覇王の剣
少し書き直しました。
片腕になったゴブリンは、狂ったように叫びだす。そりゃ、腕を斬られて怒らない奴はいないだろう。だけどうるさい。一撃目で首を狙っておけばよかった。
僕は、自分の剣をチラッと見た。軽く欠けているようだ。
昨日貰ったばかりなのに。いきなり武器を買わなきゃいけなくなるじゃないか。
「はぁ。最初っから本気で斬ればよかったよー」
ゆーちゃんが僕の言葉に驚いた顔をしたような気がした。実際は表情は変わってない。この子は基本、無表情かにたーっと笑うかだけだし。驚いた気がしただけだ。
「みーちゃんつよい」
ゆーちゃんに誉められた。なんか、嬉しい。リリアンさんに期待されるよりも遥かに嬉しい。
よし、ゆーちゃんに褒められたし、おねーちゃん頑張っちゃうぞー。と冗談は置いておいて、次は残った腕を切り落とす!
僕は一気に踏み込んで、残った腕に斬りかかった。
ガキィ!!!
「な!?」
本気で斬ったのに弾かれた!? 反撃の蹴りが来る。
僕は、その蹴りを避け、今度は体を斬りつけた。
斬れた! でも浅い!? 間違いない、こいつ更に強化されている。
「ゆ、ゆーちゃん? この魔法って戦っている最中に強化されるの!?」
「たたかったのみたのはじめてだからわかんない」
え? い、今まで放置してたの? こんな、危険な魔物を?
「みーちゃん」
「なに? 今は、忙しいから手短にね」
「どうして、まほうつかわないの?」
「僕は魔法使えないからね」
小さい頃、魔法の勉強をしたことがあるけど、一番簡単な魔法すら成功しなかった。僕には魔力がなかったからね。
「みーちゃん、なにかかくしてる」
僕はそう言われて、ゆーちゃんの方を見た。
魔眼だ。この子には魔眼があるのを忘れてた。
魔眼の力のひとつに、相手の隠された能力をみやぶる力がある。敵が隠してる能力がある場合に役に立つそうだ。
僕の力が魔力に見えたのか。正確には魔力じゃないんだけどね。
ゴブリンは叫び声を上げながら、僕に殴りかかってくる。僕は攻撃の軌道を反らすために、ゴブリンの腕を思いっきり蹴る。
ゴブリンの腕は僕の蹴りで大きい反れる。僕は闘気を少しだけ剣に纏わせてゴブリンの胸部を斬りつける。
ゴブリンの胸部が大きく裂けた。闘気を使えば簡単に斬れるみたいだ。
僕は小さい頃から魔法に憧れていた。でも、僕には魔力が全くなかった。
それでも魔法が使いたくていろいろ試してみたが、全然ダメだった。どんな魔導書を見ても意味がなかった。
そこで思い付いたのが小さい頃に、じいちゃんに教わっていた闘気を利用することだ。
魔法みたいに、何かを出したりすることは出来なかったが、身体能力の強化と武器に闘気を纏う事ができるようになった。
武器に纏わせることは村の誰にも出来なかったことだ。村のみんなは、そんなことしなくても強かったしね。
ゴブリンは斬られると思わなかったのか、動きが散漫になる。逃げようとしているのか?
しかし闘気の剣なら斬れる。
良かった。剣をこれ以上傷つけずに済むね。さて、終わらせようか。
ゴブリンは逃げようとしている。本能なのか僕に背を向けて走り出した。
逃がすわけないじゃない。
僕は追いかけるために、地を蹴った。闘気を使った踏み込みは、さっきまでの速さとは比べ物にならない筈だ。
ゴブリンの逃げる先に先回りをして、ゴブリンの首を落とす。
「ふぅ、疲れた」
闘気を使うとかなり体力を使うから、あまり使いたくない。
まさか初クエストから、奥の手を使うことになるとは思わなかった。
強化ゴブリンの死体に浄化の灰をかけると、変な現象が起こった。燃えた後に大きい魔石と立派な斧が落ちてあったのだ。
「は? このゴブリン、素手だったのに?」
「それはいいもの」
ゆーちゃんがそう言っていた。ゆーちゃんが強化したから良い物ってわかるのかな?
「うるとたかい」
「よし、もって帰ろう!」
高いと言われれば、持って帰らないわけには行かないだろう。
ガサガサ
茂みからリリアンさんが出てきた。まぁ、隠れてたのは知ってたけど。
「リリアンさん。見ていたのなら、助けてくれても良かったのに」
「私じゃ、あの化け物相手になんの役にも立たないわよ。みつきちゃんのあの力は何?」
あの力? あぁ、闘気を纏う力の事か。
リリアンさんに、僕には魔力がなくて代わりに闘気を使って、身体能力を強化してることを説明した。
「なるほどねー。魔力を使って身体能力を強化するのはたまに聞くけど、闘気というのは聞いたことがないわね」
魔力を身体強化に使う場合もあるのか。というか、闘気ってのは皆使える物だと思ってた。
詳しく聞くと、魔力による身体能力強化はリスクが大きく、成功しなかった場合は肉体の崩壊もあり得ると、闘気なんて初めて見たそうだ。
「でもこれで納得いったわ。そんな力があるから、みつきちゃんの華奢な体で鎧を砕くなんてことをできたのね」
「で? リリアンさんはどうして僕達を監視してたんですか?」
「監視なんて酷いわね。あの三馬鹿がみつきちゃんの後をつけていったから、心配になってね。あいつらはギルド資格剥奪になるかもしれないでしょうね。まぁ、あそこまでやられれば、二度と立ち直れないと思うけどね」
剥奪か……まぁ、同情なんてしないけどね、自業自得だし。
僕は、ゴブリンから出てきた斧を道具袋に入れて、帰る準備を始めた。
「もう一つ気になったんだけどいい?」
「何です?」
「あの強化されたゴブリンの首を落としたのは、どうやったの? 身体能力強化だけじゃ斬れないでしょう?」
あれ? 闘気で身体強化している事を説明したんだから、剣にも纏わせる事が出来るのくらい、何でわからないんだろう? 魔力も武器に纏わせることが出来るのに。
「闘気を武器に纏わせただけですよ? 魔力でも出来ますよね?」
「!!!!!!!」
リリアンさんの顔が物凄く驚いた顔をしている。
くい。くい。
ゆーちゃんが僕の服を引っ張ってきた。
「どうしたの?」
「それ、はおーのけん」
「なにそれ? ただ闘気を纏わせただけなのにそんな大層な名前なんて無いよ?」
「みつきちゃん。通常はね、魔力を武器に乗せているんじゃなくて、魔石に魔力を乗せるの、ただの武器には魔力なんての乗らないのよ。そんなことが出来た人は、伝説の勇者だけなのよ」
「は?」
「その勇者が覇王って呼ばれてたことから、武器に魔力を纏わせることを覇王の剣と呼ぶようになったのよ、みつきちゃんの場合は闘気を扱う、やっぱりみつきちゃんはオリハルコンの勇者だわ」
そんな馬鹿な……
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