ジルキン編11 女王の悩み
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「この部屋でお待ちください」
僕達は質素ながら、最低限の豪華さを持った部屋に通された。クレイグさんが言うには、外交に使うための部屋だそうだ。アロン城の応接間に入ったこともあるが、これじゃ他国に舐められるんじゃないかな?
「みつき、こっち来て座るっす。座って待ってりゃいいっす」
よいやみにこっちに来いと言われたので、大人しく座って待つ。
暫く待つと、綺麗な服を着た綺麗な女の人が入ってきた。この人が女王様?
「久しぶりね。よいやみ姫」
よいやみは立ち上がってスカートを摘まむような恰好をして挨拶をした。僕達もそれにつられるように立ち上がって挨拶をした。
「お久しぶりです。ソフィーヤ陛下」
「お父様はお元気?」
「いえ、私は王位を返上して国を出た身、王には一年ほど会っていませんから…しかし、訃報を聞かないので元気だと思います」
よいやみの返答に女王様はクスクス笑っている。本当に物腰が柔らかそうな人だ。
女王様の隣には偉そうなおじさん。逆側にはジルキンに入る時にいた騎士の人だ。
「早速ですが、勇者黒姫には魔物の討伐を命令したい」
「お断りです」
「な、なんだと!?私を誰だと思っている!!」
「どこのどなたか存じ上げませんが、私達はこの国の所属ではありません。いかなる理由があろうとも、貴女に命令などする権利はありません」
おじさんが偉そうに言いだしたのをいつきさんが軽くあしらう。このおじさんに、何故命令されなきゃいけないんだろう?
「おい、おっさん。冒険者はてめぇら貴族の手足じゃないぜ?黒姫に命令できる権利なんて、てめぇにねぇよ」
クレイグさんが、おじさんを睨みながら僕達に助け舟を出してくれる。
「き、貴様!!無礼な!!」
おじさんが騒ぐ度に騎士の人の顔が渋くなる。女王様も苦笑いをしている。そうか、この人がよいやみの言っていた、邪魔する馬鹿か。
「おっさん。あんたはこの国に必要ない。俺の言っている意味が分かっているな?今なら、ここから去るだけで許してやるが、しつこく貴族の権力を翳すというならギルドの力を使ってでもお前を失脚させる」
「く、くそ!!覚えておれ!!」
ん?えらくあっさり引き下がったな。よいやみも意外そうな顔をしていた。
おじさんが出て行った後、女王様が僕達にお願いという形で依頼をしたいそうだ。でもその前に聞きたいことがあると言われた。
「彼がいる間は聞けなかったけど、確認を取りたいの。アロン王国では、リザードマンや鬼人族と友好的になっていると聞いた事があるのだけど、本当?」
なんでそんなことを聞くんだろう?
「女王陛下。失礼を承知で聞かせていただきますが、それを知ってどうなさるつもりですか?場合によっては私達は貴女と敵対することになります」
いつきさんの堂々とした態度に、騎士の人が少し怒りを露わにしている。
クレイグさんも「いつき、すげぇな」と感心していた。
「気を悪くしたのならごめんなさい。今私達が対立しているのは獣人の魔王なの。私達の依頼によって獣人を倒してもらわなきゃいけない。それが出来るか聞きたかったのよ」
獣人か。そりゃ悪事をしているとかなら倒せるけど、事態が分からない。むしろこの国では人間の方が悪事を働いていることが多いんじゃないの?
「そうですね。もしあちらに非があるのなら私達が討伐に出ます。ただ、人間側に非がある場合は私達は獣人の方を助けることにします」
「ふざけないでいただきたい!!!」
騎士の人が怒り出した。そりゃ自分たちは人間だもん。人間が人間を助ける当たり前だと思っているけど、生憎僕は魔大陸の人間。亜人も人間も平等なんだよ?人間に非があるのなら助けるつもりも、悪事に加担するつもりもないよ。
「ふざけてないよ。僕からすれば人間も亜人も魔族も全部同じヒトなんだよ?魔物は自我も持たないから討伐対象だけど、獣人は亜人。つまり自我がある。それを一方的に殺すのはどうかと思うよ?」
騎士の人は今にも剣を抜きそうだ。そりゃそうだ、僕達は今女王様を侮辱しているんだろう。でも、これだけは譲れない。僕が勇者として戦うのは何も人間の為じゃない。アロン王国に協力しているのは王様が亜人だろうと大事にしてくれる人だからだ。
「私は…獣人の魔王ヘダーとの対話を望みました。何度も。しかし、その度にこの国の勇者である息子に邪魔をされ、それに同調する貴族が妨害をしてきます」
そうか、よいやみが言っていたのはこういう事なんだ。
「勇者である王子は何故そこまで反対をするっすか?ギルドで聞く限り、国に何も貢献もせずにただ勇者という肩書に乗っかってるだけ、そんな奴が何故獣人との対話にだけは、そんなに反対するのか分からんっす」
よいやみがそういうと、女王様は俯き少し震えているようだ。
「ソフィーヤ。俺が話す「いえ…これは私達王家の罪。私が話します」
女王様は何かを決意したよう目で僕達を見、そして話し始めた。ジルキン王国の本当の罪を。
話を聞いた僕は怒りで心がいっぱいだった。勇者が獣人を奴隷売買していたのだ。それにアレンスのギルマスも絡んでいたと。あのおっさん。もしかしてギルドの人達も?
「あのギルド全員が関わっているんですか?」
「みつき、あのボケが関わっていたことは俺ですら今知った。ギルドの職員が絡んでいるなら俺に報告があるはずだ。怪しい動きがあるとまでは聞いていたがまさかここまでとは思わなかった」
クレイグさんもかなり怒っているようだ。ある意味良かった。ルイーザさん達は良い人そうだったから。
という事は、勇者に同調している貴族もそれに関わっている。港にいた荒くれ者の冒険者は冒険者の皮をかぶった奴隷商人ってわけか?
「今更だとは思います。ただ、よいやみ姫ならわかると思います。この事態がどれほどのものなのかを」
僕はよいやみの方を見る。よいやみは腕を組んで考えているようだ。
「確かに、動きたくても動けんのは分かったっす。みつき納得はいかんと思うっすけど、これはもう王族だけでどうこうできる問題じゃないっす」
「どういう事?」
「国の経営は王族だけでやる事じゃないっす。貴族も含まれているっす。今回の事で貴族を排除した場合、国は崩壊を始めるっす。王一人ではどうにもならんっすから。それだと結局、国そのものが無法地帯になってしまうっす。それなら今のままが良いと思ってもおかしくないっす。女王陛下、アロン王、もしくはうちの親父…ガスト王に協力を求めるべきです」
「馬鹿を言うな!!女王陛下他国の王に頭を下げろというのか!!貴様ら先程から「やかましいっす!!」…うっ…」
「本来ならこうなる前に、お前たち騎士団の連中や女王の側近の連中がしっかりやっていれば、こうはならなかったっす。貴族を抑える事も出来んかった奴等がプライドを語るなっす!女王陛下は良くも悪くも人が良いっす。そこを利用してきたのはお前等っすよね?」
騎士の人は口を噤む。思い当たる節があったのだろう。
「わかりました。もう国の恥とは言っていられません。アロン王に協力を仰ぎます」
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