くけど、何日食べてなかったの?」
「だから一日っすよ」
聞き間違いじゃなかったのか……。店で食べていた量が一日の食事量? こいつ、冒険者では食っていけないだろう。
「よいやみ、あんたの容姿で黙ってれば、金持ちの旦那を掴まえて結婚出来るはずだから、そっちの方で頑張りなよ」
「な、何でなんすか!? あしは冒険者がしたいっす! あしの何が悪いんすか!?」
「あんたの食欲を見れば、よっぽどの金持ちにしか、あんたを養えないよ」
ところでこいつ、痺れてんのに良く喋れるな。
「みつきはあれっすね、ゆっきーと喋ってるときと全然違うっす。優しさがないっす!」
「あんたとゆーちゃんを一緒にするな。そもそもゆっきーとか言うな」
ゆーちゃんとは出会ってまだ二日だけど、ゆーちゃんは中身に問題はあるがかわいいし、かわいい。よいやみは、確かに見た目はかわいいけど中身が残念、この差は大きい。
「そうだ!! みつき達は冒険者っすよね?」
「一応そうだよ。一昨日登録したばっかりだけど、冒険者だよ」
「じゃあ!! あしも仲間にしてもらうっす。あしはこう見えても、かなり強いっす!」
自分で強いなんて言うやつは、信用できない。それに……。
「嫌だよ」
「何でそんなに冷たいんすか!?」
「あんたの食欲考えたら、とてもじゃないけど養えないよ」
それが一番だよね。よいやみの食べる量は異常だ。
それともう一つ……。
「それに、僕達はランクが高いらしいから、ハッキリ言うけど、弱い人とは組むわけにはいかない」
僕の故郷の魔大陸では強さが分からなかったけど、王都の冒険者からすれば僕はかなり強い部類だそうだ。(リリアンさん談)
僕達のパーティに入ると高ランクのクエストを受ける必要があるかもしれない。僕としてはそういう仕事は拒否したいけどもし、受けなきゃいけない場合、よいやみが口だけだったら死んでしまうかもしれない。
僕はゆーちゃんを守らないといけないので、よいやみまで守っていられない。
僕が神妙な顔をしていると、よいやみがドヤ顔で「みつきは勘違いしてるっすよ?あしはこんな性格と姿っすけど、本当に腕には自信はあるっすよ? みつきよりも強い自信があるっす」と言っていた。ロープグルグル巻きで床に転がっているけど。
……でも。
そこまで自信があるのなら、確かめてみるかな。
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